ラグビーリパブリック

今季リーグワンのMVPは立川理道、新人賞は長田智希が受賞。ベスト15に木田晴斗ら選出。

2023.05.22

スピアーズの主将としてリーグワン初優勝を遂げ、MVPも獲得した立川理道(撮影:松本かおり)


 2022-23シーズンのジャパンラグビーで大賞に輝いたのは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイを初の日本一に導いた立川理道だった。年間表彰式「NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23 アワード」が5月22日に都内でおこなわれ、スピアーズのインサイドCTBでキャプテンも務める立川は、MVP初受賞となった。

 日本代表として56キャップを持つ経験豊富な33歳。スピアーズが下部リーグ(トップイースト)に降格していた2012年に入部し、今季は15試合に出場、埼玉パナソニックワイルドナイツとのプレーオフ決勝ではプレーヤー・オブ・ザ・マッチの活躍でチームを優勝に導いた。
 ディビジョン1(D1)のMVPに選ばれた立川は表彰式で、「この賞をいただけて本当に嬉しく思います。ここに来てMVPを獲ったということを知ったので、本当にびっくりしてるんですけども、自分ひとりの力ではなく、チームのみなさんのおかげですし、オレンジアーミーのおかげで、この賞を獲れたと思っています。来季もまたこの賞をいただけるように、成長していきたいと思います。ありがとうございました」とコメントした。

 ディビジョン2(D2)のMVPは、入替戦を制して来季D1に昇格する三重ホンダヒートのトム・バンクスが初受賞。オーストラリア代表としてワールドカップスコッド入りを目指すバンクスはVTRでの出演となり、「このアワードを受賞できてものすごく光栄です。D2にはたくさんの才能ある選手がいるなか、このアワードをいただいたことは本当に特別なことです。そしてここまでの6カ月間、応援してくださった皆さん、本当に感謝しています。ありがとうございます」とメッセージを寄せた。

 ディビジョン3(D3)のMVPは、リーグ戦で最多11トライを挙げてNTTドコモレッドハリケーンズ大阪の優勝・昇格に貢献した吉澤太一。吉澤は選手間の投票によって選ばれるD3の「プレーヤー・オブ・ザ・シーズン」も受賞している。セブンズ日本代表として活動中のため表彰式は欠席で、VTRで「リーグワンの運営スタッフの皆様、ファンの皆様、何よりチームメイトに感謝したいと思います。来シーズンはD2でも頑張りたいと思います」とコメントした。

世界的選手も多いワイルドナイツでレギュラーを獲り、新人賞に輝いた長田智希(撮影:松本かおり)

 そして、新人賞は、埼玉パナソニックワイルドナイツのCTBやWTBとして活躍した23歳、長田智希が受賞となった。新人賞は、ファン、メディア、監督・ヘッドコーチ、主将、表彰選考委員会による投票で選ばれ、長田は最多ポイントを獲得し、2位の木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、3位のヴィリアメ・ツイドラキ(トヨタヴェルブリッツ)を上回った。

 長田はチームが連覇を逃した悔しさをかみしめながら、「正直、いま一番の感情は『嬉しい』じゃないんですけど、本当に光栄に思います。新人賞ということで、ルーキーだからこそ思いきりやれたというところもあると思います。ワイルドナイツには本当にすばらしい選手がいっぱいいて、すばらしい環境があって、そのおかげで僕は今シーズンやりきることができました。来シーズン以降、さらにチームに貢献できるように、さらに成長して、もっと強くなります。ありがとうございました」とコメントした。

ベストフィフティーンに選ばれ表彰式に出席した選手たち。上段左から稲垣啓太、オペティ・ヘル、ワーナー・ディアンズ、姫野和樹。下段左からファフ・デクラーク、バーナード・フォーリー、木田晴斗、尾崎晟也、長田智希、ディラン・ライリー、野口竜司(撮影:松本かおり)

 ベストフィフティーンには、トップリーグ(リーグワンの前身)から通算して9季連続9回目の受賞となった稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)などが選ばれている。受賞者とコメント(一部選手)は以下のとおり。

<ベストフィフティーン>
■PR1: 稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 2季連続2回目
■HO: マルコム・マークス(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初受賞
■PR3: オペティ・ヘル(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 2季連続2回目
■LO: ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京) 初受賞
■LO: ハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス) 初受賞
■FL: 姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ) 初受賞
■FL: ピーターステフ・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ) 初受賞
■NO8: クワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ) 2季連続2回目
■SH: ファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス) 初受賞
■SO: バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初受賞
■CTB: 長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 初受賞
■CTB: ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 2季連続2回目
■WTB: 木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初受賞
■WTB: 尾崎晟也(東京サントリーサンゴリアス) 初受賞
■FB: 野口竜司(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 初受賞

【稲垣啓太】
「この賞を獲れたのは、自分の力だけではなく、たくさんの人にサポートしていただいたからだと思ってます。次はワールドカップが控えているので、そちらでもしっかり結果を残せるように頑張っていきたいと思います」

【オペティ・ヘル】
「本当にありがとうございます。オレンジアーミーもありがとうございます。また来年、アリガト」

【ワーナー・ディアンズ】
「タフなシーズンでしたが、すごい楽しかったです。また来年、選ばれるように頑張ります」

【姫野和樹】
「来年も、もっともっとエキサイティングなプレー、試合をお見せすることが僕の責だと思います。来年もまた頑張ります」

【クワッガ・スミス】
「来シーズンが楽しみです。インターナショナルシーズンでもリーグワンを代表する選手として活躍し、(南アフリカ代表として)ラグビーワールドカップでも全力を尽くします。そしてワールドカップに出場するすべての選手たちの健闘を祈ります。一緒に日本の名を高めていきましょう」

【ファフ・デクラーク】
「今回はこの賞をいただけて大変光栄に思っています。日本には本当に優秀な9番(SH)がたくさんそろっており、日本代表もどの9番を選ぼうか頭を悩ますくらいいろんな選手がいるなかで、今回、自分を選んでいただき本当に嬉しく思います。ありがとうございました」

【バーナード・フォーリー】
「自分だけじゃなくチームの努力があったから。クボタとしてもすばらしいことができた1年でしたが、本当にみんなのハードワークが実りました。来シーズンもしっかりやっていきたいと思っています」

【ディラン・ライリー】
「このアワードはめっちゃ嬉しいと思っています。来シーズンも頑張っていきたいと思います。応援よろしくお願いします」

【長田智希】
「偉大なプレーヤーがたくさんいるなかで、僕がこのような賞をもらって正直驚いていますが、この賞にふさわしい選手になれるように、来季もさらに成長して頑張ります」

【木田晴斗】
「充実したシーズンになったのも、オレンジアーミーであったり、チーム関係者の熱い応援のおかげだと思います。現状に満足せず、来シーズンもっと成長した姿を見せられるように頑張りたいと思います」

【尾崎晟也】
「自分自身初のベストフィフティーンに選んでいただき、本当に嬉しく思います。来シーズンは今シーズン以上のパフォーマンスを出せるように、さらに成長していきたいと思います」

【野口竜司】
「数多くの15番(FB)、すばらしい選手がいるなか、このような賞をいただけてとても嬉しく思いますし、誇りに思います。来シーズンももっともっと成長して、またリーグワンに帰ってきたいと思います」

日本代表SOとしてワールドカップでも正確なゴールキックが期待される松田力也(撮影:松本かおり)

 なお、優秀なゴールキッカーであるフォーリーはD1のリーグ戦で173得点を記録し、得点王にも輝いている。
 同じくベストフィフティーンに選出された尾崎は18トライを挙げて最多トライゲッターにもなり、「体を張ってたくさんのチャンスを作ってくれたチームメイトがいたからだと思っています。本当に心から感謝したいと思います。この結果に満足することなく、プレーヤーとしてもっともっと成長して、また来シーズン、この賞を受賞できるように成長していきたいと思います」と語った。

 ベストキッカーは、ゴールキック成功率85.5%だった松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が初受賞。日本代表のSOとしても期待される松田は、「狙っていた賞でもあるので本当に嬉しく思います。でも、チームとしては悔しい結果に終わったので、来シーズンもチームの勝利に貢献できるように、またこの賞をもらえるように頑張りたいと思います」と語った。

 ベストタックラーは、タックル成功率87.9%だったハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス)が初受賞。

 ベストラインブレイカーは、ラインブレイク数(ディフェンスラインをランニング、キック、インターセプトで突破した回数)が23回だった木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が受賞している。リーグ戦でトライランキング2位の16トライを挙げた木田は、「スピアーズのいいアタックプランだったり、すばらしい選手たちのおかげで多くのラインブレイクを生み出すことができました。来シーズンはさらに成長して、よりアタックを見せられたらなと思います」と語った。

若手有望株として注目のひとりとなった木田晴斗(撮影:松本かおり)
功労賞受賞のスピーチも落ち着いていてユーモアがあった久富雄一(撮影:松本かおり)

 また、リーグワンに所属する全23チームの選手によって選ばれる「プレーヤーズ・チョイス・プライズ」もあり、対戦相手として、最も苦しめられた選手に贈られる賞「プレーヤー・オブ・ザ・シーズン」は、D1がクワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ)、D2はパブロ・マテーラ(三重ホンダヒート)、D3は吉澤太一(NTTドコモレッドハリケーンズ大阪)が受賞している。
 数字には表れない、実際に受けたタックルから選ぶベストタックラーに贈られる賞「ゴールデンショルダー」は、D1は2季連続で山本凱(東京サントリーサンゴリアス)が選ばれ、D2はジミー・トゥポウ(浦安D-Rocks)とパブロ・マテーラ(三重ホンダヒート)、D3はコルビー・ファインガア(九州電力キューデンヴォルテクス)が初受賞した。

 そして功労賞は、トップリーグのリーグ戦とリーグワンの公式戦出場数が通算177試合となり歴代最多出場記録を更新し、最年長出場記録も44歳5カ月10日に伸ばした久富雄一(日野レッドドルフィンズ)が受賞した。
 元日本代表PRでもある経験豊富な久富は、「選考していただいた関係者の方々、本当にありがとうございます。リーグワンに関わっている皆様、ファンの皆様、そして何より、頑丈に産んでくれた両親に感謝したいと思います。よく、長くやる秘訣を訊かれるんですけど、特に変わったことはしていません。自分でしっかり考えて、当たり前のことを当たり前にやる。それだけをやってきたつもりです。一つ挙げるなら、自分は結構ジャンクな物が好きで、菓子パンとかいっぱい食べるんですけど、もしかしたら、そういう添加物が自分の体に合ったのかなと思ってます(笑)。もしかしたら、来年もこの賞をいただきに来るかもしれないので、そうなったらよろしくお願いします」と語り、大きな拍手を浴びていた。

 優秀ヘッドコーチ賞は、D1は、2016年からクボタスピアーズの指揮官となって今季初優勝に導いたフラン・ルディケ ヘッドコーチが受賞。D2は、三重ホンダヒートを率いて来季D1昇格を達成した上田泰平ヘッドコーチ、D3は、優勝とD2昇格を果たしたNTTドコモレッドハリケーンズ大阪のマット・コベイン ヘッドコーチが選ばれた。

 そして、優秀なレフリーに贈られるベストホイッスル賞は、史上最年少の19歳で日本協会A級公認レフリーとなり、経験を重ね、現在、早稲田大学4年生でもある古瀬健樹レフリーが初受賞となった。
 古瀬レフリーは「リーグワンに関わるすべての方々、チーム関係者の皆様、そして、シーズン一緒に活動してきたすべてのレフリーの皆様に感謝申し上げたいと思います。リーグワンレフリー全員で、さらにリーグ全体を盛り上げられるように、これからも成長を続けてまいりたいと思います」とコメントした。

ベストホイッスル賞を受賞した古瀬健樹レフリー(撮影:松本かおり)