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笑顔で通訳に「イイね」。スピアーズでは今季ラスト。クロッティの献身。

2023.04.22

リーグ最終節では13番をつけるライアン・クロッティ(写真提供:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)


 惜別の240分を見据え、しみじみと語る。

 ニュージーランド代表48キャップ(代表戦出場数)の好漢、ライアン・クロッティは、2019年に加わったクボタスピアーズ船橋・東京ベイを今季限りで離れる。

 チームは現在、国内リーグワン1部に参戦中だ。クロッティがスピアーズの一員としてプレーできるのは、4月22日のレギュラーシーズン最終節、5月中旬のプレーオフ2試合(準決勝、決勝もしくは3位決定戦)の計3試合となる。

 これらすべてでフル出場が叶ったとしても、スピアーズのクロッティがプレーするのはロスタイムを除けば残り240分のみだ。

 退団発表から一夜明けた20日、チーム主催のオンライン会見へ出る。

 東京サントリーサンゴリアスとのリーグ最終節で、けがからの復帰を果たすためだ。時に笑みを浮かべ、時に真剣な顔つきで話す。

「スペシャルな感情はあります。スピアーズもスペシャルなチーム。いいチーム文化があり、選手の仲もいい。残された時間をエンジョイしたいです。次の動きについては、わかっていません。(他クラブでの)現役続行、もしくはコーチの話もいただいています。バイウィーク(レギュラーシーズンとプレーオフの間の休息週)に帰国し、家族と話し合って決めたいです」

 身長181センチ、体重94キロの34歳。身体衝突の多いCTBの位置にあって、パワーやスピードのみに頼らぬ働きで光る。

 相手防御を引き寄せながらのピンポイントのパス、周りと連携を取りながらの守りといった強みを発揮する。さらにグラウンド外では、コミュニケーターとしてもリスペクトされる。

 入部2年目の根塚洸雅は、昨季のある試合で防御のミスからトライを献上。対面の選手のパスをするそぶりに引っかかり、そのまま走り去られた。

 するとその2日後、クロッティが担当コーチを交えてミーティングを開いてくれた。

 ここで根塚は、周りの選手との連携やポジショニングについて改善策を授かった。タッチライン際のWTBとして攻撃でも光ったことで、リーグワンの初代新人賞に輝いた。

 2016年に就任したフラン・ルディケ ヘッドコーチは、クロッティの貢献についてこう証言する。

「彼はチームのディフェンスシステムもアタックシェイプも変えてくれた。また興味深い性格で、日本人選手と仲がいい。いつでも相談に乗ってくれる選手で、答えを常に持っている。オン、オフを問わず影響力は大きいです」

円陣でクロッティと肩を組むフラン・ルディケHC(写真提供:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

 ボスに指摘される人懐っこさを、クロッティは今回の会見でも覗かせた。通訳が自身の談話を丁寧な言い回しで伝えるたび、微笑みかけて労をねぎらっていた。

「イイね! イイ!」

 スピアーズが4強入りするのは、旧トップリーグ時代から通算して3季連続となる。

 クロッティ、南アフリカ代表HOのマルコム・マークス、オーストラリア代表としての経験が豊富なSOのバーナード・フォーリーといった、同じタイミングで入団した国際的選手がけん引したのではないか。

 そう評されがちななか、当のクロッティは謙虚である。

「私たちが入団したのは、ラッキーなタイミングでした。その時までにスタッフや以前いた外国人選手が土台を作ってくれていたのです。そこへ僕たちが国際レベルのディテールを導入した感じです」

 戦術、技術を問う以前の「土台」について、こう補足する。

「(ラグビーでは)どれだけチームにつながりを持ってやれるかという感情的な部分が左右します。いいチーム、勝てるチームには、友情があります。スピアーズが強みとしているのもそういう点です。例えば一緒にコーヒーを飲みに出かける、ビールを飲みに行くといったつながり。その部分が、ラグビーの技術とともにレベルアップしてきました」

 クロッティが務めるCTBの位置では、いずれも24歳のリカス・プレトリアス、ハラトア・ヴァイレアが台頭している。

 これから優勝争いが本格化するなか、新進気鋭の若者、経験豊富なベテランのどちらがゲームに出るか。

 相次ぐふくらはぎのけがを乗り越えた通称「クロッツ」の起用法について、指揮官のルディケは慎重に述べる。

「彼への信頼はありますし、彼に能力があるのは確実です。彼がいかに違いを生めるか、次のサンゴリアス戦で見て、(クロッティをプレーオフで起用するか否かを)判断したいです」

 ちなみに来季以降、クロッティに代わる大物の補強はあるのか。

 ルディケは「所定のプロセスに基づいて答えたい。いまはすべてを共有しきることはできません。もちろん候補者はいますが」と話すにとどめる。

 まずは、いまいるチームマンに力を発揮してもらうよう促す。

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