4月14日、イギリスの名門オックスフォード大学ラグビー部は兵庫県伊丹市にいた。
同チームの2nd XVにあたるグレイハウンズ(Greyhounds)が創部100周年を迎える今年、同じく創部100周年の京都大学ラグビー部を訪問するために来日した。
このツアー中に、初めて県立伊丹高校訪問が実現された。
両校の繋がりは故・奥克彦大使だ。
かつて伊丹高校ラグビー部のジャージーを纏った同氏は、のちに日本人として初めてオックスフォード大学ラグビー部の1st XVとしてプレーした。
その後は外交官として活躍したが、2003年イラクへ派遣中に凶弾に倒れた。
同氏を偲んで伊丹高校ラグビー部OB、オックスフォード大学ラグビー部OBらがタッグを組み準備を進め、遂にこの日の訪問が実現した。
当日グラウンドに到着したオックスフォード大学の面々を待っていたのは、伊丹高校の『最大級のおもてなし』。
ブラスバンド部の演奏に加え、各クラス代表の生徒らが手作りのグレイハウンズのジャージー色の旗を振りながら道を作って歓迎した。
グレイハウンズの学生らが校舎の側を通れば、校舎の窓から顔を覗かせる生徒からも大きな歓声があがった。
グラウンドでの式典後、グレイハウンズの各選手は各クラスルームに分かれて文化交流の時間を楽しんだ。
あるクラスでは、伊丹高校の生徒が自分の夢を語り、オックスフォード大学の学生らと英語でディスカッション。中には、「同校卒業生の奥克彦氏のように日本と世界を繋ぐ立派な外交官になりたい。」と真剣な表情で語った生徒の姿もあった。
その他にも190㌢近いオックスフォードの学生に勇ましく腕相撲や立ち相撲の勝負を持ちかけた生徒、筋肉に興味津々の生徒、英語の参考書にサインをもらう生徒など、貴重な交流を思い思いのやり方で楽しんでいた。
その後、グレイハウンズの選手は同校ラグビー部とともにグラウンドで汗を流した。
言語や国籍、世代も異なる両者が互いを理解しようと取り組む姿勢が印象的だった。
グレイハウンズの主将レオ・カリー選手は「ブラスバンドの演奏やチームカラーの旗を振って歓迎してくれる等、学校に到着してから驚きの連続でした。この機会のきっかけとなった奥克彦氏についてはもちろん部員全員が存じ上げています」と話した。
「オックスフォード大学ラグビー部のクラブハウスには今も写真が飾られています。今日は日本の高校生と交流する貴重な経験を得ることができ、感謝しています。」と一日を振り返った。
今回の日本ツアーの団長レジ・クラーク氏は「友人である奥克彦氏の母校を初めて訪問することができ、非常に嬉しく思います。伊丹高校の生徒の皆さんと交流する機会をいただき、学生たちにとって日本の社会に触れる素晴らしい機会となりました。」と表情を緩めて語った。
時間としては一日だけかもしれない。
しかし、一人の日本人とその友人らが繋いだ日英の絆は、楕円球と同じように確かに次世代に繋がった。