チームが機能するか。12月17日から各地で始まるジャパンラグビー リーグワンにあって、神戸製鋼に支えられるコベルコ神戸スティーラーズはそんな命題を抱えている。
昨季は途中加入を含めればニュージーランド、南アフリカ、日本の代表経験者を数多く擁しながら、ディビジョン1の12チーム中7位に終わった。
心機一転。元ニュージーランド代表CTBのナニ・ラウマペら大砲が複数、加入した。ところが、開幕前最後のトヨタヴェルブリッツとの練習試合を31-33で落とす。一時は大量リードも、逆転負けを喫した。
ニコラス・ホルテン新ヘッドコーチは、こう総括する。
「自分たちのラグビーはテンポが速い。そのためにはポジショニングを速くする必要がある。ただ、ポジショニングの遅くなるスピードが速すぎる。自分たちのラグビーをするのは、しんどいのです。そのなかでイージーオプションを選んではいけない。しんどいなかしんどいことをやり続けなければいけないのに、(件の練習試合では)乗り切れなかった」
スティーラーズが最後に結果を出したのは2018年。前身のトップリーグで初年度以来2度目の頂点に立った。
その折は元ニュージーランド代表のダン・カーターが新加入。司令塔としての技能に加え、普段の振る舞いでも周りを引き上げた。「納得がいかなければ、昼食時にサンドイッチを食べながらゴールキックの練習をしていた」とは、当時のチームメイト談である。
何より重要なのは、ウェイン・スミスの存在だ。
元ニュージーランド代表アシスタントコーチのスミスは、この年からチームの総監督に就任。カーター来日にも関与したうえ、練習強度の管理、各選手のコンディション調整に目を光らせた。緊張感を保った。
個々のモチベーションも高めた。責任企業の性質を踏まえ、自分たちが「スチールワーカーの代表」であるのだと手を変え、品を変え、伝播した。
工場見学を繰り返したり、阪神大震災時の苦難を乗り越えた社員の講話を聞いたり。その様子を伝え聞いたOBのひとりは、「以前の首脳陣も工場見学をしたことがあった。でも、それを繰り返しおこなうのはウェインならでは」とうなった。
その流れで構築したのが、確固たるプレースタイルだ。
接点の周りに3人1組でFW陣が、自在にパス交換。相手防御を引き寄せるか、後退させるうち、空いたスペースを大外の面子が切り裂く。ホルテンの言う「自分たちのラグビー」の、これが源流である。
近年はウイルス禍の影響もあり、クラブのキーマンたるスミスが来日する頻度が制限されていた。今季は肩書きを総監督からメンターに変えており、最近はワールドカップで優勝した女子ニュージーランド代表(ブラックファーンズ)の指導にもあたっていた。
スミスのスティーラーズへの関わり具合が注視されるなか、ホルテンはこう述べた。
「ご存じの通り、ウェインはブラックファーンズのコーチングに注力していた。ただ、その活動が終わって1週間もしないうちから、常に我々の練習を見続け、アドバイスをくれています(動画などを用いてか)。常に連絡を取り合っています。彼のアドバイスを聞きたくないチームがあるのだとしたら、それは愚かなことです。常に彼の意見を採り入れ、考えながらやっていきたい。ウェインは年明けには合流してくれると思う」
初戦は12月18日。神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場でぶつかる横浜キヤノンイーグルスは昨季6位で、昨季の直接対決では1勝1敗。スティーラーズが勝ったのは、選手層拡大の途中だった相手が主力の勤続疲労に苦しんでいたシーズン終盤の一戦であった。
お互いにリフレッシュして迎えるファーストゲーム。スミス不在のなか、目指すスタイルの再現性をどこまで高められるか。