週はじめの練習後、29歳のフッカー(以下、HO)は黙々とスローイングを繰り返していた。
東京サンゴリアスの中村駿太は「最近精度が良くないので確認していました。リリースのポイント、指のかかり、おしだしのところを確認していました」と話した。
「めちゃくちゃ調子がいい」と好コンディションを伝える。
今季は全13試合に出場し、そのうち10試合に先発している。
開幕戦のスタメンに名前を連ねた後、第3節からは9戦連続でスターター。充実している。
フィジカルの充実が好調を支えている。
肩のケガでウエートトレーニングができない時期もありながら、10月まで体づくりに専念してベースを作った。体重を4キロ増やした。
好調さは周囲にも伝わる。
試合がおこなわれなかった先週末、日本代表のスクラム合宿に呼ばれた。
「慎さん(長谷川コーチ/スクラム担当)のやりたいスクラムを、あらためて認識できた」と話す。
9月開幕のワールドカップについては、「まずチーム(サンゴリアス)で2番をつけて試合に出ること。MAX(残り)5戦、しっかりプレーしたい」と話す。
2番を背負うことにこだわりを持っている。
共同キャプテンを務める堀越康介がコンディションを整えて完全復帰した。第12節の花園近鉄ライナーズ戦以降、4月7日のコベルコ神戸スティーラーズ戦まで、自分は3試合連続ベンチスタートとなった。
それが悔しい。
「ラグビー選手である以上W杯にも出たい」が、いま、エナジーとなっているのは、「若い番号をつけて長い時間プレーしたい」という欲求だ。
セットプレーを終えれば、フィールドを自由に動き回る。ボールキャリーも得意。自身も「HOらしいHOではない」と認めるが、高校時代(桐蔭学園)、大学時代(明大)とHO一筋。人一倍、そのポジションと2番に愛着がある。
2歳下の後輩でライバルの堀越とはジャパンのスクラム合宿でも一緒で、サンゴリアスでの時間と同様にスクラムで組み合った。
状態の良い自分の方が動ける自負がある。スキルにも自信がある。
サンゴリアス入団後すぐ、2016年度、2017年度と、チームは頂点に立った。
しかし、決勝で自分は16番を背負い、途中出場だった。特に2シーズン目、試合が終わっても心の底からは喜べなかった記憶がある。
2番を背負って頂点に立ちたい。その気持ちを常に胸に、ピッチに立っている。
「毎年、(プレーヤーとして)良くなっている」感覚を、得意のフィールドプレーとスキルで示したい。
昨年9月、プロ選手になった。ラグビーに割ける時間も増えた。
「特にオフの日にリフレッシュできる」と話す。
しかし、営業の仕事に就いていたこともあり、「取引先の人たちは、いまでも応援してくださっています」と恩は忘れない。「本当にありがたいことですね。先日も、後任の雲山(弘貴/FB)とご一緒させていただきました」と相好を崩す。
明大ラグビー部の先輩でもある父・紀夫さんが定年退職を迎えた。
自分がW杯に出場し、今秋、両親に記念のフランス旅行をプレゼントできたら最高だ。
そのためにも堀越とレベルの高い2番争いを続け、最前列でチームを引っ張る。