埼玉パナソニックワイルドナイツのジャック・コーネルセンは、大一番を静かに見据える。
5月20日、東京・国立競技場でリーグワンのプレーオフ決勝へ出る。
取材に応じたのは決戦の約1週間前。旧トップリーグ時代から続く国内タイトル3連覇が期待されるなか、淡々と述べる。
「特別な1週間ではありますが、これまでの(試合への)1週間との変わりはないです。これまでの過ごし方が、我々を決勝戦に連れてきてくれたからです」
現場で請われる人だ。身長195センチ、体重110キロの28歳は、LO、FL、NO8と複数のポジションでスタンバイ可能。攻防の起点で光る。タックル、接点へのプレッシャー、ラインアウトでの捕球や競り合いに長ける。
苦労人でもある。オーストラリアはブリスベンの出身。母国代表の名選手だったグレッグさんを父に持つが、本人はプロ選手となるチャンスを海外に求めた。2017年に初来日した。ワイルドナイツには最初、練習生として入った。
当初の体重は「100キロ」で、見た目がかなり細かった。しかし、S&Cを担当する吉浦ケインとの二人三脚でいまのサイズを構築した。トップレベルに通じるパワーをつけた。
私生活も充実させた。拠点がいまの熊谷に移る前は、群馬県内のグラウンドの近くで同郷のベン・ガンター、ディラン・ライリーと切磋琢磨してきた。3人揃ってワイルドナイツのレギュラーとなってからも、3人でトレーニングを重ねてきた。
異国で出世してきた過程を、コーネルセンはこう振り返る。
「初めて日本に来た時は、自分がいた場所とは異なる環境とあって不安や恐れがありました。しかしこのチームが私という存在を自然と受け入れてくれた。それによって、私は大きな環境の変化を大きなものに感じないでいられました。エンジョイすることこそ我々がラグビーをする理由。このチームでは、ロビー(・ディーンズ監督)さんが我々にエンジョイさせる環境を作っています」
2021年に初選出された日本代表でも、主戦のLOの座を争っている。
「来日1~2年目、周囲から日本代表になれる可能性があると聞きました。長く日本で活躍したい思いもあったので、少しでもその可能性があるなら(代表入りに)チャレンジしたいと思いました。現状、そこまでジャパンのことは考えていません。まずはワイルドナイツでいいパフォーマンスを出すことに全神経を注いでいます」
ワールドカップフランス大会を今秋に控えるが、いまは国内で頂点に立つのを目指す。