ラグビーリパブリック

早明戦敗戦も下を向かない。早大の宮尾昌典は「単調さ」を改善したい。

2022.12.07

早明戦、相手ボールスクラム時に目を光らせ声を出す早大SH宮尾昌典(撮影:松本かおり)


 あまり壁を突き破れなかった。

 早大ラグビー部は12月4日、東京は国立競技場で関東大学対抗戦Aの最終節に臨んでいた。伝統の「早明戦」。21-35で敗れた。

 いまの早大はグラウンドの各所にFWのユニットを配し、その間にBKが立ち並ぶ。長短のパスを刻み、効率よくスペースをえぐる。

 21点差を追っていた前半28分のチーム初トライ、14-28と苦しめられていた後半24分のスコアは、その形で決めた。

 得点シーンでは、決定的なパスの出し手と受け手の間におとり役が駆け込んでいた。防御をかく乱しながら、大外で数的優位を作れた。

 しかしそれ以外の場面では、かような複層的な動きが鳴りを潜めた。

 中盤のエリアでボールを保持し、グラウンドの端から端へとボールをつなぐのだが、対する明大の防御網をなかなか割れない。タッチライン際の接点で球出しを鈍らされ、折り返しのパスを放った先で鋭いタックルを食らう。こぼれ球を拾われる。

「もっと、早大は(鋭く)来ると思った」

 とある明大の主力選手がこう話すなか、早大のパスの供給役となったSHの宮尾昌典は言った。

「外にずーっと振って…。単調な部分があったと、アタックしていて思いました。もっと、前に、前にアタックプレッシャーをかけていかないと早稲田的にしんどいなと」

 早大は対抗戦3位となった。17度目の日本一を目指す大学選手権へは、11日の3回戦から登場。東京・秩父宮ラグビー場で関東大学リーグ戦1部・3位の東洋大とぶつかる。25日の準々決勝へ進めれば、秩父宮で対抗戦2位となった明大と再戦できる。

 頂点への道のりは簡単ではなさそう。ただし一般論として、実力の拮抗したチーム同士が同時期に複数回、対戦し、どちらか一方が連勝するのもまた難しい。

 思い出されるのは、早大が最後に日本一となった2019年度。当時の早大は、対抗戦での早明戦を7-36で落としながら、選手権決勝での同カードを45-35で制した。

 リベンジを果たすまでの間、1対1における強度を磨き直し、防御の穴を効率よく突けるよう攻め方を整理していた。

 あれから約3年。就任2年目の大田尾竜彦監督は、シーズンの最後まで伸びしろを埋められるよう計画を立ててきていた。夏場には防御、秋口には接点と、各領域の質を段階的に高めた。

 今度の早明戦を受けて向上させたいのは、「敵陣22メートルに入った時」の決定力だ。

 宮尾が指摘した展開時の「単調」なさまに関し、大田尾監督は「重いキャリア(突進役)の選手がいないといううちの特徴を考えると、ボールを動かすこと自体は悪くはない。ゲームを80分で捉えた時は、非常にいいチャンスを作れていた」と冷静に言う。

 ここに付け加えたのが、最後のひと押しについての見解だった。

 敵陣22メートルエリアでは、相手が後方のカバーを気にせず防御ラインを固める。相手の壁が分厚くなるなかでのフィニッシュの方法について「考えないといけない」と、大田尾監督は話した。

「映像を見ながら、戦術的なことを考えないといけないと思っています」

 早大の攻めにリズムを生むのが、2年の宮尾なのだ。

 1年時にレギュラーを獲得も、今季の序盤は「悪く言えば停滞期」に陥った。「チームにそんなに影響を与えられていないな」。ありがたかったのは、首脳陣に背中を押されて「リフレッシュ」ができたことだ。

 10月、リーグワンに参加するクラブの練習へ「3~4日」ほどのスパンで参加。普段と違う環境でボールを追いかけながら、「一試合、一試合、チームに貢献できる力を吸収する」ことに成功している。

 早明戦でも、自身のミスから招いたピンチを効果的なジャッカルで防ぐなど気を吐いていた。

 チームがハイパントを蹴り込み、再獲得を狙った際には明大の防御をかすかに混乱させることができたとあり、「コンテストボール(高い弾道の競り合い)はほぼ早大。ここは(今後の)強みになる」とも実感できた。

 だから現実を受け止めながら、悲観はしていない。

 4日、国立の取材エリアで言った。

「(今後は)きょうのようなゲームをしないようにしたい。いまから気持ちを切り替えて、チームをいい状態に持っていけるように頑張るしかないです」

 足元を見つめながら、山の頂へも視線を向ける。大学選手権は来年1月2日の準決勝、8日の決勝へと続いてゆく(場所はいずれも国立)。

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