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誰のために戦っているのか。落合知之[三菱重工相模原ダイナボアーズ]、新天地で躍動

2023.01.26

自分の仕事に集中。その積み重ねがチームの勝利に結びつく。(撮影/松本かおり)



 トライはまだない。
 しかし、185センチのWTBがいい働きを見せている。

 三菱重工相模原ダイナボアーズの落合知之が好調だ。
 昨季までコベルコ神戸スティーラーズでプレーした28歳。新天地の水が合っている。

 開幕からの5戦で4試合に出場し、3戦はフル出場。キックチェイス、ディフェンス、そしてハイボールキャッチと、チームへの貢献度は高い。
 もちろん、力強いボールキャリー、外からの情報提供もある。

 1月22日におこなわれた静岡ブルーレヴズ戦(相模原・ギオンスタジアム)、ダイナボアーズは27-27と引き分けた。
 残り約10分で8点のビハインドを負っていたものの、培ってきたスタミナを使って追いつく。エキサイティングな試合で、今季の成績を3勝1敗1引き分け(5位)とした。

 激闘を終えて落合は、「タフな試合でした」と80分を振り返った。
「SHからのハイパントへのチェイスなども含め、先週の試合(東芝ブレイブルーパス東京戦)より自分の役割をやれました」
 試合途中に右足首を痛めるもフル出場を果たした。

 自身の好調さを「役割が明確になっていてやりやすい」と分析する。
 前戦のブレイブルーパス戦には23-19と勝った。落合も攻守によく体を張った。しかし、個人的には納得できなかったと話す。

「なので、コーチや周囲と話して改善しました」
 ディフェンス時のそれぞれのノミネートの詳細を詰めた。前への出方、追い込み方の確認も。
 ブルーレヴズ戦では、その成果が出た。

 新潟の北越高校でラグビーを始めた。流通経済大に進学し、神戸製鋼へ。トライアウトを経ての入団だった(スティーラーズへの在籍は2017年度から5シーズン)。
 名門クラブでは、たくさんの出場機会に恵まれたわけではない。しかし、レベルの高い選手たちに囲まれ、競争の中で成長した。
 そこで得たものを相模原の地で周囲に還元もしている。

 ダイナボアーズへの加入も、トライアウトを受けて決まった。
 練習試合でアピールした。そのパフォーマンスを見たチームスタッフとグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(以下、HC)は、ひたむきさ、姿勢を高く評価。「チームへ貢献してもらえる」と獲得を決定した。
「恩返しをしたい」と期待に応えている。

 試合ごとの勝敗に一喜一憂することはない。「自分の仕事をする」と話す。
「まず、求められる仕事をやり切る。その先にトライもある、と思っています」

 チームの充実が心地良い。
 競争。そして、ピッチに立つ者の、試合に出られない選手への思い。それらすべてが、チームのエナジーになっている。

 チャンスを求めて相模原にやって来た選手が多いのもダイナボアーズの特徴だ。向上心のある選手たちも大勢いる。
「ハングリー精神のある選手がたくさんいます。みんな優しくて、仲がいい」
 HCの手腕もあり、チームの一体感は高まっている。

 ディレーニーHCは、自分たちの活動を支える会社の歴史やいまを知って、それもチームのエナジーにする人だ。
 誰のために戦っているのか。
 その思いが自分たちを奮い立たせる。

 落合は、スティーラーズ時代にも同じ経験がある。
「神戸でも工場見学の経験があります。スティールワーカーの方々がどういう働き方をしているか知りました。それが力になった」

 相模原での工場見学の機会は、まだ巡って来ていない。その日を「楽しみ」に待つ。
 結束の輪が大きくなればなるほど、出せる力も大きくなることを知っている。


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