自分が出られそうなワールドカップがいまから約3か月後の9月に控える。ラグビー日本代表のジャック・コーネルセンは、静かなトーンで思いを述べる。
「ラグビーの頂点。国際舞台にいる全員がそこを目指しています。あとは、自分の持つ全力を出し切る。そうすれば、(メンバーに)選ばれる」
6月13日。浦安での代表合宿を本格化させ、2日目を迎えていた。
連日、朝から室内練習場で約1時間ほぼノンストップのタックルセッションがある。
スポットコーチのジョン・ドネヒュー氏が音頭を取る。
頭を下げない、足を踏み込む、捉えた相手を離さないといった基本的なタックルの動作を、どれだけ苦しくなっても怠らないのが肝のようだ。少しでも腰に手を当てる選手がいれば、すぐに指摘される。コーネルセンは言う。
「レスリング、タックル、コンタクト…。ただ、ハードワークをするということです。チームで成長させるべきことをやっているのです」
本格始動前の11日には、フィットネステストがあった。コーネルセンは目標数値をクリアできたと言うが、そのターゲットの設定は時期を追うごとに高く更新されそうだ。列強国との体格差を緻密さと勤勉さで埋める日本代表にとって、圧倒的な持久力(フィットネス)の獲得は不可欠なのだろう。
LO、FLと複数のポジションでスタンバイする通称「ジャック」は、覚悟を決める。
「フィットネスは鍛えないといけない。ジャパンで求められるレベルは高くなります。…向こう何週間かのタフな練習で自然と上がってくるとは思いますが!」
身長195センチ、体重110キロ。元オーストラリア代表のグレッグさんを父に持つ28歳は、プロ選手としてのチャンスを広げるべく2017年に初来日した。
「父は常にサポートしてくれました。来日の判断も、日本代表になりたい思いも後押しされています。手助けしてくれました」
現所属先の埼玉パナソニックワイルドナイツで、練習生として第一歩を踏んだ。
当時のチーム関係者によると、最初のテストの段階では線の細さ、コンタクトへの積極性に課題があった。ただし本人は、短期間でその改善点をクリア。吉浦ケインS&Cコーチのトレーニングに勤勉に打ち込み、練習場では果敢にタックルした。
同僚にいた他国代表経験者からも多くを学び、2021年より日本代表に加わった。おもにLOに入り、ワイルドナイツで培ってきたタックル、空中戦での読みの鋭さをアピールしてきた。
約3か月後のワールドカップに出ることとなれば、プールステージでイングランド代表、アルゼンチン代表といった強豪国などとぶつかる。
イングランド代表には昨秋、敵地トゥイッケナムスタジアムで13-52と敗れているが、攻め続けて点を取ったシーンがあるだけに悲観はしていない。
「昨年の試合では、一貫性を持てなかった。ただ、自分たちが一貫性を持ってベストなプレーをすればどんな相手にも勝てます。そのためにはハードトレーニングが必要。常に、向上心を持つ。(日本代表の)ラグビーを成長させる」
過酷なタックル練習も、厳しい体力強化計画も、全てはワールドカップで結果を出すためにある。