「今回は私たちの番だ」
そう答えたのは、チーフスのヘッドコーチのクレイトン・マクミランだった。
2023年度のスーパーラグビー・パシフィックもいよいよクライマックスを迎える。
6月24日にハミルトンで行われる決勝のカードは、チーフス × クルセイダーズのニュージーランド(以下、NZ)ダービーとなった。
<準決勝 2試合の結果>
準決勝は対照的な試合展開に
■クルセイダーズ 52-15 ブルーズ
激戦が予想されていたが、序盤からスイッチが入っていたクルセイダーズが完璧な試合をした。ブルーズのミスを誘い、すべての局面で大きく上回った。
ブルーズは先発メンバーに10人ものオールブラックスが出場していたが、まさかの大敗。NZ国内は大きくざわつくことになった。
■チーフス 19-6 ブランビーズ
戦前の予想通り、両軍の堅いディフェンスで最後までもつれる展開となった。チーフスの司令塔ダミアン・マッケンジーが確実に4本のPGを決め、試合を有利に進める。さらに黒いジャージーの背番号10は、終盤にキレのあるランでディフェンスを切り裂いてチャンスを作り、最後はLOブロディー・レタリックのトライで試合を決めた。
〈決勝プレビュー〉
レギュラーシーズンの1位(チーフス)、2位(クルセイダーズ)の対戦は、今季3度目になる。
最初の対戦は、開幕戦のクライストチャーチで31-10。4月29日にハミルトンでおこなわれた2戦目は34-24と、いずれもチーフスが勝利している。
チーフスのメンバーから見ていくと、準決勝からメンバー変更は1人のみ。
6月18日の発表で、初めてオールブラックスに選ばれたFLのサミペニ・フィナウがベンチスタート。フィナウの代わりにFL/No8のピタ・ガス・ソワクラが背番号6をつけることになった。
準決勝では苦戦しながらも、最後に良い形で試合を終え、メンバーを大きく変える必要がないと言うことだろう。ベンチも含めて精鋭ぞろい。隙が感じられない。
一方のクルセイダーズも先発メンバーの変更は1人のみ。大黒柱のLOサム・ホワイトロックが復帰、先発する。この一週間は、メディアがホワイトロックの出場可否をしつこく追跡していた。
オールブラックスのイアン・フォスターHCは、けがの部位がアキレス腱なだけに無理はしてほしくないようだが、クルセイダーズは「出場するかは本人に任せてある」。結果、決勝の舞台に間に合ったことは、チームメイトもファンも大喜びだ。
オールブラックスのけが人こそ相次いでいるが、ファイナルまで勝ち上がってきたことで、経験を積んだノンキャップの選手たちのレベルは上がった。頼もしいメンバーになっている。
新たにオールブラックス入りしたPRタマティ・ウイリアムズ、CTB/WTBのダラス・マックロードの二人も、もちろん先発だ。
そして、チーフスとの2戦には不在だったFBウィル・ジョーダンが今回、最後尾にいる。調子が戻ってきているだけに楽しみだ。
<注目マッチアップ>
■ サミソニ・タウケイアホ × コーディー・テイラーのHO対決
調子を上げてきたテイラーと怪力タウケイアホとの激突は見ごたえありそう。試合のカギを握るラインアウトのスローイングにも注目したい。どちらがオールブラックスの背番号2を獲得するかも楽しみだ。
■ ブロディー・レタリック × サム・ホワイトロックのLO対決
オールブラックスで長年LOでコンビを組んでいる者同士の対決、特にラインアウトのバトルは見逃せない! 両者ともこの試合が最後のスーパーラグビーになる。気持ちの入ったバトルになりそうだ。
■ サム・ケイン × トム・クリスティーの7番対決
両者とも堅実なプレーと堅いディフェンスが持ち味で、激しいブレイクダウンのバトルはFW戦の最大の見所になりそう。
■ ダミアン・マッケンジー × リッチー・モウンガの10番対決
前回の対戦では、マッケンジーがモウンガを上回った。試合のカギを握るゲームメイク、個人で抜けるランプレーも合わせて最注目のマッチアップになるだろう。
■ エモニ・ナラワ × レスター・ファインガアヌクのWTB対決
新人オールブラックスのナラワのスピードとキレ、ファインガアヌクのパワー。オールブラックスでレギュラーを狙うには直接対決でしっかりアピールしたい。
■ ショーン・スティーヴンソン × ウィル・ジョーダンの15番対決
バックアップメンバーとして新しくオールブラックスのメンバーとなったスティーヴンソン。ジョーダン相手に良いパフォーマンスができれば、正スコッド入りも見えてくる。両者のランニングスキルの高さを決勝でも見られるか。
〈注目ポイント〉
同カードのファイナルは、直近でいえば2021年度のスーパーラグビー・アオテアロアの決勝だ。
クルセイダーズはイエローカードが2枚出るなど数的不利な場面もあったが(一時は13人)、SOモウンガが抜群のゲームコントロールでピンチを乗り切る。24-13で勝利した。
対するチーフスのマッケンジーはゲームをコントロールできず、大事な場面でのPGを幾度も外していた。チーフスはここ一番で力を発揮できなかった。
それは昨季の準決勝(7-20)での完敗も然りだ。
しかし、今季のチーフスはクルセイダーズ、ハリケーンズ相手にいずれも2連勝、SOボーデン・バレットが率いるブルーズにも勝利した。いずれの試合も競った試合でマッケンジーが抜群のゲームコントロールを見せている。2年前と同じ結果になるとは思えない。
ただ、先週のクルセイダーズは完璧な試合した。やはりノックアウトステージでの戦い方を知り尽くしているチームだと感じさせる。隙のないチーフスでも苦戦を強いられるだろう。
クルセイダーズは相手の司令塔であるマッケンジーを、ターゲットにしてアタックを展開してくることが予想される。パワフルなWTBのファインガアヌクを中心に、突破を試みるだろう。ここをクリアして初めて、チーフスの勝利が見えてくる。
試合で注目するところは、ほかにもたくさんある。基本であるセットピース(スクラム、ラインアウト)、そしてブレイクダウンでの攻防だ。テストマッチレベルになることは間違いないだろう。準決勝でキャップホルダーが並ぶブルーズのFW第3列に圧勝した、クルセイダーズのノンキャップ勢のパフォーマンスは圧巻だった。決勝の舞台でも継続できるかが、試合のカギとなる。
チケットは、販売開始の数時間で完売。NZ国内での注目度の高さはハンパない。フルハウスのスタジアムは、今までにないくらいの熱い決勝戦が見られるかも知れない。
ホームのチーフスが、2012、2013年に連覇して以来の優勝か。
それとも、2017年から優勝を続けている常勝軍団のクルセイダーズが7連覇を成して、レイザー(スコット・ロバートソンHCのニックネーム)のブレイクダンスで終わるのか。
どちらが勝つのか全く予想がつかない。
ワクワクしない理由がない。楽しみだ!