ラグビーリパブリック

徹底してスクワット。ステッパー、濵副慧悟[クリタウォーターガッシュ昭島]

2023.02.23

九州電力キューデンヴォルテクス戦で走る濵副慧悟。(撮影/松本かおり)



 目のつけどころが独特だ。
「ジョネ・ナイカブラ選手のお尻、リスペクトしています」
 クリタウォーターガッシュ昭島の濵副慧悟(はまぞえ・けいご)が笑顔で話す。

 ディビジョンこそ違うけれど、東芝ブレイブルーパス東京で活躍するフィジアンは、同じWTB。
 NECグリーンロケッツ東葛のレメキロマノラヴァ同様、好ランナーとして、目標としているひとりだ。

 リーグワン2022ではシーズンを通して2勝(不戦勝1勝含む)しかできなかったウォーターガッシュは、今季すでに3勝を挙げている(リーグ第8節までに3勝4敗)。
 前年までより練習量が増えた。チームの地力と結束が高まった結果だ。

 その中で濵副は、チーム最多の4トライを挙げている(リーグ2位タイ)。
 また、個人スタッツに詳しいJスポーツのサイトを見れば、ラインブレイク、ディフェンス突破、ゲインメーターの各部門でトップに名前がある。

 昨季はケガもあり、試合出場は終盤戦の3試合だけだった。トライもゼロに終わった。
 今季はコンディションも整い、開幕から全7戦に出場。すべての試合で11番を任されているのは信頼されているからだろう。

「トライは意識していない」と話す。
 意識しているのは相手を抜くこと。ディフェンス突破、ゲインメーターにフォーカスした結果、トライに結びついていると話す。

「トライこそありませんでしたが、昨季も試合の中でゲインするシーンがありました。その積み重ねもあり、少しずつ信頼されてきていると感じています」
 今季の実績もあり、ボールが自分に集まることが増えた感覚がある。ボールを手にしたら、迷わず加速する。

 例えば第7節の九州電力キューデンヴォルテクス戦。試合には26-33と敗れるも、背番号11は見せ場を作った。
 前半9分過ぎだった。自陣22メートルライン付近、左タッチライン近くでパスを受けると、すれ違いざまにトイメンを抜く。
 あっという間にトップスピードにのり、ディフェンダー5人をかわして敵陣22メートル付近まで走った。

 ステップに自信を持つ。瞬間的な体重移動と大きな一歩目、そして急加速。それは強靭な下半身から生み出されるパワーに支えられている。
「さわってみてください」
 太ももに力を入れるとカチンコチン。お尻まわり、太ももが立派すぎて、スーツのズボンはすぐ破れる。ストレッチ素材のものを履いている。

 高校時代(法政二高)から励んできた筋力トレーニングの成果だ。徹底的にスクワットに取り組んできた。
 その数値250キロは、FWも含めてチームでいちばんだ。
 173センチ、85キロと、サイズ的に恵まれていない自分が勝負するにはどうしたらいいのか。そこを追求した結果、脚力強化と考えた。一歩の歩幅を大きくすることで、より抜けるようになる。

 拓大時代は具智元(神戸S)、シオネ・ラベマイ(浦安DR)と同期。個を伸ばすことに集中し、チームへのフィットが足りなかったと振り返る。
 社会人になって、その点が少しずつ改善されてきた。

「自分で声も出します。FWも周囲も、ボールを(自分に)託してくれるケースが増えたと感じています」
 入社5年目。積み重ねてきたものが花開きつつある。

 ヴォルテクス戦は、ともに社業にも100パーセントを注いでいる選手の多いチーム同士の戦いだった。「意識しました。負けていられない」と話した。
 自身は中野坂上のオフィスで働き、夜に昭島のグラウンドで汗を流す。

「限られた時間しか練習はできません。だから、すべての面を伸ばし切るのは難しいと思っています。どこかを極める。それが、僕の場合は抜く力、スクワットというわけです」
 トレーニングの比率を8対2と言う。
「スクワットが80パーセントで、ラグビーが20パーセント」

 どこかの領域で他を圧倒することが、ひいてはチームのためになると信じて鍛錬を続ける。
 このまま各種個人スタッツで上位にいられたら、トライも増えるだろう。
 チームに勝利を呼ぶ男になる。


Exit mobile version