秩父宮ラグビー場のメインスタンドを埋めたファンは、赤白ジャージーの躍動に沸いた。
5月27日、秩父宮ラグビー場でU20日本代表とNZU(ニュージーランド大学クラブ代表)が戦った。
奪ったトライは、それぞれ7つずつ。52-46の試合を制したのはU20日本代表だった。
出場した23人全員が持ち味を出した試合の中で、80分ピッチに立ち続け、体を張り続けたのが8番のジャージーを着た宮下晃毅(こうき)だった。
もともとはベンチスタートのはずだった。
しかし、先発予定だった最上太尊(明大2年)のコンディション不良により、試合前日に先発出場を伝えられた。
「ジャージープレゼンテーションの時に正式に言われました。先発だとしっかりとした準備ができる。気合いも入りました」
結論から言うと宮下は、NZUのジェイソン・マクリーン コーチ、PRニック・グロゲン主将の両者から高い評価を得るパフォーマンスを出した。
ふたりは、「ボールキャリーも素晴らしく、チームをよく引っ張っていた。何をすべきか理解して動いていた。トライにもうまく絡んでいたと思います」と背番号8を称えた。
対戦相手から評価されたトライは、後半32分に奪ったものだ。
宮下は、走力とスキルの両面を見せた。
6フェーズ目のアタックだった。
左のエッジに立っていたNO8は、パスをつないで前進するBKラインを忠実にサポートし、パスを受ける。
さらに前進し、小刻みなステップでディフェンダーを引きつけた。
最後はタックルを受けながらも、FL小林典大にパスをつないでトライに結びつけた。
報徳学園高校の2年時まではCTBだった。同年の花園前、チーム事情(先輩のケガ)でNO8に転向する。全国大会では「ガリガリの体でプレーしました」。
それ以来、FWで力を伸ばした。
CTB時代は80キロだった体重は、現在101キロ。たくさん食べた。食事の回数も増やした。
走力を維持したままパワーも身につけた。
自信を積み重ねてきたはずだった前進力。
しかし、この日の試合で得た体感は、「初めて外国のチームと戦ってみて、強いと思っていた自分のボールキャリーが予想していたほど通じなかった」と話す。
「上半身が強い相手に高く当たり、返されてしまうシーンがありました。もっとフットワークを使い、低い姿勢でプレーしないと」
修正点は分かっている。
そこを改善し、南アフリカで開催されるU20チャンピオンシップに参加するメンバーに選ばれたい。
法大に入学した昨年は、扁桃腺の手術などを受け、不本意な夏を過ごした。
9月になって復帰するも、今度は骨折する。その後に回復も、ジュニア戦への出場にとどまった。
だから2023年度シーズンにかける思いは強い。
U20代表でも法大でも、フル回転したい。「たくさん試合に出て、リーグワンの方(リクルーター)にも見てもらいたいですね」と言う。
出場機会を得るための準備を重ねる。
目標とするプレーヤーは、花園近鉄ライナーズに所属する4歳上の兄、FL大輝さん(報徳学園→立命館大)。
「いつも、いろんなことを教えてくれる」と感謝する。
短くした髪はNZU戦前日、チームメートの田島貫太郎(明大3年)にバリカンで刈り込んでもらった。
オールドファンはその風貌から、62キャップを持つ元日本代表NO8伊藤剛臣を思い出したかもしれない。
法大の偉大な先輩のように、大きな足跡を残す選手になれるか。