2つのトライだけでも受賞は間違いなかった。
しかし、献身的なプレーでさらに輝いた。
責任感が伝わる一撃だった。
埼玉パナソニックワイルドナイツの竹山晃暉(WTB)が1月28日におこなわれた横浜キヤノンイーグルス戦でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
21-19と勝利した試合でのチームへの貢献度は高かった。
前半5分に先制トライを挙げた。
7-5と競っていた後半4分にもトライを奪ってリードを広げた。
両方とも、自ら蹴ったキックをチェイスしてインゴールにボールを置いたものだった。
ラストシーンで追いつき、勝ち越した劇的な試合展開。接戦の中での2トライだ。大きな価値があった。
しかし、竹山の評価は逆転を呼ぶプレーでさらに高まった。
後半35分に14-19と逆転された直後だった。リスタートのキックオフボールを猛追してタックル。
相手の反則を誘い、敵陣で戦うきっかけを作ったのだ。価値あるプレーだった。
SO松田力也が蹴り上げたボールを追った竹山は、それを受けたイーグルスのFB、SP・マレーの足に好タックル。一瞬にして倒した。
それに仲間が続いた。ブレイクダウンで圧倒し、反則を誘った。
そこから攻防は二転三転。すんなり逆転とはいかなかったけれど、敵陣に居座り続けたことが逆転勝利を呼んだ。
「行くしかないな」
本人は、そんな気持ちで集中してタックルに入ったという。
「これまで、ああいう形ではチームに貢献できていませんでした」と話し、思い描いていたプレーで勝利を呼んだことを喜ぶ。
今季が4シーズン目。中堅としての自覚と責任が感じられるプレーだった。
最近は自主練習の時間も、体を当てることにフォーカスしてきた。タックルやハイボールキャッチに時間を割いた。その成果が出た。
今季は同日のイーグルス戦を含め5試合に出場して4トライをマーク。前節のリコーブラックラムズ東京戦でもトライを決めた。
しかし、その試合は途中出場だったから、イーグルス戦では「最初から行こうと。前へ出ることしか考えていなかった」と気持ちが入っていた。
「ロビー(ディーンズ監督)さんの策略にやられたのかな」と言って続けた。
「自分でも今季のパフォーマンスには満足していませんでした。(ブラックラムズ戦で)リザーブスタートになって、自分のそれまでの練習への取り組み、試合への準備を見直しました。もっとできたな、と発見がありました」
競争の激しいクラブで成長を続けている。
「メンバー層が厚く、埋もれそうになることもありますが、負けずに自分を奮い立たせています」と話す。
「(これだけの高いレベルでの競争は)他のチームでは経験できないことです。各国代表経験者のいる中で、自分の存在感を出してプレーすることにこだわりたいと思っています」
トライだけでなく、ワークレートも高めて信頼を得たい。
キックを使っての2つのトライを、「ボールを縦回転にして、前に転ぶか、うしろに跳ねるかに限定した」と振り返る聡明さを持ちながら、「最後までチェイスしたからこそのトライ」とハードワークを厭わない。
「ラッキーな結果だったとは思いますが、(簡単ではない状況の中で)確実にトライに繋げられる選手がチームに求められる。(一度ボールを手放すプレーでも)フィニッシュに持っていくことにこだわりたいと思います」
オーストラリア代表のWTBとして活躍するマリカ・コロインベテは、身近にいるお手本。「ブレイクダウン周辺での動きや防御のポジショニングなど、学ぶことは多い」と話す。
キックを使ってのトライは、これまであまりなかったと言う。
それを接戦の中で使い、結果を出した。さらなる進化のきっかけとなるに違いない。
2022年はウルグアイ戦で日本代表キャップも獲得した。ワールドカップイヤーにさらに輝きを増したい。