ともに201センチのワーナー・ディアンズ、ジェイコブ・ピアスに、206センチのハリー・ホッキングスが挑みそうだ。
2月5日、東京・秩父宮ラグビー場でのリーグワン1部・第7節では、同じ地域の強豪による通称「府中ダービー」がある。
両軍ともベストメンバーを揃えるなら、ホストの東芝ブレイブルーパス東京はディアンズ、ピアスのツインタワーを並べるはずだ。
かたやビジターの東京サントリーサンゴリアスは、2人と同じLOのうち片方へホッキングスを立てるか。
いずれも現在12チーム中4位以内と好調を維持するなか、公式で「206センチ、118キロ」の24歳は「(ディアンズ、ピアスとの)対戦が楽しみ」と意気込む。
タッチライン際のラインアウトでは、向こうの圧力をかいくぐって自軍ボールを確保したうえで、相手の制空権を奪いたい。
「相手もいい対策を練ってくると思いますが、こちらもいい準備をしています。(相手ボールも)自分たちのチャンスにすると思い、プレッシャーをかけていきたいです」
空中戦のみならず、地上戦でも際立つ。
「個人的には課題がある。フィジカルの面は、毎週、高めていきたい」と謙虚に語りながら、グラウンドに立てばロータックル、防御時の接点への圧力で魅する。相手の球出しを遅らせる。
ブレイブルーパスもこのフィジカルバトルにこだわるとあり、対峙するホッキングスの働きはより注視されるだろう。
今度のカードで着目される点には、攻めのおもしろさも挙げられる。
ブレイブルーパスは個々の強靭さ、オフロードパスの技術を活かす。そのための布陣を作る。
相手が身体の大きなFWを並べがちな密集の周りに、身軽で素早いWTBの選手を走り込ませることもある。
ホッキングスはこうだ。
「相手はいろんなトリックプレーを仕掛けてくると思います。チームとして前を見て、連係を取りながら、まとまってディフェンスしたいです」
かたやサンゴリアスは、鍛えてきた運動量と判断力をフル活用する。
攻める方向に多くの人間が回り込み、それぞれが多角度的に攻防の境界線へ仕掛ける。数的優位を作り、テンポよくパスをつなぐ。
仕組み上、LOをはじめとしたFW陣は突進役に、援護役に、攻撃陣形のパーツ役にと多くのタスクが課される。体力が削られる。ホッキングスは「結構、疲れます!」と笑い、こうも言う。
「相手はもっと疲れる。そうなればいいなと思っています」
オーストラリアに生まれ育った。高校、20歳以下の年代別代表に入った実績を持ち、2018年からの3年間は国際リーグのスーパーラグビーに挑んだ。
その折に在籍したレッズには、サム・ケレビがいた。長らくオーストラリア代表に選ばれていて、2019年にサンゴリアスに加わっている。
ケレビから近況を聞くことで、ホッキングスは日本に興味を抱くようになった。
2020年、決断した。折しも、世界中がパンデミックの影響を受け、各地で選手の給与、契約が見直されていた。
サンゴリアスにサインした際、ホッキングスはちょうどレッズと契約を結んでいなかったという。
もっともこの人は、オーストラリアきっての有望株で知られていた。現地では、ホッキングスの海外挑戦に難色を示す勢力も皆無ではなかったかもしれない。
その仮説に通称「ホッコ」は肯定も否定もせず、アスリートの市場をこう俯瞰していた。
「どんなスポーツでも、そこにいいプレーヤーがいたら止めておきたい気持ちがあるのは致し方ない。それぞれのクラブが、それぞれのベストな結果を求めていければいいと考えています」
海を渡って久しいなか、列島のファンに期待されるのは日本代表入りだ。
国際統括団体のワールドラグビーは、選手がルーツを持たない地域で代表入りを目指せるよう各種ルールを定めている。
もし母国のオーストラリアで代表経験のないホッキングスが日本代表を目指すのなら、5年以上の継続居住が求められる。
「日本での、特にサンゴリアスでの生活を楽しんでいます。満足しています」と語る本人も、現行のルールを把握している。オフ時の帰国も、規定の範囲内としている。
「そのことについて最終判断には至っていませんが、検討の余地はあると思っています。(資格取得まで)あと2年間というところまで来ている(と認識している)。もう少し時間が経ってから、改めて真剣に考えるのかな、という段階です」
自身と同じタイミングでレッズを離れた同級生に、アイザック・ルーカスがいる。
目下、リコーブラックラムズ東京のSOとして躍動するルーカスとは、「いろんなことを話します」とホッキングス。「シーズンごとに、自分のいるクラブにとってベストなことをするのが第一。そして今後にどうするか、考えながら進めていきたいです」と続ける。
2年後の決断が注目される。ただし、長身の戦士がまず意識するのは直近の「府中ダービー」だ。タフに働きたい。