強さ、うまさ、まじめさをかけ合わせてフィールドで表現する。これが青木恵斗のラグビーだ。
大学選手権2連覇中の帝京大にあって、1年目から主力入り。3年目の7月2日は、東京・秩父宮ラグビー場に立った。最高気温32度という真夏日ながら、タフに駆け回った。
関東大学オールスターゲームに出た。チームの加盟団体に倣い、対抗戦選抜の6番をつけた。試合の特例ルールに基づき一時交代を経ながら、計59分間、プレーした。
対するリーグ戦選抜とは43-43で引き分けるまでの間、特に持ち味を発揮したのは後半15分頃か。
折しもチームは連続失点により、19-33とリードされていた。青木はしばしの休息ののちにフィールドへ戻り、約5分を経過させていた。
チームが敵陣深くまで攻め込み、右から左へ継続するさなか、青木はまず中央エリアで突進。相手防御を蹴散らす。
すぐに起き上がる。左側のスペースに素早く位置取る。味方からボールを呼び込めば、2人にタックルされながらも自立。味方にオフロードパスをつなぐ。
まもなく、受け手となった選手の接点へ走る。サポートを試みる。今度は右への展開に反応し、倒れたランナーを援護する。
最後は、ペナルティキックからの速攻でラストパスをもらう。自らトライを決めるなどし、26-33と迫った。
「後半、僕が(グラウンドから)出ていた時、リーグ戦のチームがぽん、ぽんとトライを獲って乗ってきた。負けたくない気持ちががーっと上がってきて。自分がこのチームにできることはないかなと思って、動き続けて、貢献しようと頑張りました」
出身の桐蔭学園高では、全国高校ラグビー大会で2連覇。現早大の佐藤健次を主将に据えた集団にあって、頼れる突進役だった。
進学先の帝京大は、2017年度まで選手権V9の強豪だ。その選択が正解だったことを、鍛えた身体で証明する。
身長は189センチで、体重は前年度から約6キロ増の113キロ。スクワットやデッドリフトといった下半身のトレーニング、腕と胸を鍛えるベンチプレスでは、それぞれ入学時よりも40~50キロずつ重いバーベルを持ち上げられる。
「スクワットは260、デッドリフトは270、ベンチプレスは165。自分の成長しているところかなと」
かつ、「フィットネスが落ちていない」うえ「スピードも上がっている」。チームのトレーナーに多角度的に鍛えてもらい、パワーのみに偏らない「自分の新たなスタイル」を構築しつつある。
「高校まではフィジカルで圧倒していましたが、大学ラグビーはそんなに甘くないと1年生で実感しました。相手(のタックル)をずらすスキル、ずらした後のスピード、駆け引きを(学んだ)。今年は、余裕を持ってプレーできていると思います」
いま目指すのは、早期の日本代表入りだ。
今秋のワールドカップ・フランス大会終了後、チームが仕切り直すタイミングでその輪に加わりたい。
元日本代表PRの相馬朋和監督に「代表に入るには何が足りないか」と助言を仰ぎ、「タックルと、ブレイクダウン(接点での下働き)」と聞いた。視線はクリアだ。
「僕のいまの個人的な目標は、今年にディフェンスやブレイクダウン周りのプレーを強くして、来年、日本代表の候補に入ることです。次のワールドカップ(2027年のオーストラリア大会)を狙っているので。(そのためには)しんどいところ、痛いところ、激しいところで努力する」
その意欲は、6月までの関東大学春季大会でも見られた。早大との最終戦では、味方がラインブレイクされるや危険地帯を先回り。自陣の深い位置でジャッカルを繰り出し、ピンチをしのいだ。
「あまり目立たないプレー(の質)を上げていかないといけない。意識しています」
攻守で存在感を発揮。国内リーグワンの採用陣からも注目されているのは、自然な流れだ。