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【コラム】2022年ラグビー名言10選

2022.12.22

リーグワン開幕節。手を振る選手たちと交歓するラグビーファン(撮影:松本かおり)

 冬に楕円球が渋滞するようになり久しい。

 大学ラグビーシーンが佳境に入るタイミングで、国内トップのリーグワン、全国高校ラグビー大会が開幕する。最近では長らく制限されていた練習取材も順次、解禁されているとあり、身体がひとつしかないことが本当にもどかしく感じさせられる。

 今年最後となる本コラムでは、2022年1月1日以降に取材した印象深い談話を紹介。昨季のリーグワンや夏、秋の代表期間、ワールドカップを見据えていたサクラフィフティーンの国内戦、高校や大学の各種取材機会、リーグワン開幕節などが主な対象となる。

1,「僕がうまいからです」(大島泰真=京都成章高校<当時>/SO)

 全国高校ラグビー大会の準々決勝。優勝候補の東福岡高校に25―31と敗れた。チームはフィジカリティで苦しみやや劣性も、少機を活かす流れで接戦に持ち込んだ。なかでも主将の大島は、防御に仕掛けながら相手の背中を通すようなパスを重ねた。向こうの勢いで突き放されなかったわけを聞かれ、笑いながら述べた。以後は同志社大学に入学。合宿の休息時間にも、小柄な身体を首尾よく動かす独自のトレーニングをすべく外へ出るなど熱心さを示した。捕る、投げる、蹴るといった技術、およびプレーの判断が抜群に「うまい」こともあり、1年目からレギュラーに定着した。

2,「僕はラグビーでお金をいただいて生活している。仕事です。そこに対して、モチベーションをどうこうというのは考えてないんですよ。だって、モチベーションがなかったらラグビーできないんですか? いえいえ、そんなことはないですよ。やるべきことやって正当な報酬をもらっているんだから、モチベーションは関係ないです」(稲垣啓太=埼玉パナソニックワイルドナイツ、男子15人制日本代表/PR)

 昨季のリーグワン終盤、不動の代表戦士が連戦続きにおけるモチベーションの維持について聞かれた。「こう言うと聞こえはよくないと思うんですが」と前置きして返答。「ファンの方が会場に足を運んで下さり、お金を払ってチケットを買って下さる。それには責任が伴います」とも続けた。

3,「いまは50人くらいの候補メンバーがいるけど、本当にみんな代表の選手になって欲しいし、みんなワールドカップに出て欲しい」(長谷川慎=男子15人制日本代表/アシスタントコーチ)

 大型選手の揺さぶりに屈しない「力を漏らさないスクラム」を作り上げ、2019年のワールドカップ日本大会8強入り。来秋の同フランス大会を見据えて選手層の拡大を図るさなか、オンラインの取材で述べた。「あとはこの先、選手には本当に怪我をして欲しくないですね。これから競争があって、『試合に出る、出ない』『代表メンバーになる、ならない』が出てくると思う。ただ、ここでの『出ない、なれない』の理由が怪我になるのはかわいそうかな。ずっと(それぞれの)ドラマを見てきているから、何か、ファンみたいになってしまって…」。セレクションの最終決定権をジェイミー・ジョセフヘッドコーチが握るなか、目の前の選手全てがチームの目指すスクラムを組めるよう促す。

4,「コーチングなんて、完璧にはいかないから。だから、面白いんだよ。思うようにいかないのを、いかに自分たちが思い描いた方向に進めるかが一番、難しい仕事だから」(沢木敬介=横浜キヤノンイーグルス/監督)

 日本代表のコーチングコーディネーター、サントリーサンゴリアス(当時名称)の監督を歴任した名物指揮官。人が人を動かして集団を作る難しさ、楽しさを語る。「ちょっとよくなってきてるな、面白いな、と選手に共感させるのがコーチの力。じゃないと、(人は)ついてこないでしょ」

5,「僕の理論的に、夏の暑い時期に走らんチームは勝てない。その意味では、いいスタンダードでできていると思います」(藤村琉士=浦安D-Rocks/HO)

 NTTグループのチーム再編で誕生した浦安D-Rocks。NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安をベースとしながら、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪の名将ヨハン・アッカーマンヘッドコーチを実質的なトップに据えている。スクラム、タックルが得意で日大時代に主将を務めた藤村は、ハードワークを課すアッカーマン体制のよさを簡潔に言い当てていた。

6,「今日の試合のテーマには、愛情というものがありました。家族に対する愛情。チームに対する愛情。お互いを信じて、仲間を信じて、自分たちの力を信じて戦おうと、先週、今週の2週間、準備してきました。自分たちの強みをぶつけよう。この舞台でもやることは変わらないよと話してきました」(齋藤良明慈縁/東洋大学主将、LO、FL)

 今季29シーズンぶりに関東大学リーグ戦1部へ昇格し、初戦で4連覇中だった東海大を撃破。そのまま大学選手権へ初出場した。多国籍の戦士が一枚岩の防御網を敷いた。主将の齋藤は、ラインアウトの防御に加えてリーダーシップも光った。選手権の初陣にあたる3回戦では早稲田大学と激突。相手に左右されず、自分たちと向き合うのが肝だと心得ていた。果たして19―34と跳ね返され、「自分たちの代はこれで終わりますけども、これからの東洋大学を期待していただければ、幸いです」と頭を下げた。

7,「選手が抱えるプレッシャーを少し低く見積もっていた」(レスリー・マッケンジー=女子15人制日本代表/ヘッドコーチ)

 サクラフィフティーンこと女子15人制日本代表は、大会前のテストマッチで好結果を残しながらワールドカップで白星を挙げられなかった。選手が「実力を発揮するための実力」を身に付けるべきである旨を、あくまで自己反省の材料として伝える。「周りから受ける応援がプレッシャーになっていたと、私が思う(想像していた)以上に感じていて。それを可能な限り取り除くことが必要だと思っています」と先を見据えた。日本ラグビーフットボール協会は近く続投要請を出す見込み。

8,「努力は、していると思います。今日はオフですが、外国人選手を含めて多くの選手がトレーニングをしていました。そういったところはサントリーのよさだなと改めて思いました」(齋藤直人=東京サントリーサンゴリアス、日本代表/SH)

 リーグワンのプレスカンファレンスに出席した11月28日午後に述べた。「自分は少し走りに行っただけですけど」と謙遜し、仲間の「努力」を讃える。チームは前身のトップリーグで優勝5回。リーグワン初年度も準優勝と常にトップを争う。大学ラグビー界屈指の綺羅星や一流の外国人選手を集めることで知られるが、真骨頂は別なところにある。

9,「僕の悪いところは、アイデアがありすぎて実現できることがすごく少ないことです」(リーチ マイケル=東芝ブレイブルーパス東京、日本代表/FL、NO8)

 選手として好調を維持しながら、部内のアジア振興プロジェクトに積極的に参画。12月7日には計5カ国の選手、コーチとのオンラインサミットのファシリテーターを務め、終了後にはメディアに所感を述べた。菅平の全国高校7人制大会へアジアの学校を呼んだり、北海道でアジア諸国の男女7人制大会ができたりすれば面白いと話しながら、自らの資質を冗談の口調で説いた。言い換えれば能動的。

10,「周りの意見というのが大切」(堀江翔太=埼玉パナソニックワイルドナイツ、日本代表/HO)

 12月17日のリーグワン初戦。東芝ブレイブルーパス東京に22―19で勝利した後、記者会見で自身の動きについて問われる。ひとまず「まぁ、動きやすさというのは毎年、毎年、感じてます。コンタクトの強さは僕なりには感じているんですけど」と述べてから「…どうでした?」と聞き返す。評価は他者が下すという現実を無視しない。