日本代表のジャージィを着るのは約1年7カ月ぶり。2021年11月20日のスコットランド代表戦(●20—29/エディンバラ・マレーフィールド)で先発して以来のことだ。
7月8日、東京・秩父宮ラグビー場。日本代表が名乗るJAPAN XVの10番を、29歳の松田力也が務める。オールブラックス・フィフティーンとの一戦を前日に控えた7日、会見に臨んだ。
「本当にこの場に帰って来られて嬉しく思います。日本代表のジャージィを着てプレーできることにわくわくします」
2022年5月7日にあったリーグワン元年の第16節で、左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂した(〇35—14/対クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/埼玉・熊谷ラグビー場)。同年夏、秋の代表活動には加われなかった。雌伏期間は「戻りたい」という思いを秘め、信頼する佐藤義人氏のトレーニングで鍛え直した。
今季のリーグワンでは開幕から躍った。
埼玉パナソニックワイルドナイツの司令塔として首尾よくキックを蹴りわけ、看板の守備力を引き出した。
佐藤氏のもとで磨いた身体の強さは、大型選手とのコンタクトシーンで証明した。
シーズン中から代表首脳とコミュニケーションを図り、今年、満を持して代表に復帰した。
トニー・ブラウン。ワイルドナイツのスタッフリストにも名前がある日本代表のアシスタントコーチは、自身の現役時代と同じSOを務める松田へ「たくさんプレッシャーをかけています」と笑う。
1対1のミーティングを通し、日本代表の攻めに適したプレーメーカーとなるよう指摘してきた。
「以前と同じレベルで(ケガから)戻ってくるのでは十分ではない。毎回、タックルを決められるようにならないといけない。そして、フィットネスをもっと上げなければならない。彼はスキルフルではあるけど、そこ(然るべき立ち位置)に行って速くアタックするには、いままで以上にフィットネスレベルを高めなければいけないのです」
鋭い仕掛け、防御を惹きつけながらのパス、長短のキック、何より冷静なプレー選択といった強みを勝利に繋げるには、いち早くポジショニングし続けるための「フィットネス」がマストだ。その要求に本人はうなずく。
「しんどいなかでどう判断をして、どうチームを引っ張るか。…それは、いつも言われてきていて、常に頭に置きながらプレーしています。試合に出られるということは、試されているということ。きつい時間、(グラウンドに)出ている間、ずっとチームに貢献できるようにしたいです」
対するオールブラックス・フィフティーンは、ニュージーランド代表の予備軍的な存在。国際リーグのスーパーラグビーで揉まれた面子が並び、即興性を発揮しそうだ。
現体制を約7年半継続するジャパンは、6月中旬の集合から心身を追い込んできた。最初の浦安合宿では1時間ぶっ通しのタックルセッションなどを重ね、7月からは宮崎に拠点を移して動く。
今度のゲームでは5名のノンキャップを抜擢も、相手を組織力で上回りたい。
松田は展望する。
「明日はスペースにボールをどう運ぶか、少ないチャンスでどう(点を)取り切るかが焦点になります。新しい選手もいるなか、コミュニケーションを取って、同じ絵を見てプレーすることがキーになってくる。同じ絵を見せるところでは、僕がコントロールしたいです。
この人のジャッジが組織を前進させたり、ピンチを最小化させられるか。それがゲームの見どころとなりそうだ。