世界で暴れる準備は進んでいる。
東京サントリーサンゴリアスのNO8テビタ・タタフが好調だ。
開幕からの5試合に全戦出場。そのうち4戦は80分ピッチに立った。
昨年は夏、秋と日本代表活動に参加。ボールを前に運ぶパワーとゴール前の決定力で、チームに欠かせぬ戦力と印象づけた。
9月に開幕するワールドカップへの出場を熱望している。
テーマを持ってシーズンを戦っている。
「80分間試合に出るための体を作りたい。レベルアップして、試合を通じて走り、タックルできるようになりたい」
サンゴリアスの勝利のためだ。
今季終了後にはボルドー(フランス/トップ14)移籍が決まっている。
世界のどこでも通用するパワーは持っている。動き続けられるようになれば無敵だ。
スピードと運動量を武器に戦う日本代表がNO8に求めるレベルは高い。
その力を蓄える日々を過ごす。
「(シーズン終了後の代表招集に)最初から入れるように結果を残したいですね」
今季のサンゴリアスは、これまで以上に走るスタイルを採り入れている。その中で、自分をより高める。
好調なシーズンを送っているのは、生活の安定も無縁ではないだろう。
昨年末から両親と妹を日本に招待。自宅で一緒に暮らす日々を送っている。
年初、時間を見つけて「観光やショッピングに出かけたい」と話していた。孝行息子である。
タタフは1996年1月2日、アメリカン領サモアの中心地、パンゴパンゴで生まれた。
トンガ出身の父・フォノカラフィさん、母・バエガさんは仕事のために住んでいた当地で出会い、結婚。子どもたちを授かった。
生まれてしばらくしてトンガに戻ったタタフ家は、ババウ島に暮らした。
テビタは2人の弟、7人の妹を持つ長男。少年時代から家族のためにラグビーで成功し、愛する人たちにラクをさせてあげたいと考えてきた。
その願いを叶えている。
両親を日本に招待したのは今回が初めてだ。
息子のプレーを生で見るのも、学生時代を含めて初。府中でのトレーニングの模様を家族が見学している姿もあった。
テビタの動きを見つめる両親、妹・セニティラさんの眼差しは優しい。
しかし、父のプレーに対するコメントは辛口だ。
NECグリーンロケッツ東葛戦を観戦した後、フォノカラフィさんは「もっと走れ。フィジカルも、もっと強く」と言ったそうだ。
父もラグビーをプレーしていた。元プロップに言われたくないなぁ、と息子は笑う。嬉しそうだった。
1月29日におこなわれる三菱重工相模原ダイナボアーズ戦にも8番で先発する。
相手は今季好調。ディフェンスは激しく、粘り強い。
その壁を、何度でも崩しに走る。