ラグビーリパブリック

王者が貫禄の逆転勝ち。前季決勝対決、ワイルドナイツがサンゴリアスの挑戦はね返す。トヨタVは花園Lに大勝

2023.03.11

埼玉WKのCTBダミアン・デアレンデに食らいつく東京SG・SOアーロン・クルーデン(撮影:松本かおり)

「特別な一戦だった」(埼玉WK ロビー・ディーンズ監督)

「悔しい、の一言」(東京SG 田中澄憲監督)

 勝者と敗者、頂点を狙う指揮官の思いは試合後、それぞれにシンプルに語られた。

 3月11日、東京・秩父宮で行われたリーグワン第11節の一戦で、昨季王者の埼玉パナソニックワイルドナイツが東京サントリーサンゴリアスを41-29で倒し、第1節からのリーグ戦連勝をまた一つ伸ばした。東京SGは前節でトヨタV戦に続く黒星で3敗目を喫した。

 東京SGのホストゲームは会場に1万9079人が詰めかける盛況。幼いファンの声援も飛ぶ中、最高のシチュエーションで行なわれた。

 開始早々から互いの意気込みが伝わるプレーの応酬となった。展開は、前週の敗戦から立ち上がろうと息巻く東京SGが2トライを重ね、互いに一時退場者を出しながらPGを与え合って、前半は埼玉WK 3-17 東京SG。

 後半は序盤に点を取り合って埼玉WK 10-24東京SGと、ホストチームが復調ぶりを見せる内容だったが、埼玉WKはここから連続4トライで一気に勝負を決めにいった(トライは13分、15分、20分、26分)。

 埼玉WKは後半33分にもPGを加え、41-24と点差を17に広げて勝負あり。東京SGが終了前に意地のトライを挙げたが、そのアタックが試合を通じて鮮やかだっただけに、試合をひっくり返した埼玉WKの底力が際立つ結果となった。

 ハイライトは埼玉WKの連続4トライだ。

 後半13分は、相手反則からラインアウト・モールをがっちりと押し込んでFLラクラン・ボーシェーがボールを押さえた。わずか2分後には、CTBディラン・ライリーが自陣ディフェンスからインターセプトでそのまま独走、同点に。さらに5分後は、敵陣22㍍内のアタックからSO松田力也が相手BKの後ろに絶妙の小パントを上げ、FBに入る山沢拓也がデッドボールライン際でこれを押さえて技ありトライ、逆転。残り15分をリード7点差で迎えた場面では、ループプレーを重ねて使う巧みなフィールディングで、最後はWTB長田智希が防御網を切って右中間へ。14点差として終盤に持ち込んだ。

 後半出場のHO堀江翔太は埼玉WKの後半の修正について「やるべきことを、一つひとつやる。逆転できるとかいう感覚ではなく、目の前のことをやるだけです」と、淡々。チームの基準の確かさが伺えた。

 敗れた東京SGは冒頭の田中監督の言葉通りに悔しい逆転負けとなった。しかし、頂点を目指すことが「基準」となっているこのチームにおいては、この連敗が貴重なプロセスとなる面もある。

「前週は場面、場面のマインドが保守的すぎた」(SOアーロン・クルーデン)

「60分間は良かったが、最後はガス欠」(FB松島幸太朗)

 と、この日は振り切って持ち味のアタックマインドを解放できた。それがディフェンス面の結束も生んでいる。自陣のピンチで重いタックルを放ち場内をどよめかせたFL下川甲嗣は、リーグ一のスピードを誇るアタックについて「この一週間やってきたことが出せたのが前半。それをいかに続けるか」(FL下川甲嗣)と振り返る。試合後の選手たちは、この試合に共通した「強み」への手応えを感じていた。

「シーズン終盤でパナソニックといい試合ができるよう、準備する」(SOクルーデン)。

 リーグワン プレーオフ決勝の5月20日までは、ふた月あまり。両チームはそこを見据えさらに成長を遂げる。この日の80分は熱戦の布石となるか。

トヨタV姫野和樹の前進を阻む花園Lディフェンス(撮影:平本芳臣)

 同じく11日、花園ラグビー場で行なわれた花園近鉄ライナーズとトヨタヴェルブリッツの対戦は、前節で東京SGを破って勢いに乗るトヨタVが62-24で大勝を納めた(前半28-10)。

 開幕以来連敗を止められずにいるライナーズ。前節は相模原DBを向こうに接戦を仕掛けて手応えをつかんだかに見えたが、この日の勝利にはつなげられず。セットプレー、特にラインアウトのミスが痛手となり、ペナルティも重なり流れを引き寄せられなかった。