もどかしいですか。そう問われ、「はい。もどかしいですね」と苦笑した。
東京サントリーサンゴリアスの堀越康介は、今季から齋藤直人と共同主将を務める。ところが第3節以降、戦列を離れることとなった。
けがが癒えるまでの間、仲間が練習するのを眺めながらこう話した。
「急ピッチで、(負傷箇所を)治している感じです。グラウンドには立てていないですが、それ以外のところでは他のリーダーと関わりを持てています。外から見えていることを伝えたり、復帰した時に出遅れがないように意思統一の部分を(意識)したりしています」
大切な年を過ごす。
チームが前年12月中旬から参戦する国内リーグワン1部は5月までに終わり、日本代表に選ばれうる戦士は9月からのワールドカップを見据える。
今回、フランスでおこなわれる4年に一度の大舞台へ、堀越は出場したいと願う。
2019年の日本大会時は最終選考合宿で日本代表から漏れたものの、昨秋までの代表ツアーへは継続的にメンバーに絡んできた。
主将でワイルドナイツ所属の坂手淳史らとHOの定位置を争うにあたり、リーグワンで存在感を示したいところだったか。
日本代表入りへの思いを聞かれた堀越は、ひとまず「(代表のことは)あまり、意識しないです。とりあえず、サンゴリアスで(復帰したい)という感じです」。もっともその真意からは、かえってワールドカップへの情熱がにじむ。
「まず、このクラブでしっかり自分自身を成長させないと、代表へ行ってもあまり意味がないと感じています。だから早くプレーしたいな、という感じです。…まぁ、(代表について)考えないと言いながらも、頭の片隅には、今年、ワールドカップがあり、出たい気持ちがある。ただ、それ(目標値)と自分のプレーとのギャップがある」
ワールドカップに出たいからこそ、まずはワールドカップに自信を持って出られる選手になりたい。そのために必須なのが、「このクラブでしっかり成長」することだと捉える。
さかのぼって昨秋。国内外を回って強豪国とぶつかる代表活動へ参加した。個人的に好調だと感じながら、満足のいく出場機会を得られなかった。だから堀越は、「成長」したいと繰り返す。
「もっと成長しないと、その舞台(フランス)には立てない。自分を客観視しながら、やっています。プレータイムを得られなかったのは悔しいですし、もっと成長したことをアピールしないと。いま、いい転機だと思います。チームで主将も任されましたし、(優勝という)明確な目標もある」
有言実行だ。
3月にフィールドへ戻ると、プレーオフ行きへまい進するクラブを背中で引っ張る。身体衝突で魅する。
身長175センチ、体重100キロの27歳は、相手の芯へ躊躇なくぶつかれるうえ、かつ、簡単に押し戻されないのが強みだ。
復帰後初先発を果たしたのは、花園近鉄ライナーズとの第12節だ。
会場の東京・秩父宮ラグビー場で64-12と勝利し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した。
試合中、やや高いタックルを食らいながらも前進するシーンがあった。
首から上へのタックルは危険とあり、イエローカードの対象となる。そのため堀越も、安全性の担保やルール順守の観点からまずは「レフリーにはチェックして欲しいと言っていました」と述懐する。
さらに付け加えた言葉に、この人の覚悟がにじむ。
「それが、ラグビーなので」
筋肉と骨を削り合う無慈悲な戦場を、真剣に楽しむ覚悟だ。
チームは徐々に白星を積み上げ、4月15日の第15節でプレーオフ行きを確定させた。雨天下の神奈川・日産スタジアムで、横浜キヤノンイーグルスを11-9で制した。堀越もゲーム主将として、後半16分まで献身した。
「僕らのハングリーさ、サンゴリアスらしさが出た試合だと思います」
レギュラーシーズン最終節は22日。東京・スピアーズえどりくフィールドで、初戦で敗れたクボタスピアーズ船橋・東京ベイへ挑む。
プレーオフでも対戦するこのクラブにはHOのマルコム・マークス、LOのヘル ウヴェら大型ランナーが並ぶ。
プレーできないつらさを乗り越えた堀越は、この日もゲーム主将として挑むことをやめない。
「必ずリベンジする。叩き潰していきたいです。以上です」