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【ラグビーを始めよう、続けよう】2023年春、東京学芸大&朝鮮大学校

2023.05.06

「アタック中心の練習」に取り組んでいる朝大。機能していた。(撮影/見明亨徳、以下同)

学芸大主将LO安達航洋。「春、国公立大会の優勝奪還」を掲げる



 東京・府中市で最高気温26度後半を記録した5月5日。
 JR中央線の北側にある小平市の朝鮮大学校グラウンドで、東京学芸大と朝鮮大学校の合同練習がおこなわれた。
 午前10時から人工芝の照り返しを受ける中で、今月に入り2度目の開催。両校とも部員不足の状況にある。

 9時半すぎから、両校が分かれてウォーミングアップをおこなっていた。10時になると、15人制のタッチラグビーが始まった。

 お互いに知り尽くしている面もある。タックルなど激しいコンタクト局面こそないが、ブレイクダウンに持ち込むまでの段階でも熱を感じる。
 攻守を都度入れ替えての練習では、「春はアタックを中心に取り組んでいる」という朝大がトライ数で上回った。

 1時間のタッチラグビーのあと、フォワードはスクラム、ラインアウトと、自チームだけでは練習できないセットピースを中心に取り組んだ。
 バックスもラインアアタック、ディフェンスを繰り返した。

 練習後、学芸大の今季のスキッパーを務めるLO安達航洋(4年、桐蔭学園)は、「うちのミスでトライを取り切れなかった。ゴール前で焦っていた」と仲間に呼びかけた。

 学芸大は今年1月の第73回全国地区対抗大会に出場し、3年ぶり4回目の頂点に輝いた。安達主将は桐蔭学園時代に、全国高校大会(冬の花園)で全国制覇を知る。
 兄のLO拓海(大学院2年)、長距離キックで学芸大攻守の要ともいえるFB岡田喬一(4年、桐蔭学園)らも健在だ。

 春シーズンは、都内に拠点を置く国公立大学大会での優勝奪還を目標に定めている。全国地区対抗大会連覇は、その先にある。
 昨年の国公立大会では東京都立大に17-19と敗れた。それだけに主将の思いは強い。
「メンバーは昨年と変わらないので戦い方は変わらない。人数が少ない分、グラウンドのオンとオフの切り替えを大切にしていく。チームビルディングも実施してまとまっていきたい」と話す。

 学芸大の現在の部員数はマネージャーも入り21名だ。今春は1年生の選手2、マネージャー1人が加わったが、「15人制を組むには十分ではない」(主将)。
 FB岡田の長いキックで敵陣に入り、ブレイクダウンでボールを奪う戦いをさらに磨いていく。

 1年生選手2人は、秋田と愛知の出身だ。
 オール秋田にも選ばれた経験があるのはSO佐々木幹太(秋田中央)だ。「岡田と並んでキックが良い」(安達主将)。
 高校時代は秋田工に花園への道は閉ざされていた。「オール秋田ではFB。学芸は学生が主体でラグビーに取り組んでいる。人数は少ないので基本的な部分を中心に練習しています」。
 バックスの要を担う。まずは大学ラグビー環境に慣れて春の試合に臨む。

 LO酒井晃志(愛知・三好)はラグビーマンの父のDNAを受け継ぐ。父親・聡さん(43歳)は花園高からトップウェストAリーグの豊田自動織機へ。HOとしてトップリーグ元年の2003年度までプレーした。
 酒井は、中学1年から知多半島で活動する「武豊(たけとよ)ラグビースクール」で楕円球に触れてきた。「学芸は先輩たちも優しい。いい雰囲気です。試合に出て目標達成に貢献する」と力強い。

学芸大1年生。SO佐々木幹太、MG村澤真彩、LO酒井晃志(写真右から)

 一方の朝大は、系列の大阪朝鮮、東京朝鮮、愛知朝鮮高からラグビー経験者が入部する。
 今年は大阪3、愛知1の4名が入部した。

 春はアタック中心に取り組んできた。その成果がこの日も出た。
 ボールをつなぎ、フォワードがタテへ前進。バックスは外へボールを運び、学芸ディフェンスの隙間を見つけてトライラインを越えていった。

 関東大学リーグ戦2部が主戦場だ。昨年は「2部で3勝」を目標に置いたが、結果は1勝7敗。3部との入替戦で東京農大に31-17と勝利して残留を決めた。
 入替戦のラスト10分は、ケガもあって13名で戦った。

 今季も現在の部員数は選手18名。しかし主将の李昇進(り・すんじん)は話す。
「1部昇格が目標です。チームとして意識して、(昇格に必要なことを)遂行しています」

 2部上位チームとの差はフィジカルと気付いている。
 今年からフィジカルコーチの指導を受け、身体能力アップに取り組んでいる。ウエート練習も「去年までは各自に任せていたが週3回各2時間実施しています」。

 メンバーが昨年と大きく変わらない点は学芸大と同じだ。
 一方で「去年と同じ決まったシステムに新しいものを取り入れている。さらにボールキャリアーがその場で考えていることを大事にして、流動的なラグビーを作っていきたい」と言う。
 李主将自身、本職のFLからWTBでもプレーする。

1年生の金唯禎もコミュニケーションをとる

 この日もメンバーに1年生が入り、新しいラグビーを実践していた。
 LOは、大阪朝高出身の夫善昶(ぷ・そんちゃん)と愛知朝高の李優大(り・うで)の2人が担った。
 夫は、2020年度主将で現在はトップイーストBリーグ日立Sun Nexusでラグビーを続ける善紀(そんぎ)の弟だ。
「中学2年の時に朝大でラグビーをやろうと決めました。人数は少ないけど切磋琢磨して続けていきたい。朝大は年齢、学年に関係なく話せる雰囲気がある」
 コンビを組む李は、少人数のクラブを体験している。愛知朝高で部員は3名。「試合は合同チームで出ていました」。
 朝大でも続けようと思ったのは2年上のSH金俊植(きむ・じゅんしく)の存在だ。

「先輩も合同チームで戦っていました。しかも合同には、同じ学年の選手もいませんでした。それでもラグビーを続けている。その姿を見てきた。朝大でも背中を追いたい」

 WTBで好ランニングを見せてトライに貢献していたのが大阪朝高の金唯禎(きむ・ゆじょん)。
「大学はフィジカルが違う、と感じています。高校で一緒だった先輩たちもレベルアップしている」

 金の従兄は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのWTB/FB金秀隆(きむ・すりゅん)だ。
 秀隆の弟で3年SO秀鎮(すじん)とともに1部を目指したい。

 ケガで休んでいるが、CTB李智寿(り・じす)も期待されている。
 兄は帝京大の大学王者奪回と連覇に貢献したSH李錦寿(4年、り・ぐんす)。朝大を選んだのは、「高校時代、全国の同胞から応援してもらいありがたかった」からだ。
「大学でもその中でやりたいと。兄からはどこへ行っても自分次第、と言われました」
 将来の目標は兄と同じ。「プロ(ラグビー選手)になる」。

 学芸大は今後、練習試合を経て6月11日、国公立大会決勝でのリベンジを誓う。
 朝大の15人制初戦は5月28日、明治学院大との春定期戦となる。

朝大の1年生たち。CTB李智寿、LO夫善昶、WTB金唯禎、LO李優大(写真右から)







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