ラグビーリパブリック

日野レッドドルフィンズが活動を無期限停止。昨年秋に不祥事、報告遅れに厳しい声も。

2023.02.04

円陣を組む日野レッドドルフィンズ。ファンに悲しい思いをさせることになった(撮影:松本かおり)


 ジャパンラグビーリーグワンのディビジョン2に属する日野レッドドルフィンズが2月3日、活動の無期限停止を決定したと発表した。4日に予定されていた清水建設江東ブルーシャークス戦は中止となった。

 日野レッドドルフィンズは今シーズン開幕前の昨年秋、合宿をおこなっていた大分県別府市の飲食店でグラスや備品を壊すなどトラブルを起こしていたことが、今週、週刊誌で報じられていた。

「ご迷惑をおかけすることになりました皆様に深くおわびを申し上げます。明日、試合が予定されていた清水建設江東ブルーシャークス様、ならびにファンの皆様、ジャパンラグビーリーグワンに関わる皆様、日野レッドドルフィンズのファンの皆様、および関係者の皆様にも大変なご迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ございません」

 日野レッドドルフィンズは3日夕方に会見をおこない、志賀得一部長と田中勝利GM(ゼネラルマネージャー)が出席して謝罪。不祥事について、被害を受けた店側とあらためて確認したことを報告した。

「10月31日(合宿期間中の休養日前日)深夜に、先方様のお店に伺い、飲食をおこないました。その際、酒に酔い、服を脱ぐ、セクハラ行為をおこなう、酒・グラスなどお店の物品を破損する、他チームの名をかたる、という行為をおこないました。ラグビーというスポーツが遵守するインテグリティ(品位)の精神に反する断じて許されない行為であります」(志賀部長)

 当時、その場にいたレッドドルフィンズのメンバーは、通訳1人を含め24名だったという。そのうちの7名が不適切な行動をおこなっていた。

 週刊誌では、店側に最初300万円を支払い、追加で新たに300万円を請求されたと報じられていたが、志賀部長は、追加の請求はなかったと否定。「後日、先方様におわびをし、物品破損については第三者である業者様の見積もりに基づき支払いをさせていただきました」。支払った金額は明かさなかったが、その場にいた全員が負担したという。

 また、問題行動を起こして店員から所属チームを聞かれた際、「三菱重工相模原ダイナボアーズ」と噓をついたと報じられていたが、これについては、「入店後、飲食中に店員の方との会話のなかでの行為であり、その場ですぐに訂正をさせていただいております」と説明し、迷惑をかけたダイナボアーズへも謝罪したという。

 レッドドルフィンズは2020年にも、所属していた選手が違法薬物使用容疑で逮捕され、チームの活動自粛だけでなく、リーグ全体の試合が3節休止する事態に追いこまれた苦い経験があった(のちに、新型コロナウイルスの影響でリーグ不成立)。コンプライアンス(法令・規則遵守)やインテグリティなどの教育は徹底されたはずだったが、十分に浸透していなかったと言わざるを得ない。
 田中GMは、「そういった教育を定期的に実施しながら、チーム、選手一人ひとりの意識を高めるということも実際にはしてきましたが、不十分だったと思っています」と反省した。

 今回、別府での合宿終了後、東京に戻ってからチーム全員が集められ、起こした行為について、社会で言えば大変な大きな問題であること、ラグビー部の存続にかかわる問題であることが伝えられた。

2月3日、不祥事に関する会見をおこなった日野レッドドルフィンズの志賀得一部長(左)と田中勝利GM

 一方、問題発生から約3か月後の公表となったことで、レッドドルフィンズの対応の遅さも疑問視されている。リーグへ報告したのは1月28日で、もっと早いタイミングで報告をすべきだという厳しい意見をもらったと志賀部長は認めた。
 週刊誌に書かれなければ公表するつもりはなかったのか、と会見で質問され、「先方様と守秘義務をかわした関係もあった」と発表が遅れた理由を説明したが、「社内での共有が欠けていたと認識しています。あらためて、今回の報道を受けて、我々が起こした行為に関して非常に重く受け止め、今回しっかり皆様にご説明する機会をいただきながらおわびを申し上げたいと思いました」と語った。

 活動の無期限停止という結論に至ったプロセスは、「レッドドルフィンズと日野自動車のなかで、今回起こしてしまったことの重大さをあらためて話し合い、二度と不正を起こさないということで全社全員で立ち向かっている大きな課題に対して、あってはならない行為だという理解のもとで、活動の停止を決定しました」という。
 しかし、4日の試合中止決定はメンバー発表後となり、対応の遅さが追及されている。「昨日時点では、会社側とレッドドルフィンズ側で会話をするタイミングがなかった。今週の試合、あるいは今季の活動について、具体的に議論する場を設けていなかったということです」と志賀部長は認めており、チームのトップの責任は大きい。

 ジャパンラグビーリーグワンの東海林一専務理事は、「この度の事案は、大変遺憾であり、事態を重く受け止めております。リーグは今回の事案の報告を受けて以降、事実確認を進めており、日本ラグビーフットボール協会とも連携し、今後、ジャパンラグビーリーグワンのインテグリティ委員会にて対応を検討しております。ファンの皆さま、並びに関係者の皆さまに心よりおわび申し上げます」とコメント。

 日本ラグビーフットボール協会の岩渕健輔専務理事は、「このたびの日野レッドドルフィンズの活動停止に伴う試合中止に関して、ファンの皆さま、関係者の皆さまに多大なご心配とご迷惑お掛けしておりますことをリーグワン共々おわび申し上げます。日野レッドドルフィンズの報道内容については、当協会におきましても事実関係を確認中でありますが、事案発生日からリーグワンおよび当協会への報告までの遅延については遺憾であり、重く受け止めております。今後リーグワンとも連携し、必要な対応につきましては検討してまいります」とコメントしている。

 そして、ラグビー界やリーグワンへの影響をどう考えているか聞かれたレッドドルフィンズの田中GMは、「今回、我々の起こしてしまった不祥事については、当然ラグビー界もそうですが、スポーツ界全般含めて、こういったことがあるべきではないということで、大変重く受け止めております。しっかり反省をしたうえで、我々として、しっかり正しながら進めていきたいと考えております」と深刻な表情で語った。