ラグビーリパブリック

ラン、左足キック、パス。進化する翼、木田晴斗[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ]

2023.02.26

176センチ、90キロ。関西大倉高校から立命館大を経て、スピアーズ入り。(撮影/松本かおり)



 日本代表首脳陣のチェックリストに、あらためて太字で書かれたかもしれない。

 クボタスピアーズ船橋・東京ベイのWTB、木田晴斗が東芝ブレイブルーパス東京戦で2トライを奪った。
 2月25日、江戸川区陸上競技場でおこなわれた同試合には、4179人のファンが訪れた。
 スタンドを沸かせるプレーを何度も見せた。

 1つめのトライは後半8分だった。
 SOバーナード・フォーリーのキックパスを相手WTBと競り合った。
 着地した両者の腕がボールにかかっていた。それをもぎ取り、インゴールに駆け込んだ。

 2つ目は後半19分だ。ブレイブルーパスの攻撃を寸断する。
 インターセプトから約60メートルを走り切った。

 ふたつのプレーを振り返る。
 最初のトライはアイコンタクトでキックパスを要求したものだ。
「相手もいましたが、(受ける時は)ボールしか見ていませんでした。自信はありました」

 2つめのトライの直前には防御でミスをしたので、「取り返そう」と思っていた。
 ただ、落ち着いていた。前に上がり切らず、相手にパスをさせておいてボールをかっさらった。

 前半12分には、逆サイドに走り込んでディフェンスを崩し、ラストパスを放るプレーも見せた。
 WTB根塚洸雅のトライを呼んだ。好判断だった。

「今シーズン、ここ何試合かで自分が成長できている」ように感じている。
 ボールを持って走るだけではなく、プレーの幅が広がっている。自分のサイドだけでなく、逆サイドにも積極的に走る。

 立命館大学からチームに加わったのはリーグワン2022のシーズン途中から。
 すぐにリーグ戦4試合、プレーオフ1試合に起用された。馬力のある走りへの評価は最初から高かった。

 今季の好調さの原因を本人は、足首に抱えていたケガの完治に加え、オフ中に受けた田邉淳アシスタントコーチの指導と話す。
 WTBに求められるいくつもの要素を教わった。

 田邉アシスタントコーチが話す。
「もともとランは良かった。しかし、それに他のスキルもプラスしないと、(リーグワンでは)大学で武器にしていたものも通用しない」とアドバイスをした。

「近代ラグビーでは、大きなWTBもいます。ハイボールキャッチに加え、パス、キックもできないと。(いろんな選択肢を持つと)もともと持っている強さを、どこで、どうやって発揮するか、もできるようになる」
 同コーチは、ボールを持っていない時の動きも良くなってきたと褒める。

 代表首脳から木田へ向けられる興味の声も田邉コーチに届く。
 ジャパンが世界を戦う上で必要なキックゲームに、木田の左足は好都合だ。
「本人にも、それは伝えました。(聞くと)もっと頑張るタイプなので」と笑う。

 今季はここまで7試合に出場し、11トライを奪っている。
 シーズンは長い。トップ選手になるには、コンディションの維持も求められる。

 東芝戦の終盤を振り返り、「ドッと疲れが出た」と言う。
 優勝を狙うチームへの貢献、ジャパンへのアピールを強くするには、この先のより一層の躍動は必須条件だ。

 幼少期は空手に打ち込んでいた。
 極真空手の世界ジュニア選手権で優勝したこともあるほどの実力だった(小4時)。体幹の強さは、当時築かれたものの土台があるからだろう。
 U20日本代表、ジュニア・ジャパンの経験もある。

「ルーキーなので、チームより自分のことにフォーカスしている」と話すも、「周囲とのコネクトを大事にしている」と、チームファーストの姿勢も示す。

「(スピアーズでは)試合に出ていないメンバーのことをブーストと呼びます。その選手たちからのプレッシャーも強い。競い合う環境も有り難いと感じています」

 ワールドカップ開幕まで約半年。すべてのことを進化する材料にして、赤白のジャージーを着たい。

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