努力は必ず誰かが見ている。
昨季の国内リーグワンで新人賞を獲った根塚洸雅は、そう信じて「頑張るだけです」。今季も所属するクボタスピアーズ船橋・東京ベイで激しい定位置争いに競り勝ち、開幕から7戦連続でWTBのスターターを務める。5トライを記録した。
「(周りの選手と)コミュニケーションを取って、どれだけ頑張るか。それ以上にアピールすることはないです。それで他の人が(レギュラーに)選ばれればもう1回、自分が選ばれるように頑張るだけ」
身長173センチ、体重82キロと小柄も、タッチライン際で存在感を示す。スペースを突っ切り、倒れたらすぐに起き上がる。
昨夏、日本代表に初選出された。今年2月上旬にあった同代表のミーティング合宿へは不参加となったが、その折は、構想に入った全ての候補選手が招集されたわけではない。セレクションが本格化するのは、5月までの国内シーズンが終わってからだろう。
「呼ばれなかったからどうこうではなく、愚直にやるしかない」と根塚。まず自分と向き合う。
かねて日本代表の首脳陣から求められてきた、防御力と空中戦での強さを磨きたい。
「そこをやればリーグワンでも活躍できるし、自ずとそういうところには近づくのかなと」
ここでの「そういうところ」とはもちろん、今秋のワールドカップ・フランス大会への出場を指す。
もっともいまは、12月中旬からのリーグ戦の最中だ。クラブの優勝へ突き進む。
旧トップリーグ時代から2季連続で4強入りのスピアーズは、シーズン初戦で昨季準優勝の東京サントリーサンゴリアスを下した。
幸先の良いスタートを切り、第7節までに6勝1分。サンゴリアスをはじめとした8つのクラブが第8節を消化した18日の時点で、12チーム中3位につく。
もっとも内容的には、消化不良の感も残す。過去2試合では序盤にリードを奪いながら、中盤以降のエラー、反則で相手に流れを渡すこともあった。
結果的には連勝しているが、根塚は自軍をこのように見る。
「そこまでネガティブに考えているわけではないですが…。序盤に点差を広げることができて、そこから、余裕なのか、油断なのか、『これで、できるだろう』というふうになり、ミスが多くなって、苦しめられることが多かった。練習でも、(動きが)うまくいった後に軽いプレーが出ることがたまにあります。課題をどれだけ早く克服できるかが、キーポイントになります。それができれば、もっと強く、簡単に負けないチームになれる」
休息週後の一発目にあたる19日のゲームは、本拠地の東京・江戸川区陸上競技場でおこなわれる。
対する三菱重工相模原ダイナボアーズは、昇格初年度ながら粘りの防御で勝率5割と奮闘する。
伏兵と対峙するスピアーズはまず、80分を通して自軍の長所たるフィジカリティ、展開力を表現することにフォーカスする。
テーマは「バック・トゥ・ザ・ベーシック」だと、根塚は言う。
「基本に戻ろう、です。いいスタートが切れるのは強みだと思うので、そこから油断することなく、手堅いプレーをしながら、クボタの強みを出していく。それがずっとできれば、無理せず、自分たちらしく勝てると思います」
すっかりリーグきっての有名選手になった。それでもアスリートとしての「軸」は変わらない。
「楽しむ。それは常に忘れたくないと、いまも思っています。自分が楽しんで、応援してもらえる人に楽しんでもらう」
試合が終わったら、チームカラーのオレンジ色の服を着たファンに喜んで帰ってもらいたい。