国内タイトル2連覇中の埼玉パナソニックワイルドナイツにあって、2022年入部の新人が主力に絡む。
長田智希。出身の東海大仰星高(当時名称)、早大で主将を務めた23歳だ。今季の国内リーグワン1部では、第5節から5試合続けて出番を得た。そのうち先発は4度である。
インサイド、アウトサイドと両方のCTBでプレーできる。身長179センチ、体重90キロと決して大柄ではないが、クラブが目指す堅守速攻スタイルを妙技で支える。
球をもらう瞬間に走路を変えて迫るタックラーを置き去りにしたり、防御を引き寄せながら小さなスペースへパスを放ったり。攻める方向に複数名の選手が一気にわき上がる、「常に全員がオプションになるのを大事にする」という戦術を首尾よく運用する。
「どの試合でも、与えられた役割を整理し、全うする。決めたいサインプレーがあったら、それをやり切る。ここには自信を持っています。僕自身、目立ったプレーヤーではない。チームが何を必要としているのかを考え、応えていく。自分の強みを出してそれをチームの戦術にするというよりは、チームの戦術に対して自分がコミットしていく」
技巧派が苦労しがちな身体のぶつけ合いも、さほど苦にしていないような。もっとも本人は「徐々にいい感触をつかめていますが、まだまだ」。上位陣とのバトルでももっとボールを持って前進がしたいし、驚異的なタックルを放ちたい。
ワイルドナイツのCTBには、南アフリカ代表のダミアン・デアレンデ、日本代表のディラン・ライリーがいる。それぞれ身長、体重で長田を11センチ、15キロ、8センチ、12キロずつ上回る。
世界屈指とも言える激しい競争を強いられるなか、長田は、ライバルたちの無形の凄みを見る。2人に抜群の力や速さがあるのを前提に、身体能力とは異なるよさに刺激を受けている。
「デアレンデに関してはプレーに余裕がある。相手に接近した時、僕ならキャリーに行ってしまうなという場合でももうひとつオフロードパス、仕掛けながらのパスをするような、敵との間合いを取る余裕です。もちろん、強さがあるからこそそれが生まれるのだと思いますが。僕がデアレンデと横でプレーしていると、(デアレンデが複数人を引き寄せる分)自分の前にスペースが空く感じがします。ディランは、やはりディフェンスのレンジが広い。ずっと敵に対してスクエアで(正対して)対応している。ここは、学びたいです」
ワイルドナイツは今シーズンここまで無敗だ。
この先は現在2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ、昨季のプレーオフファイナルの相手で目下3位の東京サントリーサンゴリアスと連戦する。
上位陣との連戦で、ルーキーはどれだけ存在感を示すか。