ラグビーリパブリック

家族の愛を受けて。孝行息子、テビタ・タタフ[東京サンゴリアス]

2023.01.28

ワールドクラスのペネトレーター。ここまで5試合で2トライ。ボールキャリー数、ディフェンス突破回数はリーグ上位。(撮影/松本かおり)



 世界で暴れる準備は進んでいる。
 東京サントリーサンゴリアスのNO8テビタ・タタフが好調だ。
 開幕からの5試合に全戦出場。そのうち4戦は80分ピッチに立った。

 昨年は夏、秋と日本代表活動に参加。ボールを前に運ぶパワーとゴール前の決定力で、チームに欠かせぬ戦力と印象づけた。
 9月に開幕するワールドカップへの出場を熱望している。

 テーマを持ってシーズンを戦っている。
「80分間試合に出るための体を作りたい。レベルアップして、試合を通じて走り、タックルできるようになりたい」

 サンゴリアスの勝利のためだ。
 今季終了後にはボルドー(フランス/トップ14)移籍が決まっている。
 世界のどこでも通用するパワーは持っている。動き続けられるようになれば無敵だ。

 スピードと運動量を武器に戦う日本代表がNO8に求めるレベルは高い。
 その力を蓄える日々を過ごす。
「(シーズン終了後の代表招集に)最初から入れるように結果を残したいですね」
 今季のサンゴリアスは、これまで以上に走るスタイルを採り入れている。その中で、自分をより高める。

 好調なシーズンを送っているのは、生活の安定も無縁ではないだろう。
 昨年末から両親と妹を日本に招待。自宅で一緒に暮らす日々を送っている。
 年初、時間を見つけて「観光やショッピングに出かけたい」と話していた。孝行息子である。

 タタフは1996年1月2日、アメリカン領サモアの中心地、パンゴパンゴで生まれた。
 トンガ出身の父・フォノカラフィさん、母・バエガさんは仕事のために住んでいた当地で出会い、結婚。子どもたちを授かった。

 生まれてしばらくしてトンガに戻ったタタフ家は、ババウ島に暮らした。
 テビタは2人の弟、7人の妹を持つ長男。少年時代から家族のためにラグビーで成功し、愛する人たちにラクをさせてあげたいと考えてきた。
 その願いを叶えている。

 両親を日本に招待したのは今回が初めてだ。
 息子のプレーを生で見るのも、学生時代を含めて初。府中でのトレーニングの模様を家族が見学している姿もあった。
 テビタの動きを見つめる両親、妹・セニティラさんの眼差しは優しい。

 しかし、父のプレーに対するコメントは辛口だ。
 NECグリーンロケッツ東葛戦を観戦した後、フォノカラフィさんは「もっと走れ。フィジカルも、もっと強く」と言ったそうだ。
 父もラグビーをプレーしていた。元プロップに言われたくないなぁ、と息子は笑う。嬉しそうだった。

 1月29日におこなわれる三菱重工相模原ダイナボアーズ戦にも8番で先発する。
 相手は今季好調。ディフェンスは激しく、粘り強い。
 その壁を、何度でも崩しに走る。


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