残り5分での逆転劇だった。
12月25日。全国大学選手権の準々決勝がヨドコウ桜スタジアムでおこなわれ、対抗戦5位の筑波大がリーグ戦王者の東海大を20-17で破った。
先制したのは筑波大。
立ち上がりから何度も攻守が入れ替わったあとの前半13分だった。
新人WTB濱島遼のビッグゲインから敵陣22㍍ライン内に入りPKを得ると、SH白栄拓也がすぐさまタップで攻撃を続け、タックラーを複数人引きずりながらポスト横に右手一本でグラウンディング。
白栄が3回戦(天理大戦)に続いて先制トライを挙げた。
強風吹き荒れる中、風上の筑波大はキックゲームで優位に立ち、その後何度も敵陣深くまで攻め込む。しかし、このトライが前半唯一のスコアとなった。
筑波大がラインアウトスローのミスやスクラムで後手を踏んだこともあったが、なにより東海大の堅守が光った。20分ごろの攻防では、自陣22㍍ライン付近で筑波大の連続攻撃(12フェイズ)を耐えてみせる。
後半もレッドゾーンでの防御では隙を見せなかった。
「後半優位に立つために前半は風下を選びました。ディフェンスが強みなので(前半は)相手のアタックを飲み込んで、後半一気にたたみかける。(終盤の)しんどい時間に敵陣にいられた方が自分たちのテンポでラグビーができると想定していた」とCTB伊藤峻祐主将。
前半は0-7と最少失点に抑え、ゲームプラン通りことを運べたわけだ。風上に立った後半には、すぐさま同点に追いつく。
8分、相手のミスキックで得た好機からゴール前での局地戦を展開し、最後はPR井上優士がゴールラインにねじ込んだ。
21分には22フェイズに渡るアタックを一度は筑波大に止められるも、レフリーボールで再開された直後のスクラムからNO8井島彰英が好ステップでゴール前に迫る。最後はWTB 照屋林治郎が左隅に飛び込み、逆転に成功した(ゴール失敗)。
26分に約40㍍のPG(FB髙田賢臣)で12-10と迫られたが、31分にFLレキマ・ナサミラのパワフルな突破で再びリードを広げた(17-10)。
しかし、白のセカンドジャージーをまとった筑波大は諦めなかった。トライされた直後のコンバージョンキックには、CTB堀日向太をはじめ5人が全力チェイス。追加の2失点を防いだことで、勢いを失わなかった。
35分、この日6度目となるブレイクダウンターンオーバーを決めると、ラインアウトモールを起点に最後はPR木原優作主将が左中間にトライ。
続く37分にもHO肥田晃季、木原主将のタックルからすぐさま仲間が駆け寄り、再びラックを越える。直後のアタックから22㍍ライン内での相手反則を誘い、FB髙田のPGでついに逆転、3点のリードを守り切った。
「1対1でも勝ち、数でも勝つ」
白のジャージーは接点でファイトし続け、最後まで動き回ったから勝利を手にした。「自分たちがやりたいことを愚直にやってくれてこの結果が生まれた。本当に誇らしいプレーだった」と嶋﨑達也監督は選手たちを愛でた。
終盤の攻防を振り返り、指揮官は言う。
「僕らが選手権で東海大に勝つゲームはほとんど最後の10分でなにかが起こる。そのことを前日にも共有していました」
筑波大が初の決勝に進んだ2012年度の準決勝では、後半35分のトライで逆転勝利(28-26)。2度目の準優勝を経験した’14年度の準決勝でもやはり、残り6分で13点のビハインドから大逆転勝利を飾っていた(17-16)。
PR木原優作主将も「最後の最後で逆転するビジョンはしっかり見えていた」と話す。
「対抗戦では前半いい内容でも後半に逆転されて負けることを何度も経験しました。だから(次こそは)スコアされても自分たちは取り返すだけだと。そうしたマインドになれていたと思います」
8季ぶりの年越しを果たした筑波大は1月2日、国立の舞台で前年王者の帝京大とぶつかる。