思ったよりも早かったろう。
ルアン・ボタは4月22日、東京のスピアーズえどりくフィールドでクボタスピアーズ船橋・東京ベイの19番をつけスタンバイ。国内リーグワン1部の最終節で、交代出場を伺っていた。
お呼びがかかったのは、前半24分のことだ。同僚のデーヴィッド・ブルブリングがけがで退くのを受け、急遽、グラウンドに立った。
「まずは、ブルブリングの身体のことを思いました。そして自分が出たら自分のスタンダードを出さなきゃいけない」
持ち場を全うした。定位置のLOへ入るや、相手走者をつかみ上げるチョークタックルを連発。対する東京サントリーサンゴリアスの目指す、素早い展開を防ぎにかかった。
「選手によって、できること、できないことがあります。そんななか、どうチームに貢献できるかを考え、しました。これは、自分でチョークタックルがうまいと言いたいわけではありませんが」
身長205センチ、体重120キロ。その体格と強さを活かすシーンは攻撃でも見られる。
後半25分頃には、敵陣で防御の壁へクラッシュ。前に出る。
折しも、2人の味方に一時退出処分が出されていた。
処分が解かれて人数が揃うまで、スピアーズは球を保持したまま時間を使いたかった。パスの本数を減らし、ボタら大型選手が杭を打ち続ける。果たしてCTBのテアウパ シオネがトライを決めるなどし、それまで9点あったビハインドを縮める。22-24。
同30分以降には、またも敵陣ゴール前左に進んでチャンスを得る。再三、ラインアウトからモールを組み、その塊においてボタが役目を果たす。
ボール保持者をガードする役目を担ったり、自らが先頭でボールを持ったまま塊を推進させたり。34分には、モールの支柱だった自らがインゴールへなだれ込む。27-24。
ノーサイド。5月14日のプレーオフ準決勝(東京・秩父宮ラグビー場)でも戦うサンゴリアスを、39-24で下した。
自らのプレーについて聞かれれば、自らがいるチームの仕組みについて語る。
「隣同士の信頼があるから、ディフェンスができる。内側の選手も外側の選手も、一緒に上がってくれるという信頼があるから前に出られる。(突進を重ねられるのも)アタックのシステムを信頼しているだけ」
加入5シーズン目の今季は一時、けがに泣くも、シーズン終盤に持ち味を発揮。その間、感じたのがスピアーズのチーム力だ。
自身が欠場している間は、同じポジションで青木祐樹らレギュラー入りを目指す日本人選手が奮闘。ボタは戦列復帰後、こう口にした。
「グラウンド内では競争がある。先発も与えられたものではなく、競争で勝ち得たものです」
ただし、その空気は殺伐としていない。走り込みの最中、日本人選手が南アフリカで使われる言語、アフリカーンスで冗談を言うことがあるようだ。ボタは南アフリカ出身だ。
「オンフィールド、オフフィールドともに楽しめる仲間とともに試合に出られ、喜びを感じます」
シーズンは残すところあと2試合。今季限りで退団するコーチや選手のことを思い、ベストを尽くしたい。ボタは来季以降もスピアーズでプレーしたいとし、笑顔を浮かべた。
「いつも思うのは、自分がリタイアする際、『彼が一番、タフな仕事をしてくれた』と言われるようなレガシーを残したいということ。また、ユーモアのある人にもなりたいです」