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26大会ぶりの千里馬と2連覇かけるハーキュリーズがファイナルへ~全国クラブラグビー大会

2023.02.06

千里馬クラブが北海道バーバリアンズを制し26大会ぶりに決勝へ(撮影:見明亨徳)


 第30回を迎えた「全国クラブラグビー大会」。2月5日、愛知県瑞穂ラグビー場で準決勝2試合がおこなわれた。
 第1試合では、1993年の第1回大会準優勝など2位2回、3位1回を誇る千里馬クラブ(決勝進出は1993年の第4回以来で26大会ぶり)と、第26回大会(2019年)の王者で5度目の全国制覇を狙う北海道バーバリアンズが対戦し、千里馬が前半17-0のリードをいかし23-20で制した。
 2試合目は昨年度の決勝戦の再戦となった。慶應大OBで創部したハーキュリーズが愛知教員クラブを相手に計7トライ、47-25で退けた。ハーキュリーズは愛知教育大OBらが作った愛知教員のリベンジを許さず、大会2連覇に王手をかけた。
 決勝戦は2月19日に熊谷ラグビー場(A)でおこなわれる。

 千里馬は、前半からバーバリアンズが誇る外国人選手たちにプレッシャーをかけ止め続けた。
 4分、バーバリアンズが千里馬陣で右ラインアウト。大きく外へ展開するも、千里馬の右WTB梶洋輔がからみ、ターンオーバーにつなげた。バーバリアンズは千里馬陣に入るもハンドリングミスも連発していた。
 10分にはバーバリアンズ陣、バーバリアンズボールスクラムを押して反則を得る。SO呉尚俊がPGを決めて先制した。
 19分にはゴール前5メートルで左ラインアウト。並ぶメンバーを越えてボールを投入し、FL李智栄へ。ゴールラインへ迫ると、ラックからLO中西建人が持ち出しインゴールへ運んだ。
 32分にはSH徳井清弥のランからパスを受けた監督でNO8韓裕樹が「みんながつないだボール。落とさないよう注意して」右中間へトライし、17-0とリードを広げた。

千里馬監督のNO8韓裕樹が大切にボールをインゴールへ運んだ(撮影:見明亨徳)

 後半はバーバリアンズの時間になる。2分、まずはCTB大嶋航平がPGで3点を返すと、8分にはラインアウト・モールでFLのJ・コベントリーがファイブポインターに。17-8とする。
 その後しのぎ、得点につなげたのは千里馬。前半と同じ形でスクラムを押し、PK獲得。SO呉がPGを決める。20-8とする。
 19分、バーバリアンズは千里馬ゴール前でPK。途中交代で入ったCTBのF・ティモがタップで自らインゴールへ。20-13とする。
 千里馬の韓監督は焦らない。「今シーズン、常にセーフティリードを保ち勝ててきた。逆転される心配はなかった」という。

後半36分、バーバリアンズWTB七戸勇気が3点差に迫るトライ(撮影:見明亨徳)

 33分、呉が3本目のPG成功で23-13へ。しかし、バーバリアンズは36分にティモのゲインからWTB七戸勇気が右中間へトライを奪うと、ティモがコンバージョンを決め23-20と迫った。
 残り3分間の攻防、千里馬は自陣ラインアウトの投入ミスで敵にボールを渡すも、「ミスは全員でカバー」(韓監督)し、ノーサイドを迎えた。
 「きょうは千里馬のプレッシャーに自分たちのラグビーができなかった。次は勝ちます」とバーバリアンズの和田昂樹主将。

ノーサイド。笑顔で称えあう千里馬クラブと北海道バーバリアンズ(撮影:見明亨徳)

 千里馬は第1回大会から13回連続で出場。第1回大会と第4回大会は準優勝だった。14回目の出場は第21回大会(2013年度)。1回戦でバーバリアンズに7-31で敗れた。バーバリアンズはこの大会で全国初制覇を遂げている。それ以来の出場。
 現在は大阪朝高OBに加え、トップリーグ経験の日本人選手も所属している。今シーズンからジャージーは母体・朝鮮高校のジャージー(エンジと白)を着用している。部員不足に悩む母校の応援の意味合いを持つ。
 千里馬の生き字引、金信男・元大阪朝鮮高監督は第1回大会、第4回大会で準優勝時にSHで出場していた。「実はバーバリアンズとは、全国クラブ大会が始まる前の年に日本ラグビー協会のテスト試合で千里馬が西日本代表、バーバリアンズが東日本代表として対戦しました。そのときは千里馬が勝ちました。『幻の日本一』に1回なっています」。次は在日系ラグビー部初の日本一を狙う。「韓は教え子ですが、僕ら先人の成績を越えると取り組んでいます」(金信男さん)。決勝当日、大阪はもちろんのこと全国から応援に集まるだろう。

ハーキュリーズHO松岡大介。前半3本目のトライはモールから(撮影:見明亨徳)

 準決勝第2試合。昨年度の決勝戦の再戦にハーキュリーズの林雅人代表は「去年と同じ、どちらが勝つかわからない試合になると話してきた」。前年は、愛知教員クラブから後半28分に逆転トライとゴールを奪い19-15で接戦を制し、2度目の優勝を遂げていたのだ。

 しかし今年は装いが違った。ハーキュリーズのグラウンドを広く使うラグビー、正確なセットプレーがいきた。
 4分に愛知教員がPGで先制するも、ハーキュリーズはリスタートから敵陣へ入る。キックをチャージして敵陣でのスクラムへつなげると、WTB柏木明が最初のファイブポインターになった。1トライ追加後の23分には、ラインアウトから押し込んでHO松岡大介もトライで続いた。前半で4トライ。愛知教員は主将のCTB山下昂が終了間際につないでトライを奪い、26-13で折り返した。

愛知教員クラブの主将CTB山下昂。豪快なランで仕留め、会場を沸かせた(撮影:見明亨徳)

 後半もハーキュリーズが先手を打つ。キックオフのボールのエリア取りから自陣で継続を始めると、2分10秒、後半から入ったばかりのLO大谷陸が右中間へノーホイッスルトライ。7分にも連続トライで40-13とほぼ試合を決めてしまった。
 地元、愛知教員の家族らが沸いたのは15分、自陣から継続、CTB山下が力強いランでディフェンスを破り、自身2トライ目、コンバージョン成功で40-20に。残り10分以降、愛知教員がハーキュリーズ陣で競ったが、47-25で終えた。

 愛知教員メンバーは「昨年、負けて勝つことを目標にしてきたが」と唇をかんだ。ハーキュリーズの林代表は「こんなに点差がつくとは」と驚きつつも「自分たちのラグビー、スクラムやプレーの一つ一つを丁寧に。ハンドリングもよかった」と選手を称えた。
 決勝戦は「千里馬は図抜けた選手はいないがチームでまとまっている。決勝までの2週間で新しいことはできない。自分たちのラグビーを準備していく。きょうと同じような戦い方になるのでは」と2連覇を見据えた。

ハーキュリーズと愛知教員クラブ。次回の両チームの再戦も楽しみだ(撮影:見明亨徳)
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