開始4分には先制トライを奪われた。
前半は13-14。
後半6分にPGで逆転するも、その3分後にはトライを許して逆転された。
残り11分で8点ビハインド。
それを27-27の引き分けに持ち込んだのだからスタジアムは沸いた。
1月22日、神奈川県相模原市のギオンスタジアムでおこなわれた三菱重工相模原ダイナボアーズ×静岡ブルーレヴズは、ホストチームが終盤に奮起して引き分けに持ち込んだ。
しかし試合のほとんどの時間、相手に主導権を握られる展開だった。
SH岩村昂太主将は、「相手は泥臭く、ハードで、フィジカルも強い。受けると食われてしまうと思っていました。実際、スクラムでもプレッシャーを受けてしまった」と反省する。
ただ、負けなかった。持ち味である粘りを見せた。
主将は、その点については仲間の強さを称えた。
「崩れず。自分たちの仕事に集中した」
これで今季は5節を終えて3勝1敗1引き分け。
ディビジョン1に昇格したばかりのチームが勝ち点15の5位と奮闘している。
試合の終盤に得点を重ねて追い付けたのは、どこよりも早く準備を始め、夏の暑いうちにスタミナをつけたからだ。
タッチフットの改良版、『ボールゲーム』を繰り返すことでフィットネスが高まった。
3分ほどボールを動かし続ける。そのために人も走り続ける。
足が攣る。嘔吐する者もいた。『ボールゲーム』という楽しそうな呼び名とはうらはらのハードトレーニングは、チームの土台を厚くした。
そして体力を伸ばすだけでなく、一人ひとりの個性を互いが理解する面でも役立った。
岩村主将は、試合終了間際に奪った同点トライに至る攻撃を振り返り、「ボールゲームをやっているようだった」と言った。
2分超、16フェーズを重ねたアタックは、サポートプレーの連続。オフロードも含む35回のパスがあった。
同点トライ後のコンバージョンキックは外れ、結局勝利には届かなかった。
勝利を呼び込むはずだったキックは易しそうに見える位置だったが、そこまで難しい位置からのもの、長い距離のものも含め、1G5PGを完璧に決めていたSOジェームス・シルコックの蹴ったボールは右に外れた。
指がかかった勝利を逃した。
頭を抱えてうなだれるシルコック。ダイナボアーズの選手たちも落胆しただろう。
しかし、岩村主将は「いいチームだな」と思った。
選手たちはシルコックがチームのところに戻ってくるのを待つわけでなく、自分たちから背番号10の元へ駆け寄っていった。そのシーンを見たからだ。
キャプテンが選手たちの気持ちを代弁する。
「シルのキックがなければ、逆転できそうなチャンスすらつかめない試合でした。最後のキックは外れましたが、(シルコックのことを)リスペクトしているからこそ、みんなが慰めにいった」
「ああいうときこそ、チームの色が出ると思います。こういう絆は、この先のシーズンの中でも生きていくと思っています」
そう話すキャプテンの隣で、グレン・ディレーニー ヘッドコーチが穏やかに笑っていた。
チームの充実と絆の太さは、興奮の80分を見つめた地元のファンにも、きっと伝わっただろう。