花園近鉄ライナーズにピンチが訪れたのは8月のことだ。
昨年からオーストラリア代表に復帰しているSOクウェイド・クーパーが、同月6日のアルゼンチン戦で左アキレス腱を断裂。長期離脱が決定した。
どこからでもスピーディーにアタックを展開するライナーズのアタックにおいて、司令塔の10番は要のポジションだ。
そこで白羽の矢が立ったのが、NZ・ハリケーンズの正SOとして活躍し、今年のNPC(国内選手権)ではウェリントンを22年ぶりの優勝に導いたジャクソン・ガーデンバショップだった。
「(オファーが届いたのが)ハリケーンズとの契約がちょうど切れた時期でした。日本のラグビーは魅力的ですし、(日本でプレーした選手からは)日本の人はみな優しく、良い場所だと。良いことしか聞いたことがなかったんです」
ダニーデン生まれ、ウェリントン育ちの28歳。シニアデビューは国内では叶わず、海を渡った。1シーズンだけ豪州・レベルズでプレーし、2018年からハリケーンズに加入。マオリ・オールブラックスも経験した。
父・スティーブン、母・スーザンはともに元ニュージーランド代表で、叔父のグレアム・バショップも元オールブラックス。1991年、’95年のW杯に出場し、’99年大会では桜のジャージーを着て戦った(サニックスでプレー)。
今回の来日は叔父の影響もあったかと聞かれた愛称・ジャックスは、「そうでもなかったです。ですが、彼は日本でプレーして日本代表にもなりました。甥の自分がここにいるというのは不思議な感じがします」と話す。
来日して1か月ほど経った12月4日のプレーシーズンマッチでは、2試合目の先発機会を得た。
静岡ブルーレヴズにセットプレーを支配され21-71と大敗に終わり、「1週間いい練習ができていたけど、それを実行できずイライラした」と話すも、要所で類まれなアタックセンスを見せる。
特にこの日はWTBジョシュア・ノーラに幾度も裏へのキックパスを通した。
「彼は良い選手ですし、スマートです。お互いが同じスペースを見れました。そうしたコンビネーションをこれからも上げていきたいですね」
日本語の習得にも意欲的だ。
「ポジション柄、周りの選手に指示を出さなければいけないので、日本語をできるだけ早く学ぼうと思ってます。単語を覚えて、覚えたらできるだけ使うように努力しています」
日本国内でも特徴的なアタックを展開するライナーズについては、「とても速いし、エキサイティングです。できる限りボールを生かし続ける。エリア的に他のチームであればスローダウンするところも、われわれはそこからテンポを上げていく。もちろん慣れないスタイルではあるのですが、やっていてとても楽しいです」と好印象。
クーパーからも多くのことを学んだようで、「ライナーズの10番としてどんなプレーをしなければいけないかを教えてくれました。彼だったらこうするということも教えてくれるし、自分であればこういうことができるのではないかということも話してくれました。戦術を明かすことになるので、細かくは言えないですが(笑)」。
開幕までにさらにチームに溶け込み、”クーパーの代役”以上の活躍を見せたい。