かつて所属していたチームの仲間や職場の上司が、応援に駆けつけていた。
それだけでナイスガイと分かる。
1月29日、三菱重工相模原ダイナボアーズのCTBフィシプナ・トゥイアキがリーグワンでのデビュー戦を戦った。
試合は東京サントリーサンゴリアスに13-51と完敗した。
しかし、トゥイアキは80分ピッチに立った。試合後、「(敗戦という)結果は残念。でも、いい経験ができた」と話した。
セブンズ日本代表の経験もあるハードワーカーは、昨年6月に加入し、今季がダイナボアーズでの初めてのシーズンとなる。
トンガ出身。日本航空石川高校、天理大学で学んだ(現在同大学4年のアントニオ・トゥイアキは弟)。
2018年度から2021年度シーズンまでの4季はセコムラガッツでプレーしていた。
今季開幕から6戦目でつかんだ12番のジャージーは、地道に準備を重ねてきた結果だ。
「ケガなどはなく、トレーニングを重ねてきました。その結果、競争の中で出場機会を得られました」と話す。
サンゴリアス戦の途中で左足を痛めたが最後まで戦い続けた。
「(痛めた箇所は)大丈夫です。次の試合へ、また準備します」
自身の強みを「アタック。フィジカルの強さでチームに貢献したいです」と理解している。
セコム時代は社員として働きながらプレーした。
朝の通勤はスーツを着て満員電車に揺られた。ラグビー部の寮があった西武線の新狭山駅から会社のある原宿まで、ドアtoドアで約90分。
サラリーマン生活を4年間続けた。
契約先のお客様情報を(日本語で)入力する仕事をしていた。
「皆さん真面目で、一生懸命に働いてオフィスは静か。サラリーマン生活はいい経験です」と当時を振り返る。
職場の同僚にも、チームの仲間にも愛され、居心地が良かった。
そんな場所を離れる決意をしたのは「高いレベルに挑戦したい、という気持ちからです」と言う。
安定した生活に別れを告げ、アスリートとして生きる道を選んだ。
「セコムの人たちには本当によくしてもらいました。ラグビーに集中したくなって決めました。その気持ちを伝えたら、『自分の好きな道を目指していいよ』と言ってもらえました」
感謝の気持ちは尽きない。
サンゴリアス戦への出場が決まり、お世話になった方々が応援に来ると連絡があった。
当日はラガッツの仲間たち10名ほどがスタジアムに足を運び、職場の元上司は名古屋から駆けつけてくれたという。
ラガッツ入団時にラグビー部副部長を務めていた山賀敦之さんも、応援に駆けつけた一人だ。
「プナは悩んだ末にプロ選手として移籍しました。最終日は泣きながら(仲間に)挨拶していました。チーム全員、快く送り出しました」
「私にとっては、息子みたいな存在です」と話す。
トゥイアキのサラリーマン時代のことを思い出す。
「セブンズ代表に入り遠征に行くと、帰ってきたときに、職場の方にお土産を渡していました」
職場を離れている間のサポートへの感謝の気持ちからだ。「企業スポーツ人の鏡です」と愛でる。
先日、本人と食事をする機会があったそうだ。
「会計しようとしたら、私がトイレに行った際にプナがこっそり支払っていました。『お世話になったので』と。感動しました」
山賀さんは、「ご馳走になり、ちょっと情けない自分もいましたが」と笑う。
「そういったことができる男です。準備、片付けも、いつも率先してやっていました。プナの活躍を心から願っています。ラガッツ全員同じ想いです」
多くの人たちが、ダイナボアーズでも愛される存在となり、活躍すると信じている。