不完全燃焼の内容だったこれまでの戦いから一転、この日は持てる力を存分に発揮して走り回った。
近畿2位の常翔学園を相手に、7トライを挙げる猛攻で58-17の快勝。前年度の花園王者、東福岡が3月29日の全国選抜大会準決勝でベストパフォーマンスを披露し、31日の決勝にコマを進めた。
ゲームの流れを決めたのは立ち上がり15分間の猛攻だ。開始3分、ラインアウトモールを押し切ってHO田中京也が最初のトライをマークすると、10分にはターンオーバーからの切り返しで得たゴール前スクラムのチャンスでBKがあざやかにサインプレーを決め、WTB西浦岳優がインゴール中央へ。
16分にもFWで近場を崩してPR沢田海盛がねじ込み、21-0と大きく先行して主導権を握った。
常翔学園も前半28分から後半3分にかけてWTB山本啓太らが3連続トライを返し追い上げたが、東福岡はここからもう一段ギアを上げてふたたび攻勢に転じる。
後半8分、SO井上晴生が防御のギャップを判断よく突破してポスト左に飛び込むと、以後は相手にシンビンによる一時退場が出たこともあって狙い通りにゲームを支配。リザーブのフレッシュレッグも次々に投入して2トライ2ゴール2PGを加え、盤石のフィニッシュとなった。
ようやく本領を発揮しての勝利に、「いい準備をしたらいい結果が出るということを経験させたかった」と充実の表情を見せたのは藤田雄一郎監督だ。前日は準々決勝の國學院久我山戦のビデオを見ながら3時間ほどミーティングを行ったそうで、「昨日の今日で疲れも残る中、やることを遂行できた」と収穫を口にする。
昨季のレギュラーは全員が3年生で、新チームになってから正ポジションをつかんだメンバーばかりだが、試合を重ねるごとに飛躍的に進歩を遂げる選手たちに手応えを感じているのだろう。
一方でインゴールに入りながら緩慢なプレーでトライを逸した終盤のシーンについては、「コミュニケーションをしっかりとろうといっていたので。ミーティング通りではないと怒りました」と、厳しく戒めることも忘れなかった。
常翔学園は試合の入りの部分で後手を踏み、早い時間帯で突き放されてしまったことが、結果として完敗の要因となった。「相手のテンポに合わせて、僕たちがやりたいことをできなかった。全員が細かいところまでこだわっていた東福岡との差が出た試合でした」と振り返ったのは、キャプテンのNO8岩本有伸。
もっとも、ペースをつかんだ時間帯では続けてトライを取れたように、伝統のたたみかける迫力は今季も健在だ。こちらも試合経験を重ねるにつれて上昇していきそうな可能性を随所に感じさせた。