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全敗チームで光るラン。ジョシュア・ノーラ[花園近鉄ライナーズ]

2023.03.01

BR東京戦では少し足首を痛めるシーンもあったが、好調を維持するWTBジョシュア・ノーラ(撮影:福地和男/©JRLO)

 昇格チームが苦しんでいる。
 昨季ディビジョン2を1位通過して5季ぶりに1部昇格を果たした、花園近鉄ライナーズは第9節を終えていまだ未勝利(勝ち点1)。最下位に沈む。

 直近のブラックラムズ東京戦では前半10-14と拮抗するも、後半に失点を重ね結果大差で敗れた(10-64)。総失点数495はリーグダントツ、加えてけが人も続出している。

 暗いトンネルをさまようチームにあって、個人成績で気を吐いているのがWTBのジョシュア・ノーラだ。

 17本のラインブレイク数はリーグ首位。ブラックラムズのネタニ・ヴァカヤリア、スピアーズの木田晴斗と並ぶ。

 ブラックラムズ戦でも、その圧倒的なスピードを持って2度の突破を見せた。
 はじめは前半16分。サインプレーが決まった。最後は味方のグラウンディングを相手にセーブされ、スコアには至らなかったがゴール前まで持っていった。
 試合終了間際には2本目のブレイク。自陣22㍍内から加速して一気に相手陣まで運んだ。

 自身のパフォーマンスについて、「アタックは問題なかった」と話すも、「1対1でのタックルをもっとやらないとダメです」と、ディフェンス面を反省する。

「ラインブレイクの数はトップを狙おう、という気持ちでやれています。そう思えるのは嬉しいですが、その反面、チームが勝てていないので(結果的に)喜ばしくない。いまはチームに集中し、勝利に貢献したいです」

 ラインブレイクの秘訣を聞けば、WTBらしい答えを返す。
「FWがしっかり働いてくれて、インサイドのBKがエッジにもスペースを作った状態でボールを回してくれる。僕はただ前向いて走っているだけです」

 好調の要因には、同僚のクウェイド・クーパーの存在を挙げた。昨季、ワラビーズに復帰したレジェンドは、ケガによる不在時(豪州でリハビリ中)でも仲間に好影響をもたらしたようだ。

「クウェイドがジムのメニューなどいろんなことを指導してくれて、その通りやれば成果が出る。疲れた時でも、どんな時でも、絶対的なパワーとスピードを追い求めました。そのためには、ウエートをしたくない日があったとしても、歯を食いしばってやり切る。そのマインドセットの切り替えも、クウェイドは教えてくれるのです」

 オーストラリアに生まれ育った26歳。幼少からプロラグビー選手になることを夢見た。いとこや友達と庭でラグビーをするのが日課だったという。
 その時のヒーローが、クーパーだった。

 チーム関係者が明かす。
「ジョシュ(愛称)はクウェイドの専属秘書のようにずっと一緒にいます。小さい時からSNSで『頑張れ!』とコメントを送るくらいのファンだったようです。チームメイトからはそのことをいつもいじられています」

 21歳で夢を掴んだ。スーパーラグビーに加盟するワラターズのU20のスコッドに選ばれたことで、ホンダヒートの関係者の目に留まった。
「ホンダでは2シーズンプレーして、一度はオーストラリアに戻りました。その時、近鉄がもう一度チャンスをくれたのです」

 2019年度に加入したライナーズでは、1年目から多くの出場機会を掴む。アジア枠で出場することができたのも大きかった。
 中東アジア、レバノンの血を引く。祖父母が17歳のときに、移民として豪州に越した。

 同国の代表活動に加わったこともある。テストマッチではなかったが、カザフスタンとの試合に一度だけ出場した。
「19歳のときだったと思います。それまで下部組織でしかラグビーをしたことがなかった中で、思わず機会がやってきた。挑戦してみようと思いました」

 日本にこそルーツはないが、「日本は大好きです」と表情を崩す。三重での暮らしも含めれば、日本に住み始めて6年近く経った。
「日本の人も、ライナーズのファンも、すべてが好きです。妻も子どももとても気に入っています。あと何か月かすれば、カテゴリAでプレーもできる(チームがリーグに確認中)。ずっと日本でプレーしたいと思っています」

 近い目標は、一貫性を持ってプレーすることだ。チームの課題でもあるディフェンスを克服し、強みのランを日本のファンにもっと披露したい。

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