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必勝の入替戦でダイナボアーズでの初トライ。小泉怜史、衝撃のデビュー戦から階段昇る

2023.05.10

柴田凌光(左)のトライを喜ぶ小泉怜史(右)。ラストパスを送った。(撮影/イワモトアキト)



 勝たなければならない試合で14番を任された。

 今季途中、アーリーエントリーで登録された22歳、小泉怜史(さとし)の起用理由について、三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチは「そのポジションに必要なものを持っている」と話した。

「フットワークがいい。ステップも切れる。スピードもある。(緊張感ある試合で)いろいろ経験できたと思います。それが来季にも生きるでしょう」

 早大から加入した小泉が、5月6日にパロマ瑞穂ラグビー場でおこなわれたリーグワンのD1-D2入替戦に先発し、80分ピッチに立ち続けた。

 D1の10位だったチームは、D2の3位だった豊田自動織機シャトルズ愛知に59-21。先勝し、 D1残留に前進した。

 後半26分にはインゴール右隅に飛び込んだ。ダイナボアーズに加わって奪った初めてのトライだった。
 40分には、途中出場でトライを決めた柴田凌光へラストパスを送った。

 レギュラーシーズンの終盤、15節の東芝ブレイブルーパス東京戦、16節のリコーブラックラムズ東京戦に続いての出場。
 本人は、「その2試合での、自分のプレーが認められた結果と思っています」と話す。

 178センチ、87キロ。早大4年時はFBで関東大学対抗戦、大学選手権の全試合に出場した。
 今年1月にアーリーエントリー選手として登録され、第5節の試合から出場可能となっていた。

 この日は、「難しいことは考えずアグレッシブにプレーしようと考えていた」という。
「自分から主体的に動くことを求められている」と理解してピッチに立ち、役割を遂行した。

「チャンスにスコアできてよかった」とファーストトライを振り返る。
「それまでもボールを要求していたのですが、なかなか持てませんでした」
 積極性を貫き続けた末に得た結果だった。

 トライをアシストしたシーンについては、「外にスペースがあると分かっていました。ラストパスをしっかり放れたら、トライを取ってくれると信頼していました」。
 状況を見て判断し、正確にプレーした。

 大学選手権決勝が1月8日。リーグワンへのデビュー戦は4月14日だった。
 実戦から3か月のブランクがある中で、いきなりブレイブルーパスと対峙した。
「(大学との)コンタクトレベルの違いに驚きました」

「準備はしていましたが、想像を超えるレベルでした。パワーもスピードも。体にかかる負荷がまったく違いました」
 世界のレベルに近い選手たちとの対戦は衝撃的だった。

 たとえば元オールブラックスのブレイブルーパスCTB、セタ・タマニバルにハンドオフ。
「いままでに経験したことがない強さでした」
 ブラックラムズFB、アイザック・ルーカスのステップのキレにも驚いた。

「あのレベルに対応していかないといけない、とあらためて分かりました。大学のときと同じ感覚でディフェンスしていてはダメ。もっと間合いを詰めないと。経験を重ねる必要もあります」

 戦いを終えた後に残る体へのダメージも、学生時代とは大違いだ。
 ブレイブルーパス戦は久しぶりの実戦ということもあったが、2、3日あちこちが痛く、満足に動けなかった。

 しかし対応力と慣れで高い強度の中でも自分らしさを出せるようになってきた。
「外勝負の感覚と左足のキック、ハイパントキャッチは、自分の強みだと思っています。そこをさらに伸ばしつつ、ディフェンス力も強くしていきたい」

 社員選手だ。同期入社の仲間たちは4月に入って研修を受け、仕事も始めているだろう。
 しかし自身は、ラグビーに専念できる環境を作ってもらっている。感謝の気持ちをプレーで伝えたいところだ。

 入替戦をもう1試合戦ってシーズンを終えれば、フルタイムでのサラリーマン生活が待っている。「少しこわいですね」と苦笑する。
 5月14日(日)、海老名運動公園陸上競技場。D1残留を決定づける活躍ができたなら、拍手で職場に迎えられるかもしれない。

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