ラ・ロシェルが今年もチャンピオンズカップを制した。10年前は2部リーグだったチームが2年連続でヨーロッパのクラブチャンピオンに輝いた。
10年前に誰が予想できただろうか。3年前でも予想した人は多くはなかっただろう。この試合の前評判も対戦相手のレンスターに分があるとされていた。
このチームに勝利のカルチャーを植え付けたのは、間違いなくヘッドコーチ(以下、HC)のロナン・オガーラである。
自身も現役時代にアイルランドのマンスターで2度ヨーロッパチャンピオンを経験した。それまでトップ14を重視していたラ・ロシェルの選手に、チャンピオンズカップで勝つ意欲を植え付けたのも彼である。
決勝後の記者会見で、どんな気分かと尋ねられた。
「とてもいい気分。試合の序盤は本当に苦戦した。最初の15分はローラー車で薙ぎ倒されているようだった。レンスターは何か仕掛けてくるだろうと予想はしていたが、開始から45秒でトライされるとは…。レンスターの試合の入りは本当にファンタスティックだった。5分で0-12になり、11分で0-17。とても難しい状況だった。諦めてしまうことは簡単なことだったが、選手たちは諦めなかった。パニックにならず、23人でとてつもない努力をし、真のチャンピオンの決意を見せた」
歴史に足跡を残したと思うか。
そんな問いには、「このグループを誇りに思う」と答えた。
「このチームには偉大なリーダーがいて、彼らがチームにエネルギーを吹き込んでくれる。極めて困難な状況で、勝つための答えを見つけたリーダーたちを大変誇らしく思う。私たちはスペシャルなチームのカテゴリーに入ることができた。だがまだこれからだ」
チャンピオンズカップで2連覇した数少ないチームとなったが、オガーラ・メソッドとは?
「楽しむこと。堪能すること。チームの大義やルールを定めたら、選手は守らなければならない。そのためにはまずリーダーが守らなくては。でなければ他の選手がついていかない。その上で筋の通った行動を取り、規律を守ること」
決勝の準備をする週はHCにとって最も難しいと言われている。
「チーム内に悪い要素がないからネガティブな波動を感じることはなかった。でもHCとして難しい1週間だった。というのは、全員が決勝に出たい。でも出られるのは23人だけ。そのために全員と話し合わなければならない。これはとてもエネルギーを要する。試合メンバーに入らないと伝えることは、彼らを刃物で突き刺すようなもの。ほんの10秒で彼らの自信や価値を失わせてしまうのだから。彼らにとっても辛いし、私にとっても辛い。だからとても注意して彼らを見守る。負傷者が出れば試合に出てもらってしっかりパフォーマンスできる状態でいてもらわなければならないから」
レンスターというヨーロッパの強豪チームに2年連続決勝で、しかも今年は敵地での勝利。
ラ・ロシェルはヨーロッパラグビーの新しい強豪チームになりつつあるのか。
「強豪チームを築き上げることがプラン。ほんの些細なことで勝敗が分かれるということが今回もよく分かった。たった1点で(最終スコア27-26)、一つのコンバージョンを外しただけで(レンスターの2つのコンバージョンがゴールポストに当たってポールの外側に落ちた)、彼らは泣き、私たちは喜んだ。容赦無い。トップレベルのコーチも選手も非情でなければならない。私たちはトップ14の決勝で1度、チャンピオンズカップの決勝で2度敗れました(1度はチャレンジカップ)。そこで分かったことは、決勝で勝つためには、レギュラーシーズンにしていることをするだけでは足りないということ。この決勝戦でこのチームには限界がないということを見せてくれた。とんでもなくポジティブだ」
ラ・ロシェルのヴァンサン・メルラン会長の信頼も厚く、「偉大なコーチであり、偉大なマネージャー。ラグビーを知り、選手のこともよく知っている」と讃えている。
決勝のあと、会長はオガーラに「幸せか?」と尋ねたという。
「彼はあまりにも多くのことを求める性分だから、幸せの横を通り過ぎてしまうことがある。でもあの場では、ラ・ロシェルをレンスターに勝たせることができて彼も幸せで誇らしげだった」と語っている。
ダブリンからの飛行機の出発が遅れ、ラ・ロシェルの空港に着いたのは日付を跨いで午前4時に近かったが、チャンピオンを迎えようと1500人以上のファンが待ち構えていた。
その12時間後にはラ・ロシェルの旧港で優勝パレードが行われた。昨年の3万5000人を超え、今年は4万人が詰めかけた。
ホームゲームは相変わらず満員御礼が続いている。人口8万人に満たない小さな市でしっかりと地域に根付いている。
オガーラも「最高のサポーター」と感謝する。
ラ・ロシェルのアイリッシュマンは、トップ14でも優勝して2冠を狙う。