トヨタヴェルブリッツの福田健太は、「びっくりしました」と振り返る。
国内リーグワンのレギュラーシーズンを今年5月までに終え、オフにはチームを介してニュージーランドへ留学する予定だった。現地で、地域代表決定戦に出るのを目指すはずだった。
予定は突然、書き換えられた。出国を直前に控えていた同月下旬、福田はラグビー日本代表に初選出された。
「出発の4日前くらいに連絡が来て。自分は実家に帰って、両親と『ニュージーランドではこんな生活になる』みたいな話をしていたところでした」
ワールドカップ・フランス大会を今秋に控える日本代表は、シーズン中から段階的に候補選手たちと接触。面談で公式戦のプレーをレビューしたり、コンディションを確認し合ったりしていた。
そもそも4年に一度のワールドカップに向け、段階的にグループを固めてきていた。
ずっと日本代表入りを熱望していた福田も、その流れを理解していた。
だからこそかえって、今度の報せには驚いたのだ。
「目指してはいましたけど、ワールドカップ前にメンバーを大幅に変えることもないだろうと思っていたので、びっくりしました」
身長173センチ、体重80キロの26歳。2018年度には明大主将として、チームにとって22シーズンぶり13度目の大学日本一を達成した。
ポジションはSHである。接点の脇での鋭い走りが長所だ。同じヴェルブリッツの主将で日本代表の常連のひとり、姫野和樹にこう太鼓判を押される。
「負けん気が売りで、それがトヨタでのプレーにも現れている。代表でも見せて欲しいです」
ヴェルブリッツでは、ワールドカップ日本大会に参加した茂野海人らと定位置争いを繰り広げてきた。昨季から徐々に出番を増やし、今季は「余裕を持ってプレーができた」。その流れでナショナルチームに入り、6月12日から、浦安合宿に参加している。
「テストマッチ(代表戦)をしていないのでそこまで実感はないですけど、いろんなメンバーとコミュニケーションを取るなか、日本代表の一員になったのだと、時たま、思います」と述べ、こう続ける。
「(代表では)コミュニケーションレベルが高い。若手もすごく話す。『元気、出そうぜ!』とかではなく、ラグビーに関する具体的な声が出ている。FWのハンドリングのレベルも、皆さんが持っている強みだと感じます」
日本代表のSHには2019年ワールドカップ組の流大、2021年以降に主力格となった齋藤直人がいる。合宿に加わらない候補群には、茂野も控える。厳しい状況下、福田は、代表デビューと同時に定位置奪取を目論む。
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの言葉を胸に、自分を表現する。
「どこに行ってもライバル争いはあると思う。まずは、ジャパンがやっているラグビーを理解する。初日にジェイミーと話した時は『相手とコンペティション(競争)しているところ』を評価していると言われました。『練習からコンペティションして、自分が1番になるつもりでやれ』とも。一貫性を持って、プレーする」
ワールドカップの期間中はリーグワンがおこなわれないだけに、今年は「どうやってフランスに試合を観に行こうかな」と考えていた福田。いまは、そのフランスで勝負する機会を得つつある。