ラグビーリパブリック

マッケンジー、再び魅せた。熱戦の首位攻防戦はチーフスが逆転勝ち

2023.04.19

トライを奪ったチーフスSOダミアン・マッケンジーを仲間が祝福。(Getty Images)



 スーパーラグビー・パシフィックも中盤戦に差し掛かってきた。
 第7節終了時に首位だったハリケーンズと同2位のチーフスとの首位攻防戦が、4月15日、ウエリントンにあるスカイスタジアムでおこなわれ、後半に爆発したチーフスが33−17の逆転勝ちで全勝をキープし首位に返り咲いた。

◆エンターテイメント満載の前半戦

 試合は、序盤から両チームともスキルレベルの高さを見せて観客をうならせた。

 先制トライを奪ったのは、チーフスだった。
 相手ボールのラインアウトを奪い、BKに展開する。右隅でボールを貰ったFBショーン・スティーヴンソンが自陣から30メートルのビックゲインを見せた。

 サポートについたWTBエモニ・ナラワがボールを貰い、タックルを受けながらもインゴールに蹴り込む。そこに走り込んだのは、チーフスの13番ダニエル・ロナ。ジュリアン・サヴェアと競り合いに勝ってボールを抑えた。

 トライを挙げたロナは、ケガ人のバックアップ選手。先日のブルーズ戦に続き、大一番の試合で13番に抜擢されて結果を出している。

 しかし、ハリケーンズも負けてない。数分後、すかさず反撃に出た。
 12番ジョーディー・バレットのオフロードパスを貰った2番、アサフォ・アウムアがパワーを活かして大きくゲインした。

 そこから、FW、BKが一体となって繋ぐ。最後は6番のディヴァン・フランダーズが左隅にトライを奪った。
 あれだけ速いテンポの攻撃にフロントローも絡んでいた。ため息が出るほどの美しいスキル。まさにチームトライだった。

 その後もハリケーンズの優勢は変らない。前半、残り10分ほどの場面で、イエローのジャージーがまたも躍動した。
 リスタートのキックオフ。7番デュプレッシー・キリフィのタックルがルーク・ジェイコブソンに突き刺さる。すかさずハリケーンズがボールを奪う。再び速いテンポで攻め、最後は9番カム・ロイガードがインゴールになだれ込んだ。
 今季のハリケーンズンは、勢いにのったらやばいことになる。そう感じさせるプレーだった。
 前半は、勢いが勝ったハリケーンズが17−8とリードした。

◆チーフスが見事なカムバック。逆転に成功

 前半は反則が多くなり、リズムに乗り切れなかったチーフスは、後半に見事に修正した。
 まずは、反則を減らした。その結果継続できるようになり、テンポアップに成功。勢いが増してきた後半は3トライを奪う猛攻で逆転に成功した。
 前半は大人しかった10番ダミアン・マッケンジーのゲームコントロールが、後半はよみがえった。試合全体でゲームをコントロールできたのが勝因に繋がった。
 前半のビハインドでさえ、試合全体を見据えての事に思えなくもない。

 しかしハリケーンズにもチャンスは沢山あった。
 残り時間10分。ここでトライ取れば試合がもつれる場面だった。

 敵陣ゴール前で、何度かペナルティを得た。タップしてトライを狙う。それを数回連続で試みたが、トライが取れなかった。
 さらにはその直後、チーフスの選手にイエローカードが出て数的有利になった。それでも得点を重ねることができなかった。

 絶好のチャンスでラインアウトをキープできず、敵陣ゴール前のチャンスから自陣ゴール前まで戻された。その直後にマッケンジーのトライでダメを押された。
 前半も同じようにラインアウトのミスからチーフスに一気に挽回され、トライを奪われている。2度も同じミスを犯した。これでは勝てない。

 今年のチーフスは、ディフェンスで崩れない。先日のブルーズ戦もあれだけ攻められながらもゴールラインを簡単に超えさせなかった。
 この強いディフェンスがここまで負けなしのシーズンを送っている要因だろう。

◆代表セレクターに猛アピール

 この試合には、オールブラックスの指揮官イアン・フォスター ヘッドコーチ(以下、HC)らが視察に来ていた。ワールドカップの年だけにセレクションはより慎重だ。
 この日はオールブラックス入りが期待される、ハリケーンズのSHロイガード、チーフスのSHコーティス・ラティマ、SOマッケンジーの3選手が活躍した。

 ニュージーランド国内で話題となっているのがSHのセレクションだ。3枠中、アーロン・スミスは確実だ。残りの2枠は誰が入るだろう。
 いちばん旬のロイガード、それを追うラティマの名前も聞こえてくるようになった。両者は、スピードと強さの持ち味を活かしたプレーでこの試合でもトライを奪っている。
 経験がものをいうポジションだけに、両者揃ってスコッドに入ることはないだろう。
 しかし、どちらか一人は入る可能性は十分にある。

 そしてマッケンジーは、再び存在感を見せた。1トライ、2ゴール、3PGと18点を稼ぎ出した。
 先日のブルーズ戦に続いてゲームコントロールが抜群だった。試合を決めた49メートルのロングゴールも決めた。極めつけは、ディフェンスの僅かなギャップをすり抜けてのダメ押しトライ。
 近年のオールブラックスは、劣勢時に何もできない印象だ。マッケンジーは、それを解決してくれそうなプレーを見せてくれた。

 マッケンジーのオールブラックス復帰は、いよいよ確実となってきたか。
 フォスターHCの胸の内はいかに。


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