ラグビーリパブリック

元コーチは誠実にノーコメント? オールブラックスXVが見た日本代表。

2023.07.19

日本代表NO8姫野和樹の前に立ちはだかるオールブラックスXVの9番ブラッド・ウェバー(撮影:松本かおり)


 ラグビーワールドカップを今秋に控える日本代表は、好選手の揃うチームから貴重なレッスンを受けた。

 7月8、15日の対オールブラックスXV(フィフティーン)に2連敗。東京・秩父宮ラグビー場でJAPAN XV名義で臨んだ初戦は6-38で、熊本・えがお健康スタジアムで日本代表として挑んだ2戦目は、27-41で落とした。

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「2試合目と1試合目で、日本代表ががらりと変わってくるのはわかっていました。だからといって、我々がそれに伴ってゲームプランを変えるということはしませんでした。大きなチャレンジに気持ちの上で備え、勝つ(のを目指した)」

 熊本での試合後にこう語ったのは、レオン・マクドナルド。勝ったオールブラックスXVのヘッドコーチだ。

 このシリーズにおいて、勝者は敗者の激しいタックルを浴びながらも要所で得点できた。

 攻撃ラインやパスの深さ、ランコースを適宜、微修正し、日本代表の飛び出す防御に対応した。

 攻守逆転から効率よくスペースに球を運び、抜け出した味方を的確にサポートした。

 2試合目で象徴的だったのは、前半38分のトライシーンだ。

 自陣22メートル線付近右で日本代表のミスボールを拾うや、オールブラックスXVが加速した。

 逆側へ展開し、左タッチライン際で日本代表の連係ミスを突いて突破。最後は抜け出した選手をCTBのビリー・プロクターが援護し、フィニッシュした。直後のコンバージョン成功と相まって、29-13と点差をつけた。
 
 SHのブラッド・ウェバー共同主将は言う。

「日本代表に統率の取れたディフェンスをされると、それを破るのは難しい。彼らのミスを突いて点を獲るしかない状況でした。そんななか今回、我々は(攻撃ラインの)幅を取ってワイドに攻めようとしました」

 2試合目では、日本代表のアップテンポな攻めに苦しむシーンもあった。それだけに敬意も表した。

「勢いがついた日本代表を止めるのは大変だと、つくづく思いました。スピードをつけて(パスコースへ)走り込んできていて、ラックの周りもうようよと(サポートからの突進を試みる)選手がいた」

 オールブラックスXVは、オールブラックスことニュージーランド代表の予備軍。かつてあったオールブラックス・ジュニアに相当するグループがリブランディングされた形で、昨年から活動している。

 今回は強行軍で、来日から約1週間で2連戦の初戦に挑んだ。スコット・ハンセン アシスタントコーチは、背景を明かす。

「今回のチームは有能な人材を集めています。彼らの直感を信じて試合をしてもらう形になりました。(2戦目まで)合流から2週間。(本格的な)トレーニングは4回しかしていません。短時間にしてはチームのまとまりを作ることはできましたが、個人に頼るほかなかった。ただ、それぞれの技を十二分に示せたとは言えます。オールブラックスのセレクターの目にも、しっかり評価されると思います」

 ハンセンは、日本代表とも縁がある。チームが2019年のワールドカップ日本大会で8強入りした際、指導陣の一員だったのだ。

 そのため今回は、日本代表の当時といまとの変化について聞かれた。

 答えは、誠実だった。

「その(日本代表に関する)質問に答える立場にはありません。というのは、私はあくまでオールブラックスXVのメンバーの指導に力を入れなければいけないわけで。もちろん、日本代表の選手への愛はあります。おそらく明るい未来があるとも思います。ただ、詳細なコメントは差し控えます」

 コーチとは、その時に指導する選手たちのための存在だ。その原則を、ハンセンは守ったのだ。

 指揮官のマクドナルドは、戦前、日本代表のアシスタントコーチでニュージーランド出身のトニー・ブラウンとビールを飲む機会があったという。

 そのエピソードを紹介しながら、今回のシリーズへの意気込みをこう振り返った。

「日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは、ワールドカップが究極的なゴールだからといってきょうの(熊本での)試合で手を緩めることがないだろうとわかっていました。そのことを踏まえて、対戦するようにしました」

 自軍に集う才能を引き出し、ワールドカップで成功を目指すチームへ教訓を与えた。

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