因縁の対決は熱かった!
スーパーラグビー・パシフィックの第12節。最も注目されたカード、クルセイダーズ×ブルーズが5月13日、クライストチャーチのオレンジセオリースタジアムでおこなわれ、クルセイダーズが15−3のスコアで激闘を制した。
ライバル対決とあり、注目度が高くチケットは完売となった。クルセイダーズカラーの赤で染まったスタジアムの雰囲気は、試合が始まる前から熱かった。
◆30分間ノースコアも激しいフィジカルバトルで負傷者が続出。
序盤からクルセイダーズが優勢だった。
途中で発表になったスタッツに驚いた。開始14分でクルセイダーズのタックルは僅か2回。一方のブルーズは71回。クルセイダーズがボールを支配し、攻め続けていたか分かる。
しかしブルーズは自陣22メートル内のピンチを迎えながらも、何度もターンオーバー(相手ボールを奪う)をして得点を許さなかった。
激しいフィジカルバトルは、テストマッチレベルと同等だった。
開始10分も経たないうちにクルセイダーズのPRジョー・ムーディーが足首のケガで退場。代わりに入った50試合目を迎えたオリー・ヤガーも直ぐに出血で一時退場となった。
ブルーズに至っては、激しいコリジョン(衝突)によりラインアウトの核のLOサム・ダリ—が腕の骨折で退場となった。負傷者の多さが試合の激しさを伝えた。
均衡を破ったのはクルセイダーズだった。
敵陣ゴール前のラインアウトからモールでトライを狙いにいく。モールにこだわるかと思わせておいて、HOコーディー・テイラーがボールを持ち出してディフェンス数人を巻き込んでインゴール目前に迫る。
速いリサイクルかからLOクインテン・ストレンジがピック・アンド・ゴーでインゴールになだれ込んだ。この試合の最初のスコアは、試合開始30分過ぎてからだった(7−0)。
その後、両軍ひとつずつPGを決めて10−3でハーフタイム。ロースコアながらも、内容の濃い前半だった。
◆ブルーズ、キャプテンにレッドカード。
後半はブルーズのキックオフで始まり、前半に続いてキックオフからの空中戦の強さを見せた11番、ケイレブ・クラークがボールを確保してチャンスを作り出した。
しかし、その後のキックのオプションがうまくいかずチャンスを自ら逃した。
その直後の後半3分、クルセイダーズの攻撃にスイッチが入った。
長いフェーズを重ね、BKへ展開。13番ブレンドン・エノーからリーターンパスを貰った12番デイヴィット・ハヴィリが、ディフェンスを数人かわしてチャンスを作る。オフロードパスで11番レスター・ファインガアヌクに繋いだ。
タッチライン際を激走するファインガアヌクに8番ホスキンス・ソトゥトゥのタックルが迫る。
しかし背番号11は、宙に舞いながら左隅ぎりぎりにボールを押さえた(15−3)
クルセイダーズのBKの見事な展開 &フィニッシュ。スタジアムが最高潮に盛り上がった瞬間だった。
このトライの一連のプレーで試合のキーポイントとなる判定があった。
ブルーズのキャプテン、ダルトン・パパリィイがクルセイダーズの10番モウンガに危険なタックル。イエローカードが出た。さらに、その後のTMO審議でレッドカードへ格上げとなった。
問題はこれだけでなかった。
モウンガへの危険なタックルの直後に、3番タマティ・ウイリアムズが明らかにノックオン(モウンガからのパスを取り損ねた)をしているプレーがあった。
パパリィイがイエローカードを貰った時に、レフリーにノックオンの事を詰め寄った。しかし、TMO判定は、危険なタックルの場面のみの検証で終わった。 アンラッキーとしか言いようがない。
このトライがなければ10-3と7点差。試合はもつれていたかもしれない。
ブルーズの唯一の見せ場は、残り10分の時間帯だった。自陣22メートル内でバレットからのショートパントの攻撃。自らボールを拾い、さらにキックをしてチャンスを作った。
しかし楕円球のバウンドは、ブルーズの選手には渡らずトライ目前でチャンスが途切れた。万事休す。
結局、最後まで15−3のスコアは変わらなかった。クルセイダーズが、今季2回目のブルーズ撃破に成功した。
◆勝敗の要因は。
一試合通じてブルーズのボール支配率は4割以下。チャンスが少なかった。
しかし、あえてと思えるほど多くのキックを使った印象だった。効果的でないキックも多く、クルセイダーズにボールを返しているだけになっていた。キッキングゲームは機能していなかった。
パパリィイのレッドカードは、試合に明らかに影響を与えた。
ブレイクダウンが劣勢になった。レッドカードにより、20分間は代わりの選手を投入できない。インパクトで期待していたFLアキラ・イオアネの投入(63分)が遅くなったのも大きかったか。
クルセイダーズは試合を通じてディフェンスが良く、ブルーズに何もさせなかった。スクラム、ラインアウトのセットピースの安定感もあった。キッキングゲームでもクルセイダーズが上回った。
強いクルセイダーズが戻ってきたと思わせる試合だった。クルセイダーズファンで埋め尽くされたスタジアムは笑顔で溢れかえっていた。
しかし試合後のブルーズファンの反応は、クルセイダーズのノックオンを見逃した事にかなりご立腹のようだった。明らかなノックオンの見逃しだっただけに、多くのファンは納得がいかなかった。
クルセイダーズは、チームの大黒柱のLOサム・ホワイトロック、FLイーサン・ブラカッダーの二人のオールブラックスを欠いた状況で、強力FWを擁すブルーズに勝利をした。先月までミスが目立っていたが、BKしっかり立て直している。
レギュラーシーズンも終盤に差し掛かり、しっかり仕上げてきたクルセイダーズ。
今年も頂点に立つのだろうか。
試合後は、ブルーズのアキラ・イオアネの100試合のセレモニーがあった。男泣きをしていたアキラが印象的だった。