4年生になって初めてつかんだAチームでの先発の座だった。
日大の1番、依藤和史(えとう・かずふみ)が5月28日におこなわれた関東大学春季大会(Bグループ)の法大戦で、試合開始のキックオフ時からピッチに立った。
今季ここまでの2試合で背負っていたのは17番。
3年生時にリーグ戦2試合への出場経験もあるけれど、いずれもベンチからの登場だった。
「ジュニア戦では先発もありましたが、Aチームでは今回が初めてです。緊張しました」と笑顔を見せた。
69-22と大勝した一戦で、依藤は後半22分までピッチに立った。
序盤こそ相手との駆け引きもあり、スクラムを組み直すシーンもあった。
レフリーからアングルを注意され、反則をとられもした。
しかし、時間の経過とともに対応し、圧力をかけていった。
166センチ、90キロと小柄。この試合でも、「8人でしっかり固まって押す」ことに集中したと振り返る。
後半は前半のパフォーマンスをもとに修正し、相手のコラプシングを誘う強烈プッシュもあった。
スクラムの優勢は、勝利の一因となった。
福岡出身。小学1年生の時に中鶴少年ラグビークラブでラグビーを始めた。友人の誘いにのった。
最初からFWで、東海大福岡高校では3番を任された。県のベスト4の常連だった。
もともとは県内の大学に進学してラグビーを続けるつもりだった。
しかし、「途中から関東の大学でやってみたいと思うようになって」日大に進学する。
大学進学と同時に1番に転向したのは、体のサイズを考え、そちらの方がチャンスに恵まれる可能性が高くなるだろうと助言をもらったからだ。
低さを武器にする。
「練習でも、(チームの仲間の)トイメンに組みにくい、と言われています。低く構え、潜り込む感じで組みます」と独自のスタイルを言葉にする。
小さい人には小さい人の生きる道がある。
「タックルも、ボールキャリーも、低くプレーすることで前へ出られます」
迷いはない。
先発出場は、いつもと少し勝手が違った。
「いつもは後半に出ていって力を出すための準備をしますが、今日はアップのときから、最初から力を出せるように準備をしました」
睡眠を取り、午前中から体をあたためた。
いい緊張感を持って、試合開始のホイッスルを待った。
最終学年だ。
「4年生が中心となってチームをまとめ、戦っていきたい」と責任感を口にする。
「先発に定着し、もっと試合に出られたらいいですね」
記念すべき試合を終えて、その気持ちは以前より強くなったかもしれない。
卒業後もトップレベルでプレーを続けることは、いまは頭にない。日本一を目指すラグビーは、今シーズンが最後となる覚悟でプレーする。
チームに貢献したい。その思いは、背番号に関係なく強い。