ラグビーリパブリック

オフは皆でサウナ。スピアーズ翼たちの肖像。

2023.05.13

リーグワン2022-23でトライ王を争った木田晴斗(写真提供:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)


 同じポジションの同じ年代の選手が、普段から本当に親しい。国内トップのスポーツシーンにあって、珍しいのではないか。

 ラグビーのリーグワン1部に加盟するクボタスピアーズ船橋・東京ベイにあって、WTBの位置を担う3人の若手である。練習時間外も行動をともにする様子には、チーム関係者も驚くほどだ。

 3人のうちもっとも年下で24歳の木田晴斗は「(同じ)ポジション(ならでは)のいい話もできる」。リカバリーのためプライベートサウナに出かける時は、1学年上の根塚洸雅、2学年上の金秀隆も連れ立ってゆくことが多い。

 特に金は、木田が趣味の料理を自分に振舞う様子をSNSに公開する。金は笑う。

「切磋琢磨しながら…という感じです。ただ仲がいい感じではなく、練習ではバチバチやっています」

 元法大主将の根塚は、同僚と良好な関係を築くからこそ互いに「負けたくない」と思えるのだと説く。

「皆がその人、その人に特徴があって、うまいのもわかっています。それぞれのラグビー観を認めたうえで仲良く、で、いざラグビー(練習)になったら激しく」

 前年度のリーグワンで新人賞を獲った根塚は、「僕はするする、ぬるぬる抜けていく、アジリティで勝負したいタイプ」と自己分析する。

 立命大の元主将でもある木田は今季、ブレイクした。レギュラーシーズンにおいて、リーグ2位の16トライを奪取。一緒に試合に出ることの多い根塚は、木田の凄みを海外勢顔負けの「フィジカリティ」だと見る。

 金は一昨季、トップリーグの最終年度で新人賞に輝いている。全国的な実績がささやかな朝鮮大の出身ながら、ランニングスキルと万能性で爪痕を残せた。

 根塚も金を「間合いが独特。キックもうまい。バランスがいい」とリスペクト。実戦練習で、相手側のチームのひとりとしてマッチアップする際は「嫌な存在」になると感じる。

根塚洸雅。昨年は日本代表初キャップを獲得した(写真提供:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

 ちなみに、揃って関西にルーツを持つ。ボール保持者と防御役が1対1になって抜き合う練習では、3人で「どうステップを踏んでるん?」「もっとこうしたらいいんちゃう?」と言い合う。

 5月14日、東京・秩父宮ラグビー場。上位4強からなるプレーオフの準決勝に挑む。トップリーグ時代から通算して3季連続となる大舞台だ。

 初の決勝進出を目指し、今年度のレギュラーシーズンで2度、制している東京サントリーサンゴリアスとぶつかる。

 最多トライのタイトルに近づいていた木田は「数字というところでは結果は出ていますけど、それは自分の力だけではないのはもちろん、数字以外のところも重要だと思う」。ボールを持っていない時の動きでも力を示したい。

 今年3月下旬には日本代表のミーティング合宿に初参加も、「まだ何も達成していない」とどん欲なままだ。

「日々の練習を積み重ねたうえでの自信を持つことが大事。あとは、これだけシーズン、試合が続くことを経験してこなかったので、コンディションを整えることは勉強になりました」

 根塚は今年4月、社員選手からプロに転じた。

 昨春、初めて日本代表入りした。サンゴリアスでWTB、もしくは最後尾のFBを担う松島幸太朗、尾崎晟也らの迅速な反応を間近で見た。

 それに比べると、自身は「プレー中の一瞬の判断が(周りより)ちょっと遅い」と痛感した。

 より「ラグビーのIQ」を高めるには、競技と向き合う時間が必要だと思った。同年秋の代表メンバーに選出されたことで、会社から転向が承認された。

 それまでデスクワークに使っていた時間は、キックの個人練習、ストレッチ、木田や金とのアクティブレスト、自身のトレーニング動画の振り返りに用いる。

「(自分の)役割を理解して、試合で発揮しないといけない」

よきライバルとポジションを争う金秀隆(写真提供:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

 FBも兼務する金は今回、サンゴリアス戦の登録メンバーから漏れた。

 最近は出番が限られるなか、「今年1年、出場機会が少なかったことは自分のなかではいい刺激になったかなと思います」。木田、根塚といった代表に絡む後輩らと競い合うことで、接点、防御で逞しくなったと実感する。

「自分自身はレベルアップしている。全体的に、一段、一段、上がっています。出場機会は少ないですけど、いまが一番、パフォーマンスはいい」

 もちろん、「負けず嫌いなので(試合に)出られなくて思うこともあります。まず、試合に出ないと何も始まらない」。チームが優勝するまでの向こう約1週間で、ファーストジャージィをつかむつもりだ。

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