ラグビーリパブリック

加治木工が44年ぶりの花園で若狭東との激闘制す。東海大静岡翔洋も劇的勝利、目黒学院は大勝

2022.12.28

ボールをつなごうとする加治木工業のFB近藤隆成。若狭東の防御も堅かった(撮影:松本かおり)


 44年ぶり4回目の全国高校ラグビー大会出場となった鹿児島県立加治木工業高校が、花園で歓喜した。12月28日、第102回大会の1回戦で、7年連続34回目出場の福井県立若狭東高校と対戦し、7-0と競り勝った。

 前半から熱闘。
 加治木工業のNO8近藤應介がハイボール争奪や接点で果敢にファイトし、CTB岩元魁誠らの堅実なタックルで盛り上がれば、若狭東はNO8竹内颯汰が勇ましくプレッシャーをかけ、主将のLO赤崎彪雅やCTB谷口広成らが出足の速いタックルでチームを鼓舞した。

 前半23分、若狭東は敵陣22メートルライン内でフェイズを重ね、CTB谷口がゴールラインを越えたが、加治木工業は懸命の守りでグラウンディングを許さなかった。その後の若狭東の連続攻撃にも加治木工業は耐え、ピンチを脱出。ハーフタイム前には若狭東のFB辻優年がこぼれ球を拾って大きくゲインし、サポートもついてビッグチャンスだったが、加治木工業のWTB山口蒼太が粘り強く食らいついてタックルで落球させ、0-0で折り返しとなった。

 後半もしばらく、攻める若狭東に対して守る加治木工業という構図でゲームは進み、8分にはスピードに乗った若狭東のWTB柳快生が右外を抜けてゴールに迫ったが、ここでも赤いジャージーの加治木工業は必死のディフェンスでトライを許さなかった。

 その後、加治木工業はイエローカードを提示されて人数が少なくなり苦しい時間帯もあったが、クモの巣のように網を張り、粘りの防御で踏ん張った。

 若狭東も、チーム一体となって奮闘した。

 互いに譲らぬ激しい攻防が続く。
 そして、終盤の24分だった。若狭東が敵陣深くで攻めていたが、加治木工業のNO8近藤がインターセプトして80メートル以上走りきり、大きなトライを挙げた。WTB濱砂挑夢がコンバージョンを決め、貴重な2点を追加。

 粘る若狭東は残り時間で猛攻を繰り返し、試合終了間際にも敵陣深くに入ったが、加治木工業はFL木原虎之甫がブレイクダウンでジャッカルし、まもなく試合終了。激闘はノーサイドとなった。

試合終了間際、懸命に守る仙台育英に対し、モールで押し込む東海大静岡翔洋(撮影:松本かおり)

 2年ぶり12回目の出場となった東海大学付属静岡翔洋高校と、27年連続29回目の出場となった仙台育英学園高校(宮城)の対決も接戦となった。ファイナルスコアは24-17。東海大静岡翔洋が試合終了間際のトライで競り勝った。

 東海大静岡翔洋は序盤にFB山口航太朗のペナルティゴールで先制すると、前半16分には敵陣深くに入り、モールから持ち出したFL田村仁がトライゲッターとなった。コンバージョンも決まって10-0で折り返した。

 一方、相手の堅守で前半は無得点に終わった仙台育英だが、後半早々、敵陣22メートルライン付近に迫ると、SH今聡のディフェンス裏へのキックにCTBカプセン・テイオが反応し、ボール確保でゴールに持ち込み流れを変えた。10分には、俊敏なFB坂本琥珀が鋭いステップで次々とディフェンダーをかわしてゴールに迫り、リサイクル後、SO永川大雅がインゴールに突っ込んで同点に追いついた。そして、21分には相手のキックパスを捕球したWTB川村健介がカウンターで疾走し、勝ち越しに成功する。

 しかし、7点ビハインドとなった東海大静岡翔洋は終盤の26分に攻め込み、ゴール前中央でアドバンテージをもらって左サイドへ大きく振り、LO藤井斗真のトライにつながった。FB山口が厳しい角度からのコンバージョンを決め、17-17の同点となった。

 そして、試合終了間際、相手にペナルティがあってSO鈴木秀典のナイスタッチキックで敵陣深くに入った東海大静岡翔洋は、ラインアウトからモールで押し込んでトライが認められ、歓喜となった。

勿来工業との1回戦で、NO8中村つぐ希のラインアウトキャッチから攻める目黒学院(撮影:松本かおり)

 25年ぶり6回目の出場となった福島県立勿来工業高校は、全国制覇5回の歴史を持つ伝統校の目黒学院高校(東京第2)に挑んだが、0-83で敗れた。

 勿来工業は開始早々、PR平林彩翔が好タックルを連発してチームを盛り上げた。
 しかし、目黒学院は前半8分、CTB中村福己がインターセプトからゴールに持ち込み先制。14分にはPKを得ると、NO8中村つぐ希がクイックタップから仕掛けて力走でゲインし、最後はSH門上龍慈がタックラーをかわしてトライを挙げた。18分にはテンポの速い連続攻撃をLOサーフ イライシアがフィニッシュ。サーフはその8分後には力強い走りで連続トライゲッターとなった。しつこくディフェンスする勿来工業に対し、目黒学院はそれを上回る展開で30分にはWTB古田竜也が走り抜け、33-0で折り返した。

 速いテンポのアタックと強靭なフィジカリティを武器とし、個人技もある目黒学院は後半に8トライを追加。

 一方、勿来工業は何度もタックルを繰り返し、引きずられても食らいついた。ボールを手にした機会では、ラインアウトからのサインプレーを試みたり、FL鐵友慎の力強いキャリーやLO松田海砂輝の献身的なサポートもあり、試合終了間際にはCTB松田和真のブレイクスルーや主将SO鈴木悠斗の勇敢な走りなどでゴールを目指したが、目黒学院の壁は厚く、無得点に終わった。