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用意周到。ガルチエHC、過去のすべてのW杯フランス代表指揮官、主将の話を聞く

2023.06.15

悲願のW杯優勝へ、やれることはすべてやるガルチエHC。(Getty Images)



 昨週末(6月9-10日)、フランスではトップ14の準決勝が行われ、トゥールーズがラシン92に完勝し(41-14)、ラ・ロシェルがボルドーに勝利(24-13)。
 レギュラーシーズン1位と2位のチームが強さを見せつけ、決勝へ駒を進めた。

 大きなケガもなく、「我々の選手の80パーセントが準決勝を戦う。もうカオスだ。何が起こっても対応する準備はできているが」と言っていたフランス代表ファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)も安心したことだろう。

 先週、フランス代表はトップ14のシーズンの終了を待たずに、23名の選手を召集し2日間のミニ合宿をおこなった。もちろん準決勝に出場した4チームの選手は参加していない。
 また、すでにシーズンを終えてはいるが、主力のFLシャルル・オリヴォンやWTBダミアン・プノー、LOロマン・タオフィフェヌア、FLセクー・マカルーも召集されず休養を与えられた。

 今回の合宿は、負傷のためしばらく代表から離れていた選手の状態を確認するため、また、代表合宿にはこれまでも参加しているが、まだ出場機会がない選手のワールドカップ(以下、W杯)へ向けてモチベーションを維持するために実施されたようだ。

「ジャン=バティスト・グロ(PR)、ギャバン・ヴィリエール(WTB)、ディラン・クルタン(FL)、アルチュール・ヴァンサン(CTB)、デンバ・バンバ(PR)らの状態を確認することがとても重要だった。この3年間、彼らを育ててきて、彼らはこのグループでのノウハウを持っている。経験にまさるものはない。彼らを失いたくない」とガルチエHCは説明する。

 当初の予定では6月25日から合宿がスタートされる予定だったが、「今シーズンの選手のプレー時間やパフォーマンスを見て、心身ともにリカバリーさせる時間を与えることが望ましいと判断し、第1回目の合宿は中止した。その後7週間、妥協のない精度の高い準備合宿をするためにもその方が良いと判断した」(ガルチエHC)

 7月2日から14日まで、まずモナコで合宿を張る。その後オフを挟んで24日からパリ郊外の国立ラグビーセンターで再開し、8月5日にエジンバラでスコットランドと準備試合第1戦を戦う。

 スコットランドから帰国してからの合宿は、フランス南西部の海辺の街、カップブルトンで実施される。
「ホテルに4か月は長すぎる。バランスの取れた準備合宿にするために自然の中で家族と過ごせるように」(ガルチエHC)、ホテルではなく休暇村で各選手・スタッフにバンガローがあてがわれる。
 練習やミーティング以外の時間は家族と過ごすことができる。斬新だ。

 8月25日までカップブルトンで合宿をしながら、スコットランド戦(8月12日)、フィジー戦(8月19日)、オーストラリア戦(8月27日)と全部で4試合の準備試合を戦う。
 こちらもフランス代表としては初めてのことである。

「怪我のリスクがあると言われるが、試合を重ねて準備を整え、W杯に臨むべき」というのがガルチエHCの考えだ。

 この試合のあとにも約1週間のオフが与えられ、9月3日にベースキャンプ地に集合。5日後のNZ戦に備える予定だ。

「2020年から計画的に強化を進めてきて予定通り進んでいる」(ガルチエHC)からこそできるスケジュールだ。また、「これまでのオフの期間もそれぞれが自宅で与えられたメニューを実行していることが、モニタリングで得られたデータが証明している。選手を信頼できるから」とスタッフは言う。

 さらに準備合宿の実施過程でガルチエHCは、これまでW杯でフランス代表を率いたすべてのHCとキャプテンの話を聞いた。
 あらゆるシナリオを想定して準備するために「彼らがどのような経験をして、何を感じたのかを聞きたかった」という。

 一方、今フランスで注目されているのは、トゥールーズのLOエマニュエル・メアフー(24歳)が今回のW杯に参加できるかどうかということだ。
 メアフーはNZ生まれ、オーストラリア育ち、サモア系の家系。2018年12月からフランスでプレーしており、203センチ、140キロの巨体で、パワーだけでなく、動けてハンドリングのスキルも高い。先週末のトップ14準決勝でもトライを挙げている。
 現行のワールドラグビーの規定では居住開始から5年後の2023年12月からフランス代表資格を得ることになるが、改定前の『居住3年』ルールが適用されれば今大会からフランス代表としてプレーできる。

 「必要な手続きはすべておこなった。ワールドラグビーからの回答を待っている。もちろん、我々は彼を獲得したい」とガルチエHCも心待ちにしている。

 6月21日に準備合宿に参加する42名の選手が発表され、その後も新たな合宿がスタートするたびにメンバー発表がある。

「毎回、各ポジションにランク1から6、ポジションによっては7まで選手を選ぶから、100人近い選手を選ぶことになる。42人のリストに入らない選手にも、W杯に参加する可能性があることを伝える。すべての選手に言いたい。いつでもフランス代表のバスに乗れるように、最後の試合まで準備をしておいてほしい」とレ・ブルーの将は呼びかける。

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