ラグビーリパブリック

【長澤奏喜のRWCチャレンジ2023 #3】ウクライナの最高峰から「Not Machine Gun, But Rugby Ball」を叫ぶ

2023.06.16

ウクライナ最高峰の山に登り「Not Machine Gun, But Rugby Ball」を願う長澤奏喜さん(撮影は本人。以下同)


 2019年のワールドカップ開催に向けてのチャレンジ時は、ラグビー登山家として活動した。
 当時の長澤奏喜さんは、大会のトーナメントマークにインスピレーションを受けて冒険を始めた。富士山と重なっている日の出のデザインが、まるでラグビーボールを山頂にトライしているように見えたという。

 過去にラグビーワールドカップに出場した25か国に向かい、それぞれの最高峰に、ラグビーボールでトライするという世界初の冒険だった。

 その人はいま、ウクライナにいる。今回は戦地を歩き、ゴールはパリ。ワールドカップに向けて5月28日、ウクライナの最高峰からふたたび活動を再開させた。

ウクライナの街を歩く

■ウクライナ最高峰のホヴェールラ山へ

 ウクライナの首都キーウから24時間のバスの旅で到着したヤレムチェは、ウクライナ西部の観光都市です。ウクライナ最高峰のホヴェールラ山はこの街が拠点となります。西部一帯は戦争の前線から遠く離れており、のどかで美しい光景が広がっています。実際にこの国が戦争をしているのかと疑いたくなるほどです。

街角で見かけたバレエ学校の練習風景

 しかし、よく見ると街の中心にある教会近くではこの街出身で今の戦争で亡くなられた兵士たちの写真が展示されています。また、鉄橋のそばには擬態を施したウクライナ軍の小屋が建てられ重要なインフラが破壊されないように24時間監視され、ウクライナ蜂起軍の赤と黒の旗(戦いを想起させる旗)が青と黄色の国旗としばし並べて掲げられています。

教会には戦争で亡くなったこの街出身の兵士たちの写真が飾られていた
鉄橋のそばには小屋が建てられ24時間監視されていた
ウクライナの国旗(左)と蜂起軍の旗

 当初は戦時下で山登りをする人は少ないだろうと思っていましたが、実際に山に向かうと200~300名の登山客がおり、カップルを数多く目にしました。このような時こそお互いの愛を確かめるべきだと言えるでしょうか。

「戦争が起きているのになぜあなたはここにいるの?」
と、山の取り付きの所でラグビーボールを持っている僕の姿を見て、1組のカップルに尋ねられました。

「日本ではラグビーは戦争をしないためにラグビーはあるとの教えがあるんだ。それを世界に伝えるために僕はここにいるんだ」

 完全に理解したという表情ではなかったものの、異国から来た者がウクライナの現状に対して何かしようとする行為はウクライナの方々にとって否定的に捉えられるものではなく、むしろ微笑まれながら、ポジティブに受け入れられていると感じました。少なくとも僕がここまで会ってきたウクライナの方々は日本人と言うだけで親しみを持って接してくれます。

 標高は2,061m。登山は3時間ほどかかる程度で決して難しくありません。
 僕は再びラグビー登山スタイルでウクライナ最高峰のホヴェールラ山に挑みました。

登山口で仲良くなったカップルと一緒に記念撮影
愛を確かめる若い人たち

■史上最長2023kmのランパス

 山頂にて、山の中で仲良くなったカップルに助けられながら、このテーマを掲げました。

“Not Machine Gun, But Rugby Ball”

「(持つべきものは)マシンガンではなく、ラグビーボールを」
「(戦うのであれば)戦争ではなく、ラグビーで」

 「戦争を無くす」との人類共通の願いに対して、政治や外交は限界に来ており、全く異なる観点で戦争を終結させる別解を探すべき時に来ていると僕個人として考えております。

 スポーツや冒険といった身体活動が持つ可能性について改めて考え直し、戦争をしないで済む未来に向けた仕組みづくりをウクライナ最高峰ホヴェールラ山の頂上からフランスへ・世界へ向けて叫びます。
 この場所が再出発地であり、フランス・パリをゴールにしてランパス(ラグビーボールを抱え、仲間にパスしながら走り抜ける)します。

■いよいよ冒険の開始

 僕がいるウクライナ西部は比較的安全であり、現在は戦闘の影響を受けにくい地域です。安全を最優先に考えながら、日本のラグビー界で伝統的に受け継がれてきた『闘争の倫理』の教えを、世界のラグビーコミュニティに広めるために全力でトライします。

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