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ファーストジャージーの重み。ライザーズの魂。田畑凌(横浜E)、4季目のデビュー戦でトライ

2023.04.11

後半36分、トライを奪う。梶村は高校時代(報徳学園)の1学年先輩。(撮影/松本かおり)



 スタンドのノンメンバーから大きな声援が飛んだ。
 後半29分、背番号22がピッチに入ったときだった。

 観客が沸いた。
 後半36分、ラインアウトから走り、ゴールラインに迫ったNO8シオネ・ハラシリがタックルを受けた後にボールを浮かす。それを手に、インゴールに入った。

 横浜キヤノンイーグルスの田畑凌(たばた・りょう)には忘れられない日となった。

 2019年春に京都産業大学から入社、入団して5度目の春。4シーズン目にして初めて国内最高峰リーグに足跡を残した。
 これまで、ルーキーイヤーのトップリーグで、カップ戦に1試合出ただけだった(三菱重工相模原戦)。

 4月9日、柏の葉公園総合競技場でNECグリーンロケッツ東葛に45-19と完勝したこの日。
 チームは初めてのトップ4入り、プレーオフ進出を狙っている。勝ち点5を得る勝利に貢献した。

 出場のチャンスを掴んだのは、3月31日に実施された、豊田自動織機シャトルズ愛知との練習試合で好パフォーマンスを見せて評価を受けたからだ。

 そのシャトルズ戦、出場選手たちは燃えていた。
 久々の試合機会。イーグルスでは、控え選手たちで構成するチームを『ライザーズ』と呼ぶ。
 試合への準備の中で、Aチームの模擬対戦相手となる。圧力をかけてレベルアップに貢献する。

 イーグルスを代表して戦う選手たちを支えてきた男たちが、久しぶりに迎えた対外試合で燃えないはずがない。
 34-14とシャトルズに快勝した。田畑も活躍した。
「(沢木敬介)監督からは、情熱が伝わってきた、と言ってもらえました」

 デビュー戦でのプレーを振り返り、「15分でしたが、ライザーズで積み重ねてきたことを出せました」と話す。
 ピッチに入るときは緊張した。スタンドからの仲間たちの声が聞こえた。気持ちが高まった。
 SOの田村優は、「おめでとう。楽しんでいこう」と笑顔で招き入れてくれた。

 高いレベルの練習環境に日々身を置いている。その自信が、不安になりそうな自分を奮い立たせた。
 武器は、強さとハードワーク。すぐにタックルの機会がきた。バッキングに走る。トライシーンは、忠実なサポートから生まれた。

「短い時間でしたが、やりたいことをやれました。トライは、(ゴールラインまでの)1メートルが遠く感じました」
 試合後は仲間たちからあらためて祝福を受けた。
 両親にもいい報告ができる、と笑顔だった。

 入団からここまで、心が折れそうになったこともある。
 しかし、試合に出られなくてもチームのためにできることがある。そんなマインドを持てるようになって変わった。

 同じ立場の仲間たちの存在が大きかった。
 一人ひとりがチームのことを考える集団になったことと、イーグルス浮上の軌跡が一致する。

 日本代表でもある梶村祐介主将、南アフリカ代表のジェシー・クリエルが同じポジションにいることも、「毎日のように向き合っている最高の対戦相手」と言える自分がいる。
「力を伸ばすには、いちばんいい環境」
 チャレンジの積み重ねが、この日の結果を呼んだ。

 試合後の記者会見、沢木監督は田畑のパフォーマンスを「見ての通り、よくやっていた」と話した。
「ただ、きょうのようなプレーを継続して出すことが大事」
 それを受けて「本当にその通りだと思います」と言った。

「またメンバー外になっても、これまでと同じように、(Aチームに)プレッシャーをかけ続けます」

 競争の先にあるスポットライトが当たる場所。そこにある空気を初めて吸い込んで、あらたなエナジーが湧いた。
 正念場を迎えるチームにとって、決して小さくないパワーになる。


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