故郷ダニーデンのビーチが好きだ。
ラグビーのニュージーランド代表として5キャップ(代表戦出場数)を持つジャクソン・ヘモポは、故障がなければ冬でもサーフィンを楽しむ。太陽が出ていれば、それほど寒さは感じないという。
フィールドでは身長195センチ、体重112キロの身体を酷使する29歳。落ち着いた口調で述べる。
「ラグビーはメンタルゲームです。選手にとっては、オフフィールドでリラックスできることも大事です」
三菱重工相模原ダイナボアーズへ入った2019年当初は、東京の八王子市周辺で新生活を始めていた。
こちらは本拠地へ通いやすかったが、自身の地元のように海の見える場所のほうがよかったようだ。
だからリーグワン2部に挑んでいた昨年1月頃、湘南地区へ引っ越した。
「練習場まで高速道路を使って40分くらいです。前の家に住んでいた時も下道で30分ほどかかっていましたから、それほど大きな違いではありません」
1部に昇格して臨む今季も、その暮らしを続ける。いまのクラブが課す猛練習と適度なリフレッシュの賜物か、12月中旬の開幕からハイパフォーマンスを保つ。
開幕4戦で3勝と躍進した序盤は、防御に活路を見出すクラブの象徴となった。自陣ゴール前で好守を連発。首脳陣がコンディション回復のために休養を求めてきた場合を除けば、不動のNO8と遇されてきた。
2月26日の第9節でも、長い腕を相手のボールに絡め続けた。14-14と同点で迎えた後半開始早々には、自陣ゴール前の接点で地面へ飛びつき攻守逆転を決めた。存在感を示した。
「味方がいいタックルをしたおかげです。それがなければ、ボールを奪うチャンスも生まれません」
しかし白星は逃した。今季1勝だったNECグリーンロケッツ東葛に終盤、逆転され、26-33で4連敗を喫した。
これで3勝1分5敗とし、12チーム中7位。中盤戦に入り、本格的に1部の厳しさを味わっている。
グリーンロケッツ戦後の会見で、SHの岩村昂太主将は「ひとりひとりが役割を遂行できなかった。それがプレーに現れたと思います」と悔やんだ。
「一番、大事なのは引きずらないこと。試合は続きます。もう一回、自分にベクトルを向けて、反省して、自分たちがひとつひとつ成長していくことが大事です」
グレン・ディレーニー新ヘッドコーチは「自分たちは昇格したチーム。毎週、学びが多いシーズンになるのはわかっていました」と落ち着いている。
この日は前半35分頃、敵陣ゴール前右でモールを組んで相手の反則を誘発。ところが次の局面であえてモールを選ばず、得点できなかったシーンがあった。指揮官は続ける。
「モールが優勢だったのだから、それをすべきだった。これが学びです。チームの歴史上、こんないい状況にいたことは過去にないのです。だから前向きに、楽しみながら、1部がどういうリーグで、どういうプレーをすべきかを学んでいきたいです」
枢軸たるヘモポも、苦境を前向きに乗り越えたいと話す。
「ここ数試合、苦労しています。シーズン序盤は80分間を通して集中できていましたが、最近は疲れがあるためか、メンタルの部分が変わってしまっています。もう一度、集中し続けるメンタリティを作り上げたいです。我々がいいプレーをできることは序盤、見せられています。(チームとして)1部レベルをあまり経験していないなかでも、自分たちが戦えると信じ続けられるようにしたい。相手を見すぎておろそかになっているかもしれない、自分たちのベーシックスキル—— ロータックル、ローキャリー ——を見直すのも大事です」
ここ1か月は、大事を取ってサーフボードには乗っていない。それでもチームを、再び上昇気流に乗せたい。