黒地の胸に赤ライン。伝統のジャージーが落ち着いて試合を進め、歓喜にたどり着いた。
12月10日におこなわれた関東大学対抗戦A・Bの入替戦で、成蹊大(B-1位)が日本体育大(A-8位)に29-17と快勝した。
成蹊大は来シーズン、4季ぶりに対抗戦Aで戦う。
勝者は立ち上がりから集中力高く戦った。
前半6分に狙ったPGこそ外したものの、14分に先制点を奪った。
ラインアウトからの攻撃だった。モールを押して圧力をかけた後、アドバンテージが出る中で左に展開。SO菊本有真のキックが相手に当たって跳ね返った。
そのボールが走り込んできたFB近藤大我の手に入り、背番号15 がゴールポスト下に走り込んだ(菊本のGも成功して7-0)。
成蹊大はその後もゲームの流れをつかみ続けた。また、日体大のミスなどもあり失点がなかった。
27分、35分と菊本がPGを決め、13-0として前半を終えた。
SHの糊谷憲信は、「セットプレーでは相手が優勢かもしれないが、アンストラクチャー(の状況)なら自分たちもやれる。テンポのはやい攻撃で敵陣に入る戦い方が、特に前半はうまくいった」と最初の40分を振り返った。
ただ後半は、日体大に先に得点を許してしまった。反則からPKを与え、自陣ゴール前のラインアウト、モールで圧力を受けた。
押し切られた。FB田中大世主将のコンバージョンキックも決まり、13-7とされた。
差を詰められはしたけれど、成蹊大は慌てることがなかった。
攻める姿勢を失わず、キックレシーブからの攻撃で相手の反則を誘い、PKで敵陣に攻め込んだのが後半9分過ぎ。ラインアウト後のモールを押し込んでHO志村爽太郎がトライを挙げた(18-7)。
17分に菊本のPGで21-7と差を広げた後、28分に日体大にトライを許してスコアは21-12 となった。
試合を決するシーンは後半38分だった。成蹊大はハーフウェイライン付近のスクラムから攻め、菊本が防御を突破。最後はWTB瀧澤日々輝が相手のタックルを弾いてインゴールまで走り切った(26-12)。
残り時間に日体大もトライを返して意地を見せたものの、成蹊大もラストプレーでPGを追加してファイナルスコアは29-17。
フルタイムの笛が吹かれるとピッチで歓喜の輪ができた。スタンドからは大きな拍手が聞こえた。
チームを率いたLO伊藤大吉主将は、「コンタクトバトルが鍵になる」との思いで決戦に挑んだ。
「(接点での攻防が激しい)対抗戦Aで戦ってきた相手に、低いタックルと、はやいリロードで対抗しようと考えました。規律を守り、相手の反則を誘ってショットで得点する。描いていたプランを遂行することができました」
準備してきたことを出し切った仲間たちを称えた。
日体大は、2023年シーズンを対抗戦Bで戦うことになった。2014年度シーズン以来となる。
田中主将は、「対抗戦AとBではフィジカルの差があると考え、そこで仕掛けようと思いました。しかし、反則やミスが出てしまいました。後半も流れをつかめず届かなかった」と振り返り、来年は後輩たちがやってくれるはず、と思いを託した。
この日はもう1試合実施され、対抗戦A-7位の青山学院大がB-2位の明治学院大に61-13と大勝してA残留を決めた。
ゲームキャプテンを務めた青学大のSH宮下賢志は、「アタックマインドを持って80分圧倒し続けることにフォーカスした」と話した。
敗れた明学大のCTB高橋雄太郎主将は「ディフェンスで相手のアタックを止め、敵陣で自分たちのラグビーをしたかったがうまくいかなかった」と唇を噛んだ。
しかし同主将は試合終了間際にチーム唯一のトライを自ら奪って意地を見せた。
キャプテンがそのプレーに込めた魂は、新チームに引き継がれる。