今季ここまで、全12戦中10試合に出場している(すべて先発)。
リーグワン元年の昨年はリーグ戦10戦+入替戦2戦に出た。トップリーグ最終年は7試合に出場。
この3年間、出場したすべての試合で4番を背負い続けている。
29戦で途中交代は5試合しかない。
NECグリーンロケッツ東葛のLO、山極大貴(やまぎわ・だいき)はタフな男だ。2020年の春にチームに加入してから、ほとんどの公式戦に出場してきた。
ただ、思うように勝利を手にできていない。グリーンロケッツの一員になって3シーズンで、まだ3勝しかできていない。
2月26日の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦(33-25)で勝った後、チームは3連敗とふたたび苦しい戦いを続けている。
198センチの長身は、三菱重工相模原ダイナボアーズ戦に勝利した後、「めっちゃ嬉しいです」と顔をくしゃくしゃにした。
試合終盤の相手ゴール前でのラインアウト。ジャンパーとしてクリーンキャッチし、モールの核に。そのまま押し切り、トライを奪ったプレーもあった。
そのプレーを振り返って「最高」と話すも、試合全体を見て、「もう少しやれたかな、と思います。ガツガツいくところが足りなかった」と自身のプレーを振り返った。
ダイナボアーズ戦の勝利はチームにとって今季2勝目。開幕の花園近鉄ライナーズ戦以来のものだった。
山極はラインアウトの中心人物のひとりだ。相手を分析し、取る場所、動きを決める。
フィールドプレーでも地道に働く。
倒れてもすぐに起きてポジショニングし、シェイプを形成。ボールキャリーやブレイクダウンを繰り返す。
大柄も、よく動けるようになってきた。
ダイナボアーズ戦で勝利をつかむまでのチームの足取りは良かった。
前節のトヨタヴェルブリッツ戦では終盤までリードを奪った。18-21と惜敗も、浮上のきっかけをつかんだ。
山極も「それまでは先に点を取られてからエナジーが上がる感じでしたが、試合への入りが良くなり、敵陣で戦うことを明確にできたことが良かった」と話した。
しかし、その後3連敗のチームは勢いを失っている。
第12節でコベルコ神戸スティーラーズに26-59と敗れた後、レメキ ロマノ ラヴァ主将は、「きょうは、どのエリアも負けていた」と話した。
奮起が求められるFWの中で、大型LOにかかる期待は大きい。
個人としては、自身の成長を感じている。
入団時に112キロだった体重は118-119キロに増えた。結果、相手の強いキャリーにも怯まなくなった。
「試合慣れもして、80分の中での(自分自身の)コントロールもできるようになってきました」と話す。
体作りも含めたコンディションの整え方は、周囲に学ぶことも多い。
特に参考になるのはLOの相棒、ウエールズ代表として50キャップを持つジェイク・ボールだ。
インターナショナルで活躍してきた男がケガの早期治療にサウナを利用していると聞けば、自分もオフに足を運ぶ。
食事、栄養にも気を配るようになった。
社員としてグリーンロケッツに加わるも、現在はプロ選手(2季目)。ラグビーに割ける時間が、より増えた。
以前は、会社のデスクに大きな体を折り曲げ、窮屈に座っていた。
しかし現役引退後の日々を思い浮かべると、同じようにやっていけるか自信を持てなかった。
ラグビーで勝負する覚悟をする。
「意識が変わりました。いつも崖っぷちの気持ちです」と常に全力だ。
以前から、「早くサクラのジャージーを着たい」と公言している。「日本代表にならないとプロになった意味がない」と話す。
代表経験のあるチームメートにジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチの連絡先を教えてもらい、「いつでも準備はできています」とLINEをすると、「見ていますよ。頑張ってください」と返信が届いた。
目指す場所への距離は、まだある。
本人は、「体の大きさを考えると、トップ選手との差はフィールドプレーなど、小さな所の差を確実に埋めていかないといけない、と考えています」と、成長の鍵を自己分析する。
「チームの成績がいいと見てもらえる機会も増えると思う」と、グリーンロケッツを勝利に導く気持ちも強い。
代表LOへの思いはふくらむ。グラウンドに立ち続け、いつか日本の指揮官を振り向かせる。