初代リーグワン王者の埼玉パナソニックワイルドナイツが、本拠地の練習場で円陣を組む。チーム一丸で戦うべく語気を強めたのは、主将の坂手淳史だった。
12月17日、ホームの熊谷ラグビー場で新シーズンの開幕戦をおこなう。出場予定メンバーが発表された15日は、試合会場のそばにあるグラウンドで調整。終了後、坂手がオンラインで会見した。
「リーグワン2連覇を狙えるのはワイルドナイツしかない。一試合、一試合、成長できればと思います」
11月中旬までの日本代表活動に参加した6名、さらに一部の外国代表選手は12月まで別行動を取っていた。ナショナルチームでも主将を張る坂手も、今季のワイルドナイツへの合流は12月3日。しかし、まもなく約1週間の宮崎合宿を実施した。連携を深めた。
開幕直前期のキャンプ実施は異例に映るか。いや、チームの状況、さらに競技の本質を鑑みれば、自然なことだった。
「各代表選手が集まるにあたり、一緒に生活することが必要。それができたのは大きな収穫です。もう一度、ワイルドナイツのラグビーを思い出す時間が必要でした。『知っているだろう』ではなく、まず全部おさらいする。自分たちのラグビーを理解する。最初はグラウンドでゆっくりやる。一気にスピードを上げる。その段階(を踏むこと)は意識しました。現時点ではいい準備ができている。ここからは、どんどん伸びます。しんどい時、つらい時を皆で乗り越えるチームにしていきたいです」
初戦の相手は東芝ブレイブルーパス東京。昨季は旧トップリーグ時代の2015年度以来となる4強入り。オフロードパスを交えた展開攻撃、接点での泥臭いプレーを看板とする。堅守速攻で鳴らすワイルドナイツへも強みを発揮すべく、調整してきた。
注目されるのは攻撃時の接点。ブレイブルーパスの援護役が、その場にいるワイルドナイツの防御役をつかみ、巻き込み、ワイルドナイツの防御の人数を減らしたり、ワイルドナイツ側が試みるジャッカルを無力化させたり。かような動きは、前年度の対戦でも見られた。
ブレイブルーパスのFLで先発の徳永祥尭共同主将は、こう展望する。
「ワイルドナイツにはいいジャッカラー(接点の球に絡む名手)が多い。がまん比べではないですが、自分たちがいいクリーンアウト(ジャッカルを引きはがす動き)ができれば。(詳細について)話せない部分もありますが、まずひとりめで(パスをもらって防御へぶつかる選手が)スペースにアタックし、いいタックルを受けず、(1対1で)ファイトしている間に(ブレイブルーパスのサポート役が)ブレイクダウンで(ワイルドナイツのジャッカラーを)絡ませない。それから、自分たちの持っているアタックオプションは、去年からアップグレードしている。そこを楽しみに見ていただければ」
ワイルドナイツ自慢の防御力を目減りさせようとするブレイブルーパスの狙いについて、坂手は「ブレイクダウンは、アタックでもディフェンスでもキーになる。相手のやってくることは理解しています」と返答。タックラーはすぐに起き上がり、接点で相手に捕まれるのを防ぎたいところか。
プレーした後の動きの速さもまた、ワイルドナイツのよさだ。連携面で伸びしろがある初戦の段階で、どれだけ理想の動きができるか。
ちなみにブレイブルーパスのNO8には、リーチ マイケルがいる。日本代表の主将経験者であるリーチに、坂手はこの秋の代表活動中に多くを学んだ。
「どう一生懸命やっているか、どう考えているかという、練習に対する準備のひとつひとつが大きな学びになっています。主将としてもレフリーとどうコミュニケーションを取るか、チームにどういう話をしていくかについて、部屋に来てもらって2人で話すこともありました。それは僕にとっては整理する、僕のモチベーションを上げる時間になりました。助けていただいた」
「(その時々の)チームの状態について、僕が感じているものとリーチさんが感じているものが違うこともあれば、同じこともあった。そんななか、『僕はチームにこんな話をしたい』と伝えるのに対し、リーチさんは『もっとこんなことを伝えたらいいんじゃない?』と、すり合わせることもしました。たくさん、話しました」
「ミーティングでも、僕がひとりでしゃべるのが難しいですし、たくさんの人がいろんな伝え方をした方がいい時もあります。それをリーチさんに頼むこともあれば、ガッキー(稲垣啓太=ワイルドナイツ)、亮土さん(中村亮土=東京サントリーサンゴリアス)や大さん(流大=東京サントリーサンゴリアス)にお願いすることもあった。たくさんのリーダーとのコミュニケーションは、代表期間中に取らせてもらいました」
今度のリーグワン初戦では、そのリーチと直接対決。楽しみでもあり、厄介でもあるか。
「レフリーとのコミュニケーションも上手ですし、エナジーを持ってチームをドライブする。精神的支柱ではあると思っています」
ワイルドナイツでは昨季途中にけがで離脱した福井翔大、松田力也もそれぞれFL、SOで先発する。
ブレイブルーパスのフィジカルバトルでタスクが課されそうな福井は「僕らがやってきたことをやるだけ。ぶっ倒します」と宣言。司令塔に入る松田はこうだ。
「ゲームをコントロールすることはいままでと変わらない。あとは、(リハビリ中に)フィジカルは上げてきた自信がある。ディフェンスで食い込まれないようにしたい」
キックオフ時間は14時40分。全ての1対1、全ての肉弾戦、全ての状況判断がハイライトとなりうる。