挑戦した結果を受け入れる。
3月25日から埼玉・熊谷ラグビー場でおこなわれる全国選抜大会にあって、國學院栃木は4強入りした。
日本代表経験者の田村優をはじめ、多くの名選手を輩出した北関東の雄だ。クラブとしても、着実に進歩を重ねている。開催地のグラウンド名にちなみ「花園」と呼ばれる冬の全国大会では、一昨季に初めて決勝に進んでいる。
今度の選抜大会では、準々決勝に駒を進めた時点で、1988年就任の吉岡肇監督がしみじみと言った。
「(現在の最上級生は)全国準優勝の時の1年生です。その時の試合に出ている選手はいませんが、その頃の経験が引き継がれていると感じました。(当時は)必死に皆がタックルするチームでした。去年、今年もチームも、それを踏襲してくれているのかなと。この大会では2季連続でベスト8です。昔はベスト8なんて『なってみたいなぁ』という感じだったけど、いまは『さぁ、勝負はここからだ』と。目標(設定)も含め、グレードアップしてくれた」
29日の準決勝では、桐蔭学園に7-51で屈した。神奈川の桐蔭学園には、冬の関東新人大会の決勝でも敗れていた。
リベンジを期して迎えたこの日は、前半こそ互角にぶつかり合うも得点機を逃した。0-19でハーフタイムを経ると、徐々に突き放された。
SHの小倉光希矢主将は言う。
「アタックを継続できなかったことが、敗因になったと思います。前半で少し点を取れていれば勝機はあったと思うのですが、取れなかったことで、少しずつ、チームの雰囲気が落ちてきてしまいました」
かような劣勢局面でも爪痕を残そうとした1人が、新3年生の小坂龍平だ。
身長185センチ、体重97キロで、ポジションはFW2列目のLOである。
空中戦のラインアウトでは相手の圧力で捕球しそこなうことこそあったが、ボールが回り出せば下働きに精を出した。
防御の分厚いエリアへの突進、守備時の接点へのプレッシャー…。
吉岡監督も太鼓判を押す。
「リアルLOですよ」
一般的に、愚直に身体を当てる選手は「リアルLO」と謳われる。
ボール保持者を軸に固まるモール、攻防の起点のスクラムでも、「コクトチ」の「リアルLO」である小坂は軸をなす。
本人はこうだ。
「ディフェンスとスクラムは毎年、毎年、こだわりを持っている。このふたつは負けられない」
姉の海歩が同部の女子チームで主将だったこと、男子チームが伝統的にスクラム、モールを鍛えていたことに惹かれ、「コクトチ」の門を叩いた。昨年には、17歳以下の優秀な選手からなる「U17ユーストレセン」に名を連ねた。
1学年上で高校日本代表の伊藤龍之介、青柳潤之介が卒業したいま、「どうラグビーをしていくのか、しっかり考え直している感じがあります」。今年のチームでは、FWリーダーを任される。
「自分たちもFWで、強くならないといけない。ここからどんどん体重を増やしていきます。そんななかでも動けて、跳べる、機動力のあるLOになっていきたいです」
LOでコンビを組む長谷川心弘、CTBからコンバートしたNO8の山口匠人らとともに、「コクトチのFW」という名の看板を守る。